いのちのコール ミセス インガを知っていますかのネタバレレビュー・内容・結末

「いのちのコール ミセス インガを知っていますか」に投稿されたネタバレ・内容・結末

安田美沙子、室井滋出演の「子宮頸ガン」を題材にしたドラマ。

文化庁が助成していることから、単なる「啓発映画」に成り下がっていないかと危惧しつつ、どんなものかと思ってシネスイッチ銀座で観賞。
映画の方は完璧には程遠いけれど、想像よりかは良かったです。少なくとも単なる「啓発映画」ではなく、物語的な面白さも備えた作品に感じました。

主人公は結婚目前のたまき。ある日腹部に激痛が走ったたまきは、婚約者のたかしと共に病院に行ったところ「子宮頸ガン」と診断される。ガンの完治のために子宮の全摘出手術を受けるため、子どもを諦めるように告げられ絶望し、結婚を諦めないかとたかしに提案するたまき。しかし、たかしはたまきの提案を突っ返して、たまきと約束する。「何があっても俺がたまきさんを守る」と。
それから2年後。ラジオDJのマユミは、自身がメインパーソナリティを務めるラジオ番組の最終回の放送中、「インガ」と名乗るリスナー(当然ながらたまきです。)から自殺を仄めかす電話を受ける・・・というのが今作の冒頭の粗筋。

上記のプロットから分かるように、文化庁も助成する程の「子宮頸ガン啓発映画」の一面も備えながら、映画自体はたまきの居場所を探すサスペンス仕立て。この「ラジオDJがリスナーの居場所を探す」という着眼点は素晴らしく、サスペンス仕立てにしたことで物語に推進力が生まれ、最後まで画面に退屈せずに観賞出来ました。
また、「子宮頸ガン啓発映画」としても軽いタッチであっさりと描いていて、啓発映画特有の面倒臭さはありませんでした。その内容についても、「子宮頸ガン=遊び人がなる病気」という偏見を持つ人が多いことなどは全く知らなかったため、素直に勉強になりました。
86分でキレよくまとめていたことも良かったです。

映画的な面白さや良いところを、予想以上に感じられる拾いの映画でした・・・と、書いてレビューを締めたい所ですが、今作には悪い所も多々見受けられたので、ここからはその話がメイン。

まず問題だったことは、安田美沙子から子宮頸ガンを患ったことが全く感じ取れないこと。
「髪が抜け落ちる」、「尿意を感じられなくなって、時には漏らすこともある」。このような設定があるにも関わらず、安田美沙子が坊主頭になるカットや失禁するカットは無く、観ていて「子宮頸ガン」を患っていたことが全く伝わってきませんでした。難病を扱った映画でありながら、この点の説得力を欠いてしまったことは、人によっては致命的な失敗に感じると思います。
その一方で、キャストで良かったのは室井滋。微妙にズレている部分もありましたが、たまきとのやり取りには緊迫感が醸し出されていて良かったです。

次の問題は、たかしとたまきの人物描写の薄さ。
ラジオ番組のスタッフ達のやり取りに比重を傾け過ぎてしまった結果、たまきとたかしの描写が弱くなってしまったように思います。特にたかしがたまきを持て余す場面は、たかしの説明で表面を取り繕っているため、薄っぺらく映ってしまいました。話の根幹を担う場面だっただけに残念。
その他にも、たまきを探すたかしの姿から、緊張感の欠片も見当たらないことにも脚本の弱さを感じました。また、ラストのてっきり正統派の展開で問題解決するのかと思いきや、想定外の横槍が入る展開には椅子から滑り落ちそうになりました。いや、もちろん想定外の横槍が入る展開も、常識的に考えれば決して間違ってはいないのですが。。。
とにもかくにも、主人公2人の描き方がイマイチでした。

最後に演出。
前半の伏線となるシーンを、終盤に再度映して伏線回収することは、幾らなんでも平易過ぎる。せっかく上映時間を短くしているのだから、もう少し違ったまとめ方を模索すべきだったと思います。
しかし、その他の演出は何れもスタンダードなもので、メタファーとしての風船や凧の使い方などは良かったと思います。

以上。
悪いところもありましたが、もう少し頑張れば「社会派ドラマ+ラブストーリー+サスペンス」の三拍子揃った傑作に充分なり得たと思います。