58分の中編は何より、永子と誠一、そして元カレ寿が別々に描写される様が実に見事だ。しかも元カレ寿には、エリナ(菅野莉央)という今日会ったばかりの女がいる。にっかつロマンポルノから飛び出したようなエネルギッシュなエリナの魅力が三角関係を主とする映画全編に緊張感をもたらす。ガラガラの電車のリバース・ショットもさることながら、結婚式場に向かう彼女たちの刹那。小津安二郎はあえて結婚式そのものを描かず、結婚式の二次会に向かう親世代の悲哀を描いたが、習作でこのような結婚式の情景に踏み込む濱口竜介の勇気が凄い。然しながらこの結婚式の場面は率直に言って凡庸だが、会話劇がもたらす違和は十分に効力を発揮している。涙が出ない河井青葉の演技には観客としてハラハラしつつも、むしろ後景の家族の悲喜交々にしてやられる。「いんらん」と発した弟役の太々しさと隠し撮り。小津やマノエル・ド・オリヴェイラを彷彿とさせるような石像のショットは、ある種青春時代の終わりを体現するが「NOT THE END」の文字列には驚く。