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『クリント・イーストウッド アウト・オブ・シャドー』に投稿された感想・評価

3.4
 193cmの偉丈夫、法と正義の行使の不一致に怒る半権力者、マルパソ・カンパニーのオーナーにしてリーダー、子供の頃からのJAZZ愛好家、大部屋俳優から登りつめた遅咲きの大スター等々、イーストウッドには様々なイメージが付いて回る。撮影現場でも決して威張らず、周りをリラックスしたムードで包みながら、時に真剣な眼差しで彼らから答えを導き出し、含蓄ある言葉で俳優陣を指揮する。今作は『スペース・カウボーイ』完成直後に制作されたクリント・イーストウッドの自伝的ドキュメンタリーである。ナレーションは『許されざる者』で共演を果たしたモーガン・フリーマン。イーストウッドの撮影現場を「ずっと居たいと思わせてくれる最高の場所」と称するフリーマンの証言は出て来ない。チャーリー・パーカーの生涯を映画化した『Bird』のような破天荒な編集は為されておらず、監督でイーストウッドと同じくJAZZ愛好家であるブルース・リッカーは極めてオーソドックスに、時系列に沿って淡々とイーストウッドの半生に迫る。とはいえ肝心要のイーストウッドのインタビューはほとんどない。今作では専ら、イーストウッドの周囲にいる人たちの証言を丁寧に集めながら、人間クリント・イーストウッドの魅力と本質に迫る。

生まれたのはアメリカの大恐慌時代、ガソリンスタンドで働いた両親は金に苦労し、西部を何度も転校させられたイーストウッドは徐々に内向的な性格に転ずる。独学でピアノを覚え、16歳の頃にはJAZZバーでピアノを演奏し、ピザやビールを奢ってもらうようなったイーストウッドは、必然的に大人の世界での処世術を身につける。ファッツ・ウォーラーのレコードを買い与えたことを、母親であるルース・ウッドは昨日のことのようにカメラの前で懐かしげに語る。朝鮮戦争への陸軍での出兵と除隊を経て、ユニバーサルと契約を結ぶが、大部屋俳優としての生活は決して楽ではない。同僚たちが遊びに行く時も、彼は当時、水着モデルをしていたマギー・ジョンスンと結婚しており(ほんの少しだが写真が出て来る)、彼女との間に長男カイルと妹のアリソンが誕生する。ユニバーサル時代、マーロン・ブランドに可愛がられながら、『半魚人の逆襲』『世紀の怪物/タランチュラの襲撃』といったB級映画の端役しか与えられなかったイーストウッドは、レスター・ヤング、ジェームズ・ディーン、ジャック・ケルアックら、50年代のカリスマ性溢れる偉人たちの仕草や格好を見て、目指すべきスター像を膨らませたエピソードが微笑ましい。やはり転機となった『ローハイド』の出演から、セルジオ・レオーネのマカロニ・ウェスタンに転じたエピソードは圧倒的に面白い。当時のイーストウッドのギャラは、ジェームズ・コバーンの半分程度だったという。アメリカは当時、ありあまるイーストウッドの野心や才能を持て余していた。名無しの3部作の後、帰国後の彼の一気呵成の行動力。今作はセルジオ・レオーネとの出会いよりも、ドン・シーゲルとの出会いを重要視する。

制作されたのが『スペース・カウボーイ』公開直後とはいえ、1時間30分弱のドキュメンタリーで彼の膨大なフィルモグラフィを平等に扱うのは極めて難しい。今作では一応の頂点をアカデミー監督賞を受賞した92年の『許されざる者』に据え、思い入れたっぷりだった『Bird』にかなりの時間と熱量を割いている。監督作品以上に、『ダーティ・ハリー』シリーズの歴史的意義、例の悪名高い女性批評家ポーリン・ケイルの暴力への批判など、帰国後の彼のキャリアが決して順風満帆ではなかったことを明らかにする。なかでもドン・シーゲルのジョン・ウェインに対する「イーストウッドなら後ろから打つだろう」という有名なエピソードがあまりにも痛快に映る。ここではジョン・フォードとジョン・ウェインの伝統の西部劇に対し、ドン・シーゲルとクリント・イーストウッドが新しい西部劇のダーティ・ヒーローとして時代の変革・継承を促すのである。残念ながら生前の共演はなかったが、ウェインが新たな西部劇スターについて語るフッテージはなかなか貴重である。『ブロンコ・ビリー』や『センチメンタル・アドベンチャー』、『ペイルライダー』のような映画史的に重要な作品を無視しても、『ダーティファイター』シリーズがイーストウッドにとって転機となったと見るブルース・リッカーの分析も、あながち間違っていない。

ただ『Bird』や『ホワイトハンター ブラックハート』の興行的失敗を映画的スランプと断じ、『許されざる者』を劇的な復活とするブルース・リッカーの判断はやや強引で承服しがたい。『Bird』や『ホワイトハンター ブラックハート』での監督としての野心が、その後の『許されざる者』や『マディソン郡の橋』の成功に結びついていく。デビッド・ジャンセン、ビル・マッキニー、イーライ・ウォラック、ジーン・ハックマン、フォレスト・ウィテカー、バディ・ヴァン・ホーン、ジャック・N・グリーン、レニー・ニーハウス、カーティス・ハンソン、マーティン・スコセッシなど数々のイーストウッドとゆかりのある人物たちの証言の数々。ジェフリー・ルイスが嬉々としてイーストウッドとの思い出を語るエピソードには胸が熱くなるが、当然のごとく裁判で慰謝料と相殺で口封じされたソンドラ・ロックは出て来ない。願わくばロイド・ネルソン、フリッツ・マーネイズ、ロイ・ジェンソン、ダン・ヴァデイス、アルバート・ポップウェル、ジョン・ミッチャムらイーストウッド組の俳優たちや、長男カイルと妹のアリソンの声も収録して欲しかった。イーストウッド・フリークスとしての個人的見所は、アメリカのTV番組に可愛い刺繍のスウェットで登場したイーストウッドと、85年のカンヌ映画祭のレア・フッテージ、そしてカーメル市長選の選挙演説である。新しい発見はほぼないが、イーストウッド・ファンなら観ておいて損はない。
4.0
『シネマティック・レガシー』のドキュメンタリーがとても良かったので、こちらは若い頃をもっと知れるかな?と興味津々で鑑賞❗️
こちらも観て良かったです🌟

監督、俳優、評論家等のインタビューと、ご本人が語っている言葉がとても刺さりました。

イーストウッドとは、アメリカ文化の中で枠をもたない重要な存在となっている⭐️
西部劇のイメージが強いが、ブルース♬を愛し、メロディーから悲しみを感じとる。そしてジャズが彼の魂の源なんだと💫

この作品が希少価値だと思えたのは、お母様のルースがインタビューを受けていて沢山のお話を聞けたこと✨優しい目元の雰囲気はお母様似に感じた。

「生まれた瞬間に愛おしいと思ったの。病院中で一番大きな新生児だったので、看護師が他の赤ちゃんのお母さんに見せて回ったのがおかしかったわ」
父親はガソリンスタンドの仕事をロスで見つけたが、仕事の場所を転々と変えて転校ばかりしていた。内向的で友達も少なく、その頃から独学でピアノ🎹を弾き始めた。16歳でオークランドの酒場でピアノ弾きをしたが、食べ物とチップをもらう程度だった。

そして『マディソン郡の橋』のメリル・ストリープを推したのは紛れもなくお母様の提案だったのだそう🥺


アメリカの芸術形態で不変なものは2つ。『ジャズと西部劇』
どちらも精通しているイーストウッドは、有名なミュージシャンを選んでジャズコンサートの主催もしていた。そのステージでピアノ🎹の腕を見せて聴かせてくれている🎶

高潔な志と謙虚な姿勢で映画を作り続け、真実を告げてきたと結ばれていた。


良いドキュメンタリーでした💫
公私共にプライベートを見せないことでも知られているが、少しだけ垣間見られた気がしました。
60代以前の映画やインタビュー等なので、とにかく稀な美形の長身大スターを存分に堪能させてもらいました🌟
本作は2000年製作なので誕生から『スペース・カウボーイ』までのイーストウッドのヒストリーを描いているドキュメンタリー。
ドキュメンタリーに教えられるトリビア的な驚きも沢山ありましたが、これを機に改めて彼の魅力について考えてみました。

ジャス好きな彼は監督としての映画作りもそのインプロビゼーションのように直感を大切にして作っていた。
『硫黄島からの手紙』(2006)に出演した煮るナリ焼くナリ二宮和也はその演技後にアッサリとOKが出ていたことに「えっ、こんなんでイイの?」と感じていたそうだ。巨匠というと黒澤明のように何度も何度も取り直しを要求されるとなんとなく思っていたらしい。
本作によると撮影現場も終始和やかに俳優陣が働きやすいような心遣いをしていたそうだ。
自分の欲しいものを強引に役者に求めて行くという訳ではない。そんなところから生まれる作品というのがなんとなく彼らしい。
それはこのドキュメンタリー後の今に至る滋味溢れる作品群から特に強く感じる所だ。そうしたジャズのような作風が彼の監督としての大きな魅力のように感じる。

それと役者としてもう一つ、本作に取り上げられた彼の作品の名シーンを続けて観ていると一つの共通点に気がつきます。それは彼が大声を出さないこと。
我慢できない怒りが胸を突いて出てくるようなシーンでも、眉間辺りには充分にそれを漂わせつつもクグもった怒気を帯びた発声をする。決して大きく開口して腹の底からのエネルギー溢れる怒鳴り声が出るわけではない。その代わりにパンチや弾丸に物を言わせるのだ。
これは他の役者には出来ない彼の大きな魅力ではないだろうか。

『クリント・イーストウッド アウト・オブ・シャドー』に似ている作品

クリント・イーストウッド:シネマティック・レガシー

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ジャンル:

配給:

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