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草原とボタン
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『草原とボタン』に投稿された感想・評価

3.8
「草原とボタン」

〜最初に一言、傑作。美しいアイルランドの大草原を舞台に、子供たちの一生の友情を描いたもう一つの「Stand by me」とされ大絶賛されたアカデミー賞受賞並びにパルムドール賞受賞経験者のプロデューサー、パットナムが手掛けた95年日英合作映画の名作である。これが未だにVHSしかないのは非常に残念である〜

本作はジョン・ロバーツ監督が1995年に日本と英国で合作した映画で、この度VHSで再鑑賞したがやはり良い映画である。残念ながら国内ではソフト化されておらずVHSのままなのだが、「炎のランナー」のデイヴィッド・パットナムがプロデュースを務めた青春ドラマで、小さな戦争を繰り広げる子供たちの友情や初恋を通し、彼らの成長劇を瑞々しいタッチで描き、美しいアイルランドの自然美や透明感のある映像、そして子供達の活き活きとした表情が秀逸な1本である。配給が日本ヘラルドだったので、なかなか円盤化はされないだろう。アカデミー賞受賞作品の他にも、カンヌ国際映画祭でパルムドールに輝いた「ミッション」など数多くの秀作を送り出してきたイギリスのプロデューサーが、少年たちのユーモラスな対決の中に友情と思いやりとファンタジーを塗り込めた爽やかなキッズ・ムービーである。

南アイルランドの美しい風景をバックに、少年たちが彩るちょっとほろ苦い青春の物語。どこか懐かしさに彩られた、もう一つの「Stand by me」と言っていいのかもしれない。この作品に関わっているスタッフの名前を見てみると、ロベール・ブレッソンやベルトラン・タヴェルニエの作品をとっているフランスの撮影監督ブルーノ・ドゥ・ケイゼルが、美しい自然の色や光を生かした透明感のある映像を作り出していた。今思えば、脚本もアカデミー賞受賞した「炎のランナー」以来の仕事になるリン・ウェランドがやっており、デザインは「クライング・ゲーム」等を手がけているジム・クレイとなかなかの製作陣である。

映画を見ると子供たちのキャスティングはトータルで主役級の子供が18人いて、何千人もの応募者の中から選ばれたのがファーガソン役よグレッグ・フィッツジェラルド、ジェロニモ役のジョン・コフィー、元気があって、本来の姿のままで人生を楽しんでいる子供たちが見れる。それにしてもやはり脚本のコリン・ウェランドは私の大好きなケン・ローチ監督の傑作「ケス」でデビューしていて、後にペキンパーの「わらの犬」なども手がけているのでやはり脚本家としては優れている。今回のプロデューサーのパットナムは確か70年に大ヒットした「小さな恋のメロディ」を手がけており、私の好きなアラン・パーカーの「ダウンタウン物語」やアカデミー賞脚色賞と作曲賞受賞した「ミッドナイト・エクスプレス」なども手がけているさて前置きはこの辺にして物語を説明していきたいと思う。


さて、物語はアイルランド南西部の小さな町バリー。網を打つ漁師達の声と、そよ風にさざめく波の音と、そして、学校へ向かう子供たちの元気な声とともに賑やかな朝が始まる。大きな子も小さな子、乱暴な子も気の弱い子も、みんな上から下まできっちりボタンをかけて家から飛び出してくる。だが、平和な風景の裏には隣持ちキャリックの熾烈な戦いがあった。校長を始め大人たちは気づいていないが、子供たちはすでに戦闘態勢に入っていた。バリーズのリーダーはファーカスで、一方のキャリックスは、ジェロニモが率いていた。小競り合いを重ねた後、いよいよ戦闘開始。バリーズはキャリックスの先陣ゴリラを魚網で絡めて捕虜にした。ファーカスはゴリラを木に縛ると、ナイフで彼の服のボタンを全部もぎ取る。

それは男の子のほこりを傷つけ、メンツを打ち砕く戦利品なのだ。しかし、次の対決でこの不名誉を被ったのはファーカス自身だった。ボタンをもぎ取られた服を見に継父は少年院に入れるぞ…と脅してんベルトでぶって折檻する。服を破ったなら裸で学校に行きなさいと言う母親の言葉にヒントを得て、ファーガスは名案を思いついた。キャリックスが待ち受ける岩山に、雄叫びと共に現れたのは、素っ裸のバリーズ。これならボタンを取られる心配もない。驚いて逃げるキャリックスが小川に差し掛かったところを、マリーら少女たちが橋を引き倒して加熱する。小気味よい勝利だった。しかし、ボート小屋を改造した基地に戻った子供たちはもう裸は嫌だ、ボタンを取られたら親に殺される…と不満噴出。

みんなでキノコ狩や狐狩りをして、ボタンを買う資金を稼ぐことになった。ただ1人、ライリーだけは何かと文句を言ってみんなの足を引っ張り、ついには基地への出入りを禁止される。その日の戦場は森の中。キャリックスのパチンコ攻撃で負傷者が出た。白旗をあげたファーガスが抱き抱えていたのは、小さなウサギ。停戦した彼らは、うさぎの折れた枝に添え木をしてやる。歴史の授業で中世の戦争の話を聞いたファーガスは、これに習ってキャリックスの城に攻め込むことにした。馬に乗ったファーガスを先頭に、旗を立て、思い思いの楯や甲冑を身に付けて進軍する少年たち。熱戦の末、城にはバリーズの旗が翻る。捕まったジェロニモは、ナイフを受け取ると、自分でネクタイを切り、ボタンをもぎ取る。

バリーズの面々が基地で勝利の宴に酔っていたその時、轟音が聞こえてくる。ジェロニモが仲間外れにされていたライリーと共謀して、ライリーの父親のトラクターを運転し、反撃にやってきたのだ。基地はあっけなく押しつぶされ、トラクターも壊れてしまう。激怒したファーガスは、ライリーを裸にして服を燃やす。しかし、事はそれだけでは済まなかった。ライリーの父親は息子をリンチにされた上、トラクターも壊されたと思い込み、ファーガスの家へ怒鳴り込んだのだ。ファーガスは少年院送りを恐れて森に隠れる。そこへやってきたのはジェロニモだった。ジェロニモもトラクターを盗んだと疑われていた。やがて2人は大人たちに追い詰められて、切り立った崖を上って逃げようとする。

足を滑らせ今にも落下しそうなジェロニモ。ファーガスは後戻りして、彼に手を差し伸べる。その時、警察のヘリコプターが家に近づき、2人を救助する。ファーガスは、ついに少年院に入ることになる。付き添いの校長先生が励ましの言葉を残して帰って行った後、ジェロニモが部屋に入ってくる。トラクターの件を弁護士に話さなかったために、彼も少年院送りになったのだ。2人は悪口を浴びせ合うと、枕を武器に戦いを開始する。まるで草原にいるかのようにとても楽しそうに…とがっつり説明するとこんな感じで、誰にも忘れられない青春の1ページを戦いの中で見つけた友情、そして優しさと初恋を見事に描いた傑作である。

とにかく舞台の草原が美しく、目の前に広がる紺碧の海、切り立った崖の向こうに延びる緑深い草原と森。輝くように美しい自然に囲まれた南アイルランドの静かな街に、彼らの戦争の時は着実に近づいていく不安な空気感の中、ボタンを剥ぎ取ってプライドを傷つけると言うこれまた伝統的なプログラムが青春映画の中に組み込まれたユニークな作品である。この映画の悪ガキたちは、顔を突き合わせれば罵り合い、授業中も戦術を考えるほどであり、度々小競り合いを繰り返す彼らの戦利品は服のボタンで、リーダーが考える素っ裸で戦おうと言う奇想天外な方法で、子供たちはこの戦争を通して絆を深め、裏切りに直面し、思いがけない友情と優しさに出会うのだ。そこでは、大きな喜びや悲しみの瞬間が交差する。

生き生きと弾む子供たちの表情や仕種、ビビットな会話、映画は子供の世界をただ単に可愛らしくセンチメンタルに映すのではなく、時にシリアスな環境もさらりと覗かせながら、親密な観察眼を持って描き出す。草原とボタンは大人の目で見た子供の世界ではなく、子供の目で見た物語と言える。そして、この映画のもう一つの主役とも言えるのが、舞台となるアイルランドそのものだ。ロマンティックな雰囲気に満ちたこの土地は、子供たちの夢がそのまま子供たち自身のようなに自由に駆け巡っている場所。その空気を存分に取り込んで、映画は子供の心を、そして思い出を見事に救いとって見せている。この映画のために一流スタッフ、キャストが集まっているのは一目瞭然である。

ここで、悪ガキの軍団バリーVSキャリックスの悪口を字幕を読みながら見てみるとあまりにも下品なので、ここで少し紹介したいと思う。まずは、"橋の真ん中まで僕らの街だ。臭い手を出すな!ふにゃちんめ。ママの所へ帰れ。フニャチンのまぬけ。役立たずのばーか!一生、顔を出すな。あまりのドブスにボートが腐る。人の世話より風呂に入れ、ちんぽこ野郎!うちの風呂場を貸そうか?アヒルの人形と遊んでるのか?うんちを垂れ流すな。オカマ野郎!バリーズには、永遠に勝てないと認めろ。口だけのへなちょこ目。さっさとかかってこい。キャリックスは、糞をちびってた"…等である。

さて、ここからは印象的だった場面を話したいと思う。この作品は冒頭にアイルランドの街などをロングショットで捉え、女性のモノローグで説明されていく。優しい音楽とともに慌ただしい少年たちの日常が映し出される。アイルランドの子供たちガチで喧嘩するとマジで殺人が起こるんじゃないかって思うほどやり過ぎ…。相手側のおこりんぼう少年ゴリラが捕まって、制服のボタン、ブーツの靴ひも、サスペンダーまで小型ナイフで相手側のリーダーに斬られてしまうところなどそれぞれの少年たちのクローズアップがカット割りされて印象的だった。その後にリーダーが裸になってボタンを奪われない方法でまた崖の上で少年たちと戦う場面は滑稽である。この作品非常に貧富の差も映し出していて、リーダーの少年の家庭環境が悪い。

今年の8月に日本でもリバイバル上映された、イヴ・ロベール監督の名作「わんぱく戦争」(1961)が舞台を変え、また爽やかな少年成長物語としての側面を強調した形でリメイクされたのがこの作品である。両作品ともほとんど似たり寄ったりの作りで描かれているにもかかわらず、舞台となった土地の風景や時代が異なることから、それぞれに魅力的な映画になっている事は両作品見ている人にとっては既に感じている事だと思う。もともとはフランスを舞台にしていたが、この作品ではフランスからアイルランドに移っている。傷つけられた自尊心はより強くたくましくなって生まれ変わるような演出がなされており、隣り合う2つの村の少年たちの対立は、他愛ないけれども、彼らにとっては真剣なんだとわかる。

多少の傷は勲章がわりにと言う具合に、勇敢に攻撃をしたりそれをかわしたり、保留になってしまったり、メンツに関わる大事な事は真剣に話し合ったり、とにかく戦争は大人の戦争よりよほど紳士的に描かれている。まず死人は出てこないし、子供たちはこれ以上戦争やってはダメだと言う引き際をきっちりとわかっているからだ。大人たちの戦争は引き際をわかっていないためこの映画を見ても、少年たちの父親同士のやりとりからも、彼らも小さい頃はこのような小競り合いをしていたんだなと言うことがわかる。オリジナル版のフランス映画「わんぱく戦争」にもマリーと言う少女が現れたが、この作品にも同じ名前でマリーと言う少女が出てくる。彼女はイニシアチブを握っている立ち位置にあり、間接的とは言え参戦もして、戦争費用を稼ぐために小さな小動物(狐)を殺してしまった少年たちを豚扱いする。

そして彼女自身のモノローグでこの物語が語られるのだが、クライマックスに彼女からサプライズが観客に投げかけられる。しかしそれは2通あり、観客はどちらがどちらの〇〇になったのかを考えなくてはならないのだ。そこがこの映画の幸せな気分になれる素敵な結末が用意されている制作側の優しさを感じた瞬間だった。まるで途中まで見てこの映画が50点程度だと思ってた人でも、ラストの数秒間を見ただけで100点に変えてしまうほどの印象的なマリーの発言には幸福を感じた。ところでフランス映画の場合は、ちんちんが大きいからリーダーに決定されていたが、本作のファーガスはおざなりとは言え多数決でリーダーとして認められていた。しかも彼は学校の勉強とは関係なく聡明で頼りになる人物である。

一方、隣街のリーダーのジェロニモは誰が見ても美少年の美形ではあるが、もう一方のリーダーのファーガスはどんくさく、そばかすがあってガタイの良い少年だけれども、かなりたくましくてかっこいいと感じる。少年たちの行動に少しずつ制約を加えていくのは、彼らを問題児としてしか捉えることのできない社会の状況がこの映画にも描かれていて非常に勉強になる。まさに素晴らしい南アイルランドの自然と少年たちの"顔"を写した作品である。この映画を絶賛していた映画エッセイストの永千絵氏は本当に戦うべき相手の存在に気づき、やがて大人になっていくだろうと予感させてくれる作品だと言っていたことを思い出す。クライマックスの枕の羽の場面はヴィゴの作品を見ているかのようだった。

最後に余談だが、原作小説の「わんぱく戦争」は、1962年にフランスで監督された作品で、フランスのブルターニュを舞台にしていたが、小説の権利を所有していた彼は、イギリスまたはフランスでの再映画化には許可を与えようとしなかったようで、パットナムが独自の文化的ルーツを持つアイルランドを舞台にすると提案したところ、やっとロベールの許可を得ることができたそうだ。パットナムが舞台に選んだのが、アイルランド南西部のコークだった。脚本家のコリンは原作の舞台である古い時代のフランスを、現代のアイルランド南西部に移し変えて、彼の妻はアイルランド人で、彼自身もこの30年間に何度となくアイルランドを訪れている経験があり、つまりアイルランドに愛着を持っている人物が参加しているのだ。

そうした人物が参加したことによって、子供の世界を、あまり感傷的になることなく、見事な観察眼で出かけたんだなと思う。子供の世界に対する現実的な姿勢が見られる。そのありのまま描写する手法を取り入れ、さらにアイルランド人のあの素晴らしい、ロマンティックな人生観を作付け加えることに成功していると思う。子供の会話部分の執筆は、中でも特にやりがいのある作業だったと彼は話していたそうだ。まだ未見の方はお勧めする。真ん中にイギリスがあったとして、右が北海で左が大西洋、その左側にアイルランドがあり上にはダブリン、下にコーク、そしてスキバリーンがある。そういえばこの映画シネスイッチ銀座で上映されたようだが、私の好きな「スモーク」を監督しているウェイ・ワン監督の「チャイニーズ・ボックス」も確かシネスイッチで、あれもいまだにVHSのままだったな…確かジェレミー・アイアンズが主演だったと記憶している。それと倍賞美津子主演の松井久子監督の「ユキエ」も同じくシネスイッチで、あれも確かVHSのままだったと思う。とにかくビデオのまま残ってる名作がありすぎて困る。
Tef
-
かなり前に見た
かなり印象深い
負けるとボタンを取られるのを
鮮明に覚えています
観た人も少ないので
大切な思い出とします
歌子
2.8
子供たちだけの世界を描いたものは、ついつい何かを期待してしまう。わんぱく戦争のリメイクとのことだが、まずそのわんぱく戦争を見てないからなんとも言えないが、この映画に関していうと、若干狙いすぎてないっすか?とは思うものの、子役たちの美しい表情のせいか、ついつい夢中で見てしまう。

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