シャンタル・アケルマン監督作品鑑賞6本目

アケルマンによる美しきシンメトリー構図を堪能し、カメラワークを楽しむ作品。


映画監督のアンナが新作プロモーションのためにヨーロッパの都市を転々とする。
見知らぬ教師と出会い刹那的な夜を過ごし呆気なく別れる。母親、母親の友人との接触を挟みながらも、常に孤独感を抱えている。淡々としているからこそより幸福の本質とは？を巧みに描き出している。　


アンナにアケルマン自身を投影しているのでしょうね。


話が変わりますが...
トッド・フィールド監督の『TAR』は、この作品と全く同じシーンを2箇所に取り込んでいる。
フィールド監督のアケルマン監督へのRESPECTでしょうが、改めて鑑賞後に確認しました。

冒頭近くのホテルでの2シーン（カーテンを引き窓を開けるシーンと廊下を歩く途中、空き部屋で従業員がシーツ交換しているシーン）の動作や移動の速度、カメラワーク、背景まで完コピでした。
対比した動画をチェックしましたが、まるでAIのように完全一致していて驚きました。理由は解りかねますが...


✴︎tokiwa3256さん、ありがとうございました。

• #のんchan好みジャケ

特定の誰かとすれ違い続けていると言うわけでもないが常に世界との間にすれ違いが生じ続けている。映画のプロモーションを本来の目的とし欧州を転々とする彼女であるが、それが達せられる事はついに無く、むしろ行く先々で出会う人々に妻となり嫁となり母親となる為のプロモーションをかけられ続ける事になる。ひたすらサンドバック状態で一方的に相手の独白を受け止め続ける彼女であるが、そんな彼女も唯一母親の前では娘になり独白を吐露する側へと立ち位置を変える。「女の幸せ」と言うものが果たして結婚をし家庭を作り子を産み育てる事とイコールであるかは甚だ疑問であるし、その様な葛藤めいたものがアケルマン自身にあったのかもまるで知らないが、『私、あなた〜』及び『ジャンヌ・ディエルマン』から連なる精神的連作に思えた。ここでも強烈な孤独を感じさせるラストシーン、闇に消え入りそうな疲弊した魂の姿。

シャンタル・アケルマン監督の『私、君、彼、彼女』から4年後の自伝的作品です。
今回は監督に専念し、オーロール・クレマンが彼女の分身となります。

映画監督のアンナが自作の売り込みに、ヨーロッパ各地を回る３日間のエピソードを描いています。
前回の自伝作品では、"部屋"から"屋外"へ出て行った彼女は、今回は"国"から"国"へと旅をします。

アケルマンの両親はユダヤ系ポーランド人で、祖母はアウシュビッツに連行され、母のみが生き延びたとの事。
作品の道程は、ドイツのエッセン〜ケルン〜ブリュッセル〜パリと、あたかも自分の父母や祖母の苦難の道をなぞるかのようです。

この道すがらに、5人の男女とのエピソードが絡んでいきます。
・アンナに求婚めいた告白をする小学生教師
・アンナの結婚を気にする叔母
・電車中でアンナを引っ掛けようとする男性
・アンナにバイセクシャルを告白されたアンナの母
・アンナが愛している男性との逢瀬

映画監督としての名声や、生活基盤も4年前とは大きく変わりましたが、人としてのアイデンティティや女性としての見られ方、これらの揺らぎを試すかのような出会いが与えたものは何でしょう。

冒頭のホームのシンメトリーな映像では、出口へ向かう乗客と1人電話ボックスに向かうアンナを映し出し、他の人を相容れない孤独ではあるが、彼女の強さが私には伺えました
ラスト、旅から帰ったアンナが留守番電話の内容を聞くシーン。
孤独と虚無感がぐっと押し寄せてきます。
アケルマン監督は母親の死後、後を追うように自殺をしています。
この作品を繰り返し観ることで、その所為が伺えるのかもしれません。