記録
手術で両足を失った主人公は、やがて暗黒街のボスになり、恐るべき計画を立てる。この映画のオチはちょっと何とも言えないが、主演のL・チェイニーの顔が強面で悪党を徹底して演じきっている。原題も邦題も中々センスがいい。

1920年代に公開した異色なギャング映画で、この時代にこういう映画があったとは知らなかった。

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すぐに脳の手術してやれば良かったじゃんかよー医者野郎～～(涙)

素朴な科学信仰。アジトのギミックが楽しい。暗黒街の帝王のわりに子どもっぽいロン・チェイニーのキャラが良い。脚に障害のある悪のボスて設定は『スピオーネ』に影響したりしてるのか？

幼い頃の医療ミスにより脚を切断されて性格が屈折して悪党になった男、まさしく過酷な過去によって人間性をこじらせてしまった人物を演じるのを得意とするロン・チェイニーにぴったりの役どころだし冷酷な般若のお面のような顔立ちのなかにどこか愛を求めているような寂しさと悲しさを滲ませる絶妙な演技が素晴らしすぎて彼の顔芸だけで見れてしまう。そして脚のない障がい者そのものになるため脚を後ろにくくりつけるという狂気の演技が圧巻。

ある目的のため密かに行動する悪党のボスロン・チェイニー、そしてそんな彼が接近する芸術家の女性とその父であるかつて脚を切断した医師、チェイニーの目的を探るため潜入捜査する女性など色々な伏線が前半に張られていてそれが後半爆発して舞台となるサンフランシスコをパニックに陥れるのだろうなと予想したら後半はそんな伏線が次々と無視されて斜め上のところに物語が着地してしまっていて唖然。確かに潜入捜査していた女性とどこか交流しているような感じはしていたけれど…そのつめの甘さが傑作になり損ねてしまったと言うべきか。

主人公ブリザードが住む家に隠された秘密基地のギミック、不気味な部下たちの描写にフリッツ・ラングっぽさが(落とし穴まで登場)。でもその基地に密かに女性たちをかき集めて帽子を作らせていた理由に深い意味があるのかと思いきや、その理由にガックシ。だったら普通に主婦とかかき集めてバイトとして雇って作らせていた方が良いのでは。

障がい者であることを忘れさせるために置いてあるピアノ(ペダルは働いている女性が踏む)、スパイであることを知りながら殺すのをある理由で躊躇してしまう姿に人間性を感じさせる演出は好み。