もしもあなたが、病気や障害のために身体を動かせなくなったとしたら、どんな人生を想像しますか? 映画が映し出したのは、ふつうの街でふつうの生活を送る人びと。特別なことといえば、呼吸するための道具・人工呼吸器を使用していることくらい。 人工呼吸器。ひと昔前、それは巨大な鉄の箱で出来ていた。こんなものに頼るならいっそ死んだ方がまし― そう思われるには、十分すぎる見た目だった。いま、呼吸器はお弁当箱に様変わり。散歩も旅行も買い物も、ひとり暮らしさえも可能にしてくれた。呼吸器からは、休みなく空気が流れてくる。「シュー、シュー」と、まるで風のように。 淡々とその生活を映し出し、歩んできた人生を見つめた時、浮かんできたのは日常の尊さ。たくさんの支援が必要だからこそ、多くの人に出会え、自由に動くことができないからこそ、生きていることに感動する。 もしもあなたに、思うように身体を動かせない、そんな日が来た時は思い出してほしいのです。映画の中を駆け抜けていた、風の音を。その風に包まれた人と人とが、支えあいながら生きていたことを。