▪️Title :「ゴッズ・オウン・カントリー」
Original Title :「God's Own Country」
▪️Release Date:2016/02/02
▪️Production Country:イギリス
🏆Main Awards :※※※
▪️Appreciation Record :2019-147
▪️My Review
本作は2017年1月に『サンダンス映画祭』でワールドプレミア上映を迎え、監督賞を受賞。そして同じ年の『ベルリン国際映画祭』パノラマ部門でも上映されて、LGBTをテーマにした作品を表彰するテディ賞に選ばれたました。
この映画が美しいのは、愛が根底にあるからでしょうね。今まで不毛だった家庭が1人の人物の出現によって大きな影響を受けます。LGBTの登場人物を描いている映画ですが、登場人物の性的指向が主題にあるわけではなく、不器用で孤独なジョニーが少しずつ心を開いていき、恋に落ちる過程を美しい映像で丁寧に描いたラブストーリーなんですね。寂しくも美しいヨークシャーの自然やを映像と音楽で見事に描いています。
イギリス特有の灰色の下で地元に縛られたジョニーにとって、突如彼の人生に出現したゲオルゲは、曇り空の隙間から差し込む一筋の光であり、乾いた心を潤す水のような存在だったのでしょう。初めは敵意をむき出しにしていたジョニーが、ゲオルゲに心を許してからは屈託のない笑顔を見せ子供のように甘える様は微笑ましく、その変化に心を掴まれます。
それに、リー監督は映画の背景に「真実」があることを重視し、それを役者や作品の舞台にも求めたそうです。本作ではジョニーもゲオルゲも日々家畜の命に触れて、その生死に直面しています。主演の2人は牧場で実際に働くなどの準備をし、劇中で登場する羊の出産や皮剥ぎといった作業も実際に彼らが行なっているんですね。なので、リアリティが迫ってきます。
個人的にはLGBT系作品は得意ではないんですが、本作は抵抗なく作品に没頭できました。
▪️Overview
「神の恵みの地」と呼ばれるヨークシャーを舞台に、大自然の中で求め合う2人の孤独な青年の愛の行方を描き、ベルリン国際映画祭をはじめ世界各地の映画祭で高評価を獲得したラブストーリー。年老いた祖母や病気の父に代わり、家族経営の寂れた牧場を切り盛りする青年ジョニー。孤独な労働の日々を酒と行きずりのセックスで紛らわす彼のもとに、ルーマニア移民の季節労働者ゲオルゲが羊の出産シーズンを手伝いにやってくる。はじめのうちは衝突してばかりの2人だったが、羊に優しく接するゲオルゲに、ジョニーはこれまで感じたことのない恋心を抱きはじめる。ジョニー役に「ライオット・クラブ」のジョシュ・オコナー。18年11月3日からシネマート新宿、シネマート心斎橋にて開催の特集企画「のむコレ」で上映され、19年2月2日から全国公開。

“この国は美しいが、寂しい。”

“君の名前で僕を呼んで”はベストムービーだし、“ブロークバック・マウンテン”も好き。でもそれは俳優の美しさや、それが“作り物”だと分かるからこそ没頭できていた。その点この映画はなんだか良くも悪くもリアルすぎてちょっとだけしんどかったね…別に偏見があるわけではないけど。多分自分はLGBTに葛藤していく感じが好きなんだけど、これは最初から二人ともゲイだからかな。

ヨークシャの美しい景色や、広大な牧場を父親と祖母と三人で暮らしているという孤独は痛いほど感じたし、二人出会って少しだけ未来が明るくなる終わり方も好きだった。てか、おばあちゃんの演技が良かったなぁ。あとクセの強いイギリス訛り。牛糞の臭いがスクリーンを超えてくるようくらい世界観が作り込まれて、大自然の中では偏見などほんとに小さなものなのだと思うよね。

• #LGBT映画録

泥に塗れて重なり合う男達。
言葉に出来ない、
声にならない、
行き詰まった感情も重なり合う。

……お相手が誰であれ、屋外じゃなく綺麗なとこでそういう事をしたいな、僕は。

「神の恵みの地（ゴッズ・オウン・カントリー）」とも呼ばれるイギリス・ヨークシャー地方の広大な牧草地帯を舞台に、孤独な青年とルーマニアからの季節労働者との恋を描く。

祖母と右半身不随の父親と牧場で暮らす青年、ジョニー。羊の出産シーズンを迎え、人手の足りない牧場は季節労働者を雇い入れる事になり、応募して来たのはルーマニア移民の青年ゲオルゲだけだった—— 。

荒涼として寒々しい田園風景。
ゲオルゲ曰く"美しくも寂しい景色"。

自己中心的で身勝手で怠慢なジョニーの変わり様が凄い。家畜についての知識も経験も豊富なゲオルゲに惹かれ、やがて結ばれた後はもはや恋に浮かれる乙女の様。

同じ屋根の下、父や祖母が寝静まるのを待った後、キャピキャピし過ぎなんだが。

お祖母ちゃんが部屋を掃除していて、使用済みのゴムを見つけたシーンは、冷や汗かいた。そういうのはちゃんと後片付けしてくれ…。でも、お祖母ちゃんは言いたい事をゴクリと飲み込んで、ただ静かに泣いていた。

渦中の2人より、ジョニーに対して小言ばかりの祖母や父親との家族関係が不思議と心に残った。

右半身付随で、息子であるジョニーの手を借りなければ暮らせない父親。

お互い素直になれない心。

それでも父は、
息子の手を握り
感謝の意を述べた。

大胆さと繊細さが同居したような作品。

ジョニーもゲオルゲも、
祖母も父親も、
言いたい事は言わない、言えない人達。
余計な事しか言わない人達。
だからこそ、本音が出た時の台詞が光る。

それは、「ありがとう」だったり。
「一緒にいたい」だったり。

一時は離れ離れになったジョニーとゲオルゲだが、共に暮らす事を決めた後の、祖母や父親との関係性も気になる所。

それでも、日本に比べれば同性愛への理解もあるお国柄だろうから、きっと彼らの未来には光が差しているに違いない。

• #2022akirunaway