『帝銀事件　死刑囚』
原題The Long Death.
製作年1964年。上映時間108分。

昭和23年に帝国銀行で起きた毒物殺人事件をドキュメンタリータッチで描き、事件の謎とジャーナリズムの姿に迫った社会派サスペンス。

東京都豊島区の帝国銀行椎名町支店に、東京都衛生課員を名乗る中年の男が現れた。
男は『近くで赤痢が発生した』と告げ、行員16人に予防薬と称して青酸化合物を飲ませ、現金と証券を奪って逃走した。新聞記者の武井は、青酸化合物が七三一部隊により作られたことを知り取材を始めるが、GHQから追及をやめるよう要請される。
そんな中、警察は画家の平沢貞通を逮捕した。。。

昭和23年の帝銀事件の発生から、平沢貞通が容疑者として逮捕され、　
昭和25年の死刑判決。
昭和37年の宮城刑務所への移送までの捜査の流れ新聞記者たちの視点から、帝銀事件を冤罪事件として描き出してる。
ジャーナリズムのあり方を問う至極真剣で、社会派の映画でした。
熊井啓の監督デビュー作だそうで、それなのに複雑な事件経緯をホンマ分かりやすく、加えてテーマは明確に描きだしとても巧い構成やと感じました。
作品はモノクロームで、シネスコで撮られた映画で余計事件をおどおどろしく感じさせられたした。
今作品は、日活スターは登場せず、主な配役は民藝ほかの新劇系の俳優陣で揃えてます。
なんでも、監督熊井啓は配役の相談を宇野重吉にしたそうです。
(宇野重吉って役者さんを少し前まで全く知らなかったけど、今住む町に宇野重吉が所縁があるって、町の爺さんに教えてもらい、寺尾聰の父ちゃんて聞いて吃驚したとこなんです。)
日活は劇団民藝と提携していて、日活の若い俳優やスタッフたちの相談役でもあったらしいです。
満を持しての監督デビュー作やろし、しかもGHQや米国批判を含んだ難しいなテーマだけに、不安からアドバイスを求めたのかな。
監督の戦後司法史のクソ闇に対する強い好奇心と、米国に対する期待と失望をとても真剣に意識して問題を浮かび上がらせてました。
個人的には引き込まれましたが、本作品はドキュメンタリー風の再現映画でドラマ的な奥深さは望めません。
キャラにユニークさがないし、こないな事件に興味がない方には不向きかと思います。

余談ながらWikipedia抜粋ですが、
帝銀事件とは、1948年（昭和23年）1月26日に東京都豊島区長崎の帝国銀行（後の三井銀行。現在の三井住友銀行）椎名町支店（1950年に統合閉鎖され現存しない）に現れた男が、行員らを騙して12名を毒殺し、現金と小切手を奪った銀行強盗殺人事件。
犯人として画家の平沢貞通が逮捕され死刑判決を受けたが、平沢は獄中で無実を主張、刑の執行がなされぬまま1987年(昭和62年)に95歳で獄死した。
とあり、
帝銀事件の捜査線上に浮かんだ容疑者は約5800名にも及んだ。
平沢は、帝銀事件の犯人の人相と似ていたため、比較的早い段階で捜査の対象になったものの、有力容疑者にはなっていなかった。
1948年8月18日、平塚八兵衛が話をきくため平沢の長女の勤め先に行くと、初対面の長女は『また、調べられるのですか』と云って急に泣き出し、平塚を驚かせた。
以前、平塚とは別の刑事が聞き込みに来たことがあり、長女は、もし父が本当に犯人だったら、と気をもんでいたためであったそうです。

見たで。
日本犯罪史最悪の冤罪事件と言われる帝銀事件を映画化。
占領下の圧力に屈するしかない時代性、不十分な証拠と強要で勝ち取られる自白。そんな中で無罪の可能性が高い人間に言い渡された死刑…今の時代にも通ずる人が人を裁く重さを描いた激作。人間と真実とは…
テレビの再現ドラマなんかでざっと事件の名前を聞く機会はあったけど大まかな全容をちゃんと知ったのは今回が初めて。仮に日本で刑事裁判にかけられたそれで無罪を勝ち取れるのは全体の数パーセント位だと言うのを聞いた事がある。もし平沢氏が本当に無実だったら彼が味わった苦痛ってどんなものだったろうか？自分がやってもない事件でいきなり逮捕されて一方的に死刑を宣告され次の日殺されるかもしれないと言う恐怖を味わう毎日…自分だったら発狂して死ぬなと思うが同じような冤罪事件が生まれる可能性がある限りこの映画の様な存在は大切になるんだとも思う。
事件の当事者達の苦しみだけじゃなくその家族達が受けた被害も描いていて１つの決めつけや先入観がもたらす悲劇も描かれていてネットやメディアの報道から極端な思考に走って暴走してしまう現代にも通ずる所だと思った。

1948年帝銀椎名町支店で起きた
青酸化合物による大量殺人事件
16人のうち12人が死亡

731部隊や、GHQも絡む難事件で
知れば知るほど謎だらけ•••••

死刑囚平沢貞通は死刑執行される
事なく1987年95歳で病死•••

深い闇を感じる作品でした。