戦後ニッポンにおける 日米の主従関係 そして復興や発展の陰で蓋をされた 深く黝んだ闇の部分を
一人の正義漢を中心に 当時の人々の生業と気質を丁寧に描きとりながら 見事にスクリーンに浮かび上がらせた渾身の作品だと思う

あれから紆余曲折の中 民主主義や透明な法制度が真に近づきかけた半世紀以上を経て 再び権力や政治に 不信な翳りが見てとれる"今"だからこそ もう一度観ておく必要があるような気がしてならないなぁ

熊井啓監督が描く社会派サスペンス。
当時の日活のエネルギーを感じる。モノクロ。主演がなんと名優宇野重吉。（彼の主役の映画は多分初）そう寺尾聰のお父さんだ。いやー渋い。

1959年。埼玉県にある陸軍憲兵司令部（CID）に勤務する秋山（宇野重吉）は、前年に発生したリミット曹長変死事件の再調査を命じられる。

CIDとは、在日米軍の兵士や軍属による犯罪を捜査する、私服の刑事部隊である。
しかし、曹長の遺体は日本側の反対を押し切って米軍に引き渡され、解剖も行われないまま本国へ送還されてしまっていた。

やがて秋山は、この事件の背後に、スパイ活動のみならず、麻薬ルートや紙幣偽造にまで関与する巨大な組織の存在を突き止める。だが、その組織に関わった者たちは、次々と不審な死を遂げていくのだった。

戦後の日本は、敗戦国という立場のもと、こうした闇の中であからさまな圧力にさらされていた。
そして、この映画もまた、巨大な存在――アメリカ🇺🇸という国の闇の中へと、静かに飲み込まれていく。

本作は1965年の作品である。
戦後の日本では、下山事件、三鷹事件、松川事件など不可解な事件が相次ぎ、アメリカ政府が深く関わっていたとも言われている。これらの事件は、敗戦国・日本における共産主義勢力を抑え込むことが目的だったのかもしれない。

1960年代当時、監督の熊井啓は、戦後の構造が本質的には何も変わっていないという感覚を持っていたのだろう。
宇野重吉が、米軍基地から飛び立つ飛行機の防音壁を見つめるシーンがある。まるで今の日本こそがこの状況なのだと、監督が語りかけているように思える。実際にそうだったのか、私にはわからない。

だが、印象深いのはこの映画のラストシーンだ。
鈴木瑞穂演じる刑事が、どれだけ追いかけても結局は無力だ――といったような、諦めの言葉を口にする。
それに対して、芦川いづみ演じる伊集院和子が、きっぱりと言い放つのだ。

「そうでしょうか？　諦めてしまっては、いつまで経っても私たちの生活は変わりませんわ。」

その言葉に、刑事はハッとして彼女の顔を見る。

――すべては、このラストシーンに集約されている。
ここにこそ、熊井啓監督の思いが込められているように思われるのだが。

• #y2025

日本はアメリカに255の基地を提供している
神奈川 米軍基地キャンプのリミット曹長が掴んだ事実 極東ブランチ☆贋札・麻薬

昭和33年の夏 東京湾に浮かんだリミット曹長の死体
秘密捜査官CIDの秋山が曹長の足取りを追う
世界中のスパイが絡み合っている
外側からでは何一つ分からない事実
顔色ひとつ変えない秋山が事件を知るうちに憤りの色が増す

知られてはならない為の高圧的な口封じ
必死の叫びも届かない

「海と毒薬」は命を扱っていたので詩的表現が強かったように思う 大きな力に向かう宇野重吉の存在が重く重く感じた