“過剰な演奏は音楽を殺す” ビル・エヴァンス

いつからか感じてたことだけど、人の音楽の愛しかたには2種類ある。

ひとつは特定のジャンルやスタイルを愛する人。アーティストに心酔したり、技術や様式美やスタイルを追求する。愛と誇りゆえに時には他者を見下したりもする。

もういっぽうは音楽の普遍性を愛する人。彼らが愛するのは基本的にはメロディやコード、作品自体であり、ジャンルやスタイル、流行りの縛りを受けない。彼らは多様な中に変えようのない普遍を探す。

守破離…その段階の違いなのかも？というとまた角が立ちそうだけど。

ジョアン・ジルベルト、ジャコ・パストリアス、ジミ・ヘンドリックス、ビル・エヴァンス。彼らが後者であることは間違いなく、だからこそ彼らだけのスタイルが編み出されたのだ。ジャンルを超越した天才たち。

僕がビル・エヴァンスで日常的に聴くのは数曲で、とてもファンとは言えないのだけど、その数曲が一生ものになっている。

さて、この作品はほぼビル・エヴァンスのインタビューと演奏のみで構成されているが、なんだか響きまくりの言葉だらけだった。1966年の作品なのでさすがに古いのだけどね。

ユニバーサル・マインド。

素人の感覚を信じろ。専門家の目は曇っている事も多い。基本に忠実に、ただし基本はひとつではない。スタイルはマネするものではなく自ずから出てくるもの。自然に聞こえるメロディをつくれ。spontaneous＝自然発生的であれ。jazzはスタイルやジャンルではなく創造プロセスなのだ。

どれも激しく同意かつ耳が痛い。

“僕に特別な才能があるとは思っていない。週５日の基礎練習が自分の感情を表現するための技術を身につけさせてくれたんだ。”

“多くの人は他人に認められたくてつい苦手なものにも手を出す。しかし、自分が得意なものに集中することが結果的に他者へも好影響を及ぼす。“

“与え過ぎれば興味を失う。自分で考えさせること。”

本当に美しい音楽には、これ見よがしな演出や過剰な演奏、転調、派手な音色なんか要らない。他者を圧倒してしまうような過剰な歌唱力も邪魔だ。

1000年を生き続ける音楽とは。

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エヴァンス兄弟とピアノを囲もう

映画『タイム・リメンバード』にも少し使われていた映像のフル尺版

“The Universal Mind of Bill Evans: The Creative Process and Self-Teaching”

■INTRODUCTION
ジャズの魅力とその演奏手法を、エヴァンスの芸術的な実演を交えて解説するドキュメンタリー作品。彼の実の兄であり、音楽教師としても著名なハリー・エヴァンスがジャズについての解説とビルへのインタビューを担当し、ジャズ・ミュージックの魅力を掘り下げて行く。

■NOTES
数々の名演と名レコーディングによって世界中の音楽ファンから愛されたジャズ・ピアニスト、ビル・エヴァンス。マイルス・デイヴィスの音楽史に残る金字塔『カインド・オブ・ブルー』に参加。後に数々の作品を残しハービー・ハンコック、チック・コリア、キース・ジャレットなどのピアニストをはじめ多くのミュージシャンに影響を与えた。本作品は、そのビル・エヴァンスがジャズ・ミュージックの魅力について実演を交えて解説するだけでなく、音楽という芸術活動の真髄にまで迫ったドキュメンタリー作品である。

本DVDは歴史に残るジャズ・ピアニストのビル・エヴァンスがジャズの魅力とその演奏手法を、彼の芸術的な実演を交えて解説するドキュメンタリー作品である。彼の実の兄であり、音楽教師としても著名なハリー・エヴァンスがジャズについての解説とビルへのインタビューを担当し、ジャズ・ミュージックの魅力を掘り下げて行く。天才音楽家ビル・エヴァンスの音楽に対する思想までも明らかにし、音楽家を目指す者にとっては教科書となり、また全ての人達にとってビル・エヴァンスとジャズの魅力を体験できる仕上がりとなっている。

作品の冒頭でビル・エヴァンス自身がジャズの即興音楽の魅力を語ると同時に、スタンダード曲“スター・アイズ”をジャズの手法によって再解釈させて行く様子が映しだされ、初心者にもジャズという音楽では演奏家の即興（アドリブ）によって曲に新しい息吹を与えられる様が体験できる。また、ジャズ・ミュージックの教本として作られたこのドキュメンタリーでは、ビル・エヴァンスが音楽教育についての信念を語り、基本の大切さ、プレイヤーの信念に従って独自のスタイルを磨いていく事の大切さを語りかけ、いかに彼が20世紀に最も影響力を持ったジャズ・ピアニストへ成長して行ったかを垣間みることが出来る。また、クラシックのミュージシャン／コンポーザーもジャズの手法を取り入れていたと語る様子は、ビル・エヴァンスが音楽活動を通していかに芸術の持つ真髄に触れていたことを雄弁に物語っている。

■CHAPTERS
1. Universal Musical Mind: Spartacus Love Theme
2. Jazz Process: How About You
3. Fundamentals
4. Star Eyes
5. Development of a Genius
6. Jazz Education
7. Very Early
8. Time Remembered
9. My Bells

■COMMENTS
「スター・アイズ」を例にエヴァンス兄弟がピアノを囲むシーンは面白い。ビルが超優秀な生徒に見える。

演奏者だけでなく、一人の人間としても響く言葉ばかり。

断片はちょこちょこ観たが、これがフル尺だったんだ。

DVDのジャケになってる写真は、おそらくチャック・スチュアート（Chuck Stewart）が撮ったもの。ポストカード欲しいな。

突き詰めた
技術の先のスタイルから溢れ出た
優しき音色は
脳汁垂れ流しの
emotionalな情景だった