【第74回カンヌ映画祭　コンペティション部門出品】
『ユマニテ』などの鬼才ブリュノ・デュモンがてがけた風刺コメディ。カンヌ映画祭コンペでプレミアされ、カイエ・デュ・シネマ誌ベストテンでは第5位に選出された。

『プティ・カンカン』など最近のデュモンはかなり好きなタイプだったんだけど、これはイマイチ。デュモンの風刺が今回は不発だったんじゃないかな。

レア・セドゥ演じるジャーナリスト「フランス」がネガティブな事態へ巻き込まれていく様を描いている。失態、家族の不幸、事故など不幸のオンパレード。しかしフランスの視点だけに絞り、そこまでシリアスには感じないようになっている。

それがイマイチ入り込めない原因にもなっている。コメディ的に見せたいのかシリアスに見せたいのかがあまりはっきりしない。もちろんそれが狙いであることは分かるのだが。

単純に物語として弱いのも問題。興味を惹かれる展開があまりない。デュモンの持ち味は突飛な演出と人を食ったユーモアだと思うのだが、本作ではそれがみられない。

地に足が着いていそうで着いていない、その中途半端さは如何ともしがたい。もっと風刺コメディに振り切ってくれれば楽しめたのだが…

フランスを演じたレア・セドゥは素晴らしいし、撮影や色彩設計は目を見張るものがある。しかしデュモンらしさが希薄なのがつまらなかった。もっと突飛にぶちかまして欲しかった。期待していただけに残念。

• #第74回カンヌ国際映画祭

著名になること、偽善に囲まれた偽りの幸せ。ナルシストセレブジャーナリストの成功の裏側を描いたブラックコメディ。クセはあるけど思ったより引き込まれた。物語より画面の威力がすごい。レアセドゥの節目がちな目と真っ赤な口紅で際立つ透明感。フランス・ド・ムールって名前がつけられて象徴として描かれる彼女。恵まれてるはずなのにどうしてこんなに悲しいのか。

如何にもポスト・トゥルース時代の視線の映画と言った趣で正直語るのも億劫…と言うか意味無いでしょと言う気になってしまうが、大事な独白場面で露骨に乳を寄せるレア・セドゥの谷間に釘付けになっていたらちょうどそれが上手に隠れる様にカメラが顔面に寄っていってクソがぁー！！！！！となった、カメラはもう真実を映す代物では無い（？）。騙していた側が騙される側に回る、それでも彼女が虚構の彼女を演じ続けるのはそれが望まれた彼女の「真」の姿である事を理解しているからだろう、大衆は常にセンセーショナルな悲劇を欲し、涙はそこに彩りを添える。真っ白に顔を塗りたくり真っ赤な口紅で染めようとも一転してドすっぴん（風）であろうともそこはやはりレア・セドゥであり、大事なのはその「目」であるが、そこから零れ落ちる涙の意味と価値は次第に薄れ遂には消失する。全てを失った後でも尚悲劇を見つめる事をやめない彼女、戦場ですら「自撮り」をやめなかった彼女が写真撮影を断ったのには大きな意味があろうし、彼女が「美しい」と言った場所は一見するとそんな事はまるでないが大きくカメラが引くと確かにそう言えなくもない。目の前で突発的に起きた破壊行為にふと漏れる「笑み」、ジャーナリズムの真髄は涙を流す事よりも無意味な暴力に対し嘲笑をくれてやる事なのかもしれない。