Rickさんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

インディ・ジョーンズと運命のダイヤル(2023年製作の映画)

3.7

 我々は過去のロマンに縛られている。あの時の興奮やあの時の冒険に今もまだ固執している。でも時代は流れる。自然と歳をとっていく。体は思うようには動かず、いろんな悲しみも知って、心も昔みたいに無鉄砲ではい>>続きを読む

犬王(2021年製作の映画)

3.6

 見届けようぜ。歴史に残らなかった人たちの迎えた結末を。聞き届けようぜ。歴史の波に埋もれてしまった人々の声を。共に歌おうぜ。彼らがここにいたことを。そして我々が今ここに生きていることを。
 申学能の名
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スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース(2023年製作の映画)

4.8

 「スパイダーマン」たちの避けられない運命。肉親の死、愛する人の死、愛する人が愛する人の死、そして圧倒的な孤独。その悲しみをうちに秘め、マスクで顔を隠し、冗談めかしたお喋りで以て街の平和を守る。それが>>続きを読む

TAR/ター(2022年製作の映画)

4.3

 上手くいっていたはずなのに、少しずつ狂っていくリズム、テンポ、歯車。もちろん厳しさはあったかもしれない、でも悪いことはしていないはず。私情を挟んだつもりはない、努力もしてきたはずなのに。そんな焦りと>>続きを読む

マルモイ ことばあつめ(2018年製作の映画)

4.4

 ことばは、人のアイデンティティと分かち難く結びついている。自分が何語を話し、何語で考えているのかは、意識しようが無意識だろうが、存外自分自身の帰属意識を形成している。ことばを奪われることは、即ち自ら>>続きを読む

ゆるキャン△(2022年製作の映画)

4.1

 学生時代にできない事は、たくさんある。欲しいものは小遣いの範囲でちょっとずつ、行ける場所も、そこまでの足がないから限られる。県外に行くのも大冒険だ。その分、自分で仕事をしてお金を稼ぐようになると、ぐ>>続きを読む

魔女の宅急便(1989年製作の映画)

5.0

 魔女は血で飛ぶという。絵描きには絵描きの血が、パン屋にはパン屋の血があると。どうやら単なる血筋や血脈のことではなさそうだ。これまで、それとして生きてきた経験や誇り、また覚悟こそが、その人をその人たら>>続きを読む

もののけ姫(1997年製作の映画)

4.0

 人間のエゴのために木を切り倒す、神を殺す。これほど浅ましいことはない。欲に取り憑かれた人を前に、荒ぶる巨神はただ全てを飲み込んでいく。恐れをなし、畏れを感じた人々は、ただ鎮まりたまへと口にするのみ。>>続きを読む

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3(2023年製作の映画)

5.0

 完璧じゃない我々は、喪失を抱えたまま生きていく。失ったものと同じものは2度と戻ってこない。取り戻せたと思っても、それはどこか異なったものに違いない。ただ間違いなくこの手に残るものもある。やり直すこと>>続きを読む

ちょっと思い出しただけ(2022年製作の映画)

4.3

 今ここにいるということは、これまで歩んできた道があるということ。「因果関係」という言葉で括るのは、なんだか本質を見誤りそうだけれども、それでも過去があったから現在がある。別にそれ自体に良いも悪いも無>>続きを読む

プリンセス・プリンシパル Crown Handler 第3章(2023年製作の映画)

4.5

 前作が面白いながらも、しっかりとスパイアクションものとして動き回っていたのに対して、今作はいつも通りの待ちに待ったプリンセス・プリンシパルであった。権謀術数に、騙し合い。どちらかといえば地味ながらも>>続きを読む

生きる LIVING(2022年製作の映画)

4.4

 日々のルーティンに埋没し、心を殺してしまってはいないか。生きながらも死んでいるようではないか。ただ時間を潰す方法を忘れてしまってはいないか。ただ生きるのではなく、よく生きているか。
 黒澤明の名作『
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シン・仮面ライダー(2023年製作の映画)

3.7

 「仮面ライダーの良さ」はこれで良いのだろうか...。孤高のライダーとして、人知れず戦うというコンセプトに寄り添っているのは分かる。しかしそれでも、フェティッシュな部分がとことん合わない。初期作の印象>>続きを読む

グリッドマン ユニバース(2023年製作の映画)

5.0

 グリッドマンという存在は、どこまでも特異である。パソコンが普及する前に生まれた、電脳世界を舞台にした特撮。20年以上の歳月を経てアニメ化、さらに数年後には続編まで制作。特撮というパッケージそのものさ>>続きを読む

劇場総集編 SSSS.DYNAZENON(2023年製作の映画)

4.2

 改めて『SSSS.DYNAZENON』を見返すと、南夢芽の物語が大きな柱になっていることがわかる。姉の死の真相を探るエピソードが、1クール通してのフックとなっているが、それ以上にそれは麻中蓬との関係>>続きを読む

崖の上のポニョ(2008年製作の映画)

3.8

 こんな、いい意味でぶっ飛んだ作品が子ども向けの皮を被ってひっそりとしていたことが何よりも驚き。子ども向けでないとして、では大人向けかと言うとそうでもない。どこに連れて行かれるのかさっぱりわからないま>>続きを読む

アラビアンナイト 三千年の願い(2022年製作の映画)

4.2

 人は、物語を通じて様々なことを知る。昔々の遠い歴史を、メルヘンチックなお伽噺を、何かしらの教訓めいたものを、そしてそこに愛があったということを。また同時に、人は物語る生き物である。辛い過去を、楽しか>>続きを読む

ハッピー フィート(2006年製作の映画)

3.6

 あるコミュニティ内で普遍的とされる「伝統」からは弾き出されてしまったとしても、絶望する必要はない。その「伝統」は、一歩外に出れば普遍ではなくなり、むしろ災いの元とされるような自らの特性が新たな対話の>>続きを読む

マイ・インターン(2015年製作の映画)

3.8

 知恵は、積み重ねてきた経験と観察眼に宿る。スマートでウィットに富んだナイスな先達の言葉に耳を傾ければ、何かの打開策が見えてくるかも知れない。非常にウェルメイドな、明日から頑張ろうと思わせてくれる作品>>続きを読む

劇場総集編 SSSS.GRIDMAN(2023年製作の映画)

4.0

 『SSSS.GRIDMAN』は、TVシリーズのために作られ、30分×12話という時間尺の中で練り上げられた物語である。その大前提のもとで、2時間尺の映画として再編集するとなると、どんな名医でも裸足で>>続きを読む

モリコーネ 映画が恋した音楽家(2021年製作の映画)

4.4

 エンニオ・モリコーネ。この名前を知らずとも、彼の作った曲はどこかで必ず耳にしたことがあるはずだ。『ニュー・シネマ・パラダイス』か、『続・夕陽のガンマン』か、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリ>>続きを読む

そばかす(2022年製作の映画)

4.1

 他者への想像力ほど、持つのが難しいものもない。誰もが、自分の知っている言葉や感情でしか世界を認識できないからだ。だからと言って、自分の認知で理解できない人が存在していないわけではない。むしろ、そこに>>続きを読む

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)

4.8

 時に何の理由もなく失ってしまうことがある。二度と触れることは能わず、二度とその姿を目にすることも、その音を耳にすることもできない。「何故?」と理由を求めた所で何も帰ってこない。自分の力ではどうするこ>>続きを読む

窓辺にて(2022年製作の映画)

5.0

 ずっと分からないものがある。最も身近で、最も長い時間を過ごして、最もよく知っているはずの存在、そしてその意識と感情。もはや他者のことなんかは、分かるはずもないと割り切っている。それすら分からなかった>>続きを読む

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)

4.5

 我々は銀幕に映る「スペクタクル」を見る。カメラが撮る物体を、風景を、動物を、人々を、「何か」を、泣いたり笑ったりしながら「見せ物」として「消費」する。意識的か無意識的かは別にして、望む望まざるに拘ら>>続きを読む

ボーイ(2010年製作の映画)

4.2

 憧れの人ほど、盲目にさせるものはない。一度心の中に育った憧れの感情は留まるところを知らず、目の前にいる人を飾り立て、誰よりもカッコよく見せてしまう。たとえ、その人がどうしようもないほど弱く、悲しい人>>続きを読む

トップガン マーヴェリック(2022年製作の映画)

4.7

 技術革新による自動化、遠隔化が進む先に、人間の果たすべき役割はどこに残っているのだろうか。それも戦場という危険地帯において。死ぬ必要のない生命を、死地に送り出す意味とは。いずれ古びて消えていく場所か>>続きを読む

トップガン(1986年製作の映画)

3.6

 10数年くらい前、F-14がトムキャットの別名を持っていることなど知らない時代に一度見たときは、ただただ「戦闘機が飛んでいる」以外の印象が残っていなかった。物語の流れも一切覚えていないし、克服すべき>>続きを読む

ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー(2019年製作の映画)

4.4

 真面目なことは悪いことではない。勉強一筋で頑張ってきたことも、何も間違えていない。そのはずなのに...。パーティ三昧で遊びまくっている人たちの方がグンと楽しそうだし、真面目にやってきたことがバカみた>>続きを読む

ジョゼと虎と魚たち(2020年製作の映画)

4.3

 歩くことと歩むことは、似てるようで違うもんなんやと思う。たとえ歩けてたとしても、歩めへん人がいるように、歩けんでも歩むことは出来る。きっと歩かれへんことは別種の悩みや困難を抱えやすいのやろうけども、>>続きを読む

星の子(2020年製作の映画)

3.9

 何かを信じることで、救われる時もある。たとえ側から見たら奇怪に見えることでも、信じ続けることで、それは日常になる。日常にまで浸透すれば、信じるも信じないもない。ただそこにある生活であり、文化であり、>>続きを読む

フリー・ガイ(2021年製作の映画)

4.2

 毎日同じ日々の繰り返し。毎日同じ飲み物を買って、同じセリフを話し、同じ仕事をする。傍若無人に目立って暴れまくる「ヒーロー」たちに踏み躙られて、萎縮し、背景に徹している。それが自分に与えられた役割であ>>続きを読む

ハケンアニメ!(2022年製作の映画)

5.0

 とある魔法少女は「奇跡も魔法もあるんだよ」と言ったが、アニメを見る時はまさに、そんな現実には起こり得ない奇跡や、うっとりするような魔法を求めている気がする。一度人生を揺るがすほどのアニメの魔法を経験>>続きを読む

親愛なる同志たちへ(2020年製作の映画)

4.5

 「祖国のため」とは一体何なのだろう。ストライキなど社会主義国家では起こるはずがないと言うことなのか。体制を脅かす「暴徒」を徹底的に鎮圧することなのか。死体を無かったことにして、恐怖で人の口に戸を立て>>続きを読む

シン・ウルトラマン(2022年製作の映画)

3.6

 昔から、光の巨人よりも怪獣の方が好きだった。多種多様なデザイン、禍々しさと荒々しさ、時につぶらな瞳をしながらも街や山、コンビナートに鉄塔に、あらゆるものを破壊し、蹂躙し尽くす。知力が高い宇宙人は、日>>続きを読む

エクストリーム・ジョブ(2018年製作の映画)

4.2

 失敗続きで解体寸前の、冴えないにも程がある麻薬捜査班。一発逆転を狙って、フライドチキン屋に扮して張り込み捜査を行うも、なんとお店が繁盛してしまい...。
 スマートさとは無縁ながらも、目まぐるしく変
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