Kuutaさんの映画レビュー・感想・評価 - 7ページ目

モーガンズ・クリークの奇跡(1944年製作の映画)

3.8

「収拾がつかない」

舞台は第二次大戦中。地元の出征パーティーに参加したトルーディは、酔った勢いのまま名もなき兵士と結婚、妊娠までしてしまうが、その晩の事は何も覚えていない。彼女はそれを隠そうと、自身
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リオ・グランデの砦(1950年製作の映画)

3.5

十分面白いが他のフォード作品と比べると散漫な印象。

「アパッチ砦」「黄色いリボン」は、名も無い騎兵隊がチームとなっていく、無形の連帯がアメリカを形成する…という軍隊を軸にした話だったが、今作は家族も
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キングコングの逆襲(1967年製作の映画)

3.1

・例によってコングは不細工だが、対照的にメカニコングのデザインは秀逸。コングっぽさと、西洋の甲冑のような人工的なゴツゴツ感がうまくミックスされている。

・作戦に失敗したドクター・フー(天本英世)は、
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アンビュランス(2022年製作の映画)

3.4

期待通りの3.4。5年ぶりのベイ新作の劇場公開。ファン必見。

ベイについては6アンダーグラウンドの感想でも少し書いたが、彼はどちらかと言うと、ギャスパー・ノエとかに近い監督だと思っている。画面の隅々
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由宇子の天秤(2020年製作の映画)

3.5

年度末は小忙しくてなかなか映画が見られない…。高崎映画祭のオープニング作品だった今作で1ヶ月ぶりの劇場鑑賞。

ワンショットが長く、内容もヘビーなので、胃袋が沈み込むような疲労感が残った。

森達也が
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武士道残酷物語(1963年製作の映画)

3.6

「所詮自分達だけではどうにもならない」

侍の世から現代まで続く日本人の滅私奉公=社畜魂を、主人公の飯倉家の先祖を辿る7エピソードのオムニバスで描いた作品。

・構成が面白い。冒頭は現代。婚約者の女性
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風櫃(フンクイ)の少年(1983年製作の映画)

4.0

ドキュメンタリータッチな映像と構図の決まった「映画のような」映像が丁寧に並べられている。平家の多い風櫃の街並みと、二階建てアパートの対比の妙。あのアパートの間取りすごい。

都会に出ると縦の構図が増え
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スティルウォーター(2021年製作の映画)

3.9

秀作。「スポットライト 世紀のスクープ」のトーマス・マッカーシー監督。このおじさん映画撮るのうまい。

帽子を被り、扉を閉め続ける男(マット・デイモン)と、窓を開けて光を取り入れる女。男はアメリカ的な
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アンチャーテッド(2022年製作の映画)

3.5

良い意味で普通。ファミレスみたいな映画。原作ゲームは4作ともプレー済みで、ファン目線強めの感想。

ゲーム自体が「プレーできる映画」をキャッチフレーズに、過去の名作のオマージュだらけで作られており、今
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バタリアン(1985年製作の映画)

3.8

窓なんかねーんだよ!(オープンカーに乗りながら)

人もゾンビも元気があって良い。元気出た。窓を板で塞ぐよりも優先すべき事は色々あったと思うが、目の前のタスクに全力を注ぐ人間たちの躍動感。目玉くりくり
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うなぎ(1997年製作の映画)

3.8

今村昌平は一貫して「殺さなければ生きていけない生き物」を描いた監督だと思う。息を吸うように殺すシリアルキラーや、殺人が制度化された村社会を通して、人の性を時にユーモアすら込めて表現する。

今作も同様
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ウエスト・サイド・ストーリー(2021年製作の映画)

4.1

・異様な光量が画面をギラつかせている。褪せた世界に刺さる原色。光と闇、白人と有色人種、男と女、暖色と寒色、理想と現実、愛と憎しみ、生と死…さまざまな二項対立が肉体と共に交差、衝突、回転、離散している。>>続きを読む

雨の午後の降霊祭(1964年製作の映画)

3.5

黒沢清の降霊は未見。ホラーではなくサスペンス。「何のためにこんな事を…」とやるせなく、悲しくなるお話だが、最後の最後に一応の答えが見えた気もする。

水たまりに反射し、天地のひっくり返った家。降霊術が
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シュガーマン 奇跡に愛された男(2012年製作の映画)

3.7

ロドリゲスを聖人化し過ぎでは?と思うし、ドキュメンタリーとしてはイメージ映像が多く、生の迫力に乏しい。しかしながら、本当に凄い話だった。事前情報無しで見た方が良いので(Filmarksのレビュー、ヌル>>続きを読む

ドッグヴィル(2003年製作の映画)

3.4

・小説のダメな映画化のように、ナレーションが多く、ときおり心情描写すら語られる。普通の作品なら胸焼けするところだが、今作は全てが舞台上で、かつ最小限の小道具を使って描かれるため、視覚情報に乏しく、見る>>続きを読む

汚名(1946年製作の映画)

4.1

大変面白かった。未見の人にはなんのこっちゃという怪文書になっていると思うが、自分のメモとして。

あらすじ。アリシア(イングリッド・バーグマン)にナチス残党の内情を捜査させようと、FBIはセバスチャン
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美しき冒険旅行(1971年製作の映画)

3.8

レンタルで見たが、今後も折に触れて見直す作品になると感じてブルーレイを買った。

女子高生と弟が荒野に放り出され、一人前になるための放浪の儀式(Walkabout)をしているアボリジニの少年と旅するお
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ゲームの規則(1939年製作の映画)

4.3

空間を生かして人物を交錯させ、話を広げている。割と普通な貴族風刺のように思えるものの、映像でそれを語っている。楽しい。

冒頭の飛行機の勢いと人の渦、野原を走る動物を撃ち殺すシーンの生々しさが見事だが
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第七の封印(1956年製作の映画)

3.9

黙示録的な世界観で、光と影、演劇的なモチーフを通して人間の生や不安を描き出す。ベルイマンらしさが一通り入っている印象。

・ペストで死ぬ男、魔女狩りに遭った少女、不倫した男。いずれも、演劇性を強調する
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楢山節考(1983年製作の映画)

4.0

良い映画だった~。人間社会と自然=獣の世界、それを見つめる神という構造は「神々の深き欲望」と似ていると思うが、あちらと比べて生と死の根源にあるセックスをきちんと描いているのが良いし、後述するが海ではな>>続きを読む

さがす(2022年製作の映画)

2.8

このレビューはネタバレを含みます

良いところを汲み取るようにいつも心掛けていますが、この映画に関しては真面目に見る気が失せてしまいました。普段以上に見落としが多いと思いますので、事実誤認があればご指摘下さい。

・良かったところ。冒頭
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生きるべきか死ぬべきか(1942年製作の映画)

3.9

タランティーノが150分超かけたイングロリアスバスターズを100分足らずで語る超濃密脚本。ルビッチの省略が極まっており、一瞬でも油断すると振り落とされる。

ナチスの優生学に根拠なんてないし、その世界
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仁義なき戦い 代理戦争(1973年製作の映画)

3.7

戦争を経験してもなお、広島の地で繰り返される組織の横暴、不条理な若者の死。「戦後日本」の空疎な欺瞞を、暴力を通して炙り出す深作欣二の作家性。「この子の中身はどこに捨てられたんじゃろうか」。

何気なく
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コーダ あいのうた(2021年製作の映画)

3.7

このレビューはネタバレを含みます

BECK問題への誠実な回答

良作ですが、絶賛の中であれこれ考えてしまった、という感じです。

▽3種類の歌表現
BECK問題とは、映画の中で「素晴らしいとされる音楽」をどのように説得力を持って表現す
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リオ・ブラボー(1959年製作の映画)

4.1

ジョンウェイン何回ライフル持ち替えるねんと思ったが、途中でホークスの「往復」だと気付いてテンション上がった。

おっさん全開のウェインにヒロインが惚れる展開が納得できずややキモいと感じたのと、画面が狭
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欲望(1966年製作の映画)

4.4

おもろい!60年代スウィンギング・ロンドンを舞台にしたオシャレ不条理劇(邦題やポスターとは全然違う印象)。音楽にハービーハンコックとヤードバーズ=ジャズとロックを採用したことからも分かるように、「偶然>>続きを読む

クライ・マッチョ(2021年製作の映画)

3.8

イーストウッドが馬に乗ります。焚き火をします。銃を構えます。遺作はこないだ撮ったでしょおじいちゃんと思いつつ、黙って劇場に足を運ぶのがファンというものである。

知人の息子をメキシコからテキサスに運ぶ
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しとやかな獣(1962年製作の映画)

4.2

団地にどれだけ面白くカメラを置けるか選手権。洲崎パラダイスもそうだったが、日本の建物の特性を使って日本人を描いているのが良い。

・「雨漏りするバラック」から抜け出し、当時の先進性の象徴であった団地生
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赤線地帯(1956年製作の映画)

4.1

売春防止法が成立する瀬戸際、明日にも消える幻のような空間で女たちが繰り広げるドラマ。

・個々のエピソードが描かれる群像劇だけど、店の中では画面の奥行きを活用。引きの構図で、客も女も出入り業者も思い思
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赤い天使(1966年製作の映画)

3.8

今まで見てきた四肢切断シーンの中でも上位のエグさ。直接は見せないが、ゴリゴリ…と骨の硬さが分かる(部位によって音が変わる嫌すぎるこだわり)。バケツいっぱいに切断された手脚や血の描写は、モノクロを選んだ>>続きを読む

最高殊勲夫人(1959年製作の映画)

3.7

最後のバーのシーンとこの写真の素晴らしさで若干平均点が上がっている気はする

・ハイスピード、ハイテンションなラブコメ。押して押して押しまくる。人も物も動き続け、電話もひっきりなしに鳴る。情報量で麻痺
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曽根崎心中(1978年製作の映画)

3.9

梶芽衣子でもう一本。賛否分かれそうなオーバーな演技演出だけど、私は好きでした。フルスロットルの演技とスピーディな編集を眺めていたら、あっという間に終わってしまった。

セリフはひたすら説明的で全ての感
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女囚701号 さそり(1972年製作の映画)

3.7

・オープニング、東映の波ざばーんに重なる君が代からの日の丸のアップ。刑務所を日本に見立てた、体制への反抗心が込められた左翼映画なのは間違いない(立て篭もって食糧要求、繰り返される告発と内ゲバ)。

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サイダーのように言葉が湧き上がる(2020年製作の映画)

3.4

シティポップ的な絵柄で高校生のボーイミーツガールものをやるこの企画を、安直と捉えるか素直で良いと思うかは人次第だろうが、私にはラストのストレートさを始め、キラキラし過ぎて直視し難かったです。お話にもう>>続きを読む

アパートの鍵貸します(1960年製作の映画)

4.2

American Film Instituteの選んだ「アメリカ映画ベスト100(2007年版)」を、少しずつ見てきたのですが、これで100本終わりました。長かった。

定番ばかり並んでいるので、昔の
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チャップリンの黄金狂時代(1925年製作の映画)

3.8

短評。雪山なのにいつもの服装過ぎて笑う。前半の山小屋が特に良かった。

・お金や食事に向かう欲望は滑稽に、愛に対する飢えは悲痛に。冒頭、雪山で列を為す人が倒れるカット。劇中でも人がよく死ぬし、空腹のあ
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