新潟の映画野郎らりほうさんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

新潟の映画野郎らりほう

新潟の映画野郎らりほう

映画(934)
ドラマ(0)
アニメ(0)
  • List view
  • Grid view

九月の恋と出会うまで(2019年製作の映画)

2.7

【強迫性貞操観念神経症】


部屋に開いた穴から声がするが、物語上「穴」である必然性は乏しいわけだ。
にもかかわらず何故「穴」かとゆえば、それがセックスのメタファーに他ならないからであり、志織(の部屋
>>続きを読む

女王陛下のお気に入り(2018年製作の映画)

3.3

【籠の中の兎】


燃え盛る暖炉にアビゲイル(ストーン)が書簡を投げ込んだショットの後、キャメラは彼女の相貌を捉える。
涙を湛えたその瞳には 先程の焔が写り込んでおり、哀哭とも憤懣とも映る複雑な情感を
>>続きを読む

ROMA/ローマ(2018年製作の映画)

4.0

【寄せては返す波の様に】


右へ左へと繰り返されるパニングとクラヴィングショット。水の流れの如し緩やかなキャメラアイが心地良い。
全編を覆うmonochromeと フォーカスの深度を鑑みるに、後景に
>>続きを読む

サムライマラソン(2019年製作の映画)

2.0

【二国間頓珍漢伝達】


「a film by Bernard Rose」
「この物語は史実に基づいて創作された…」云々
「SAMURAI MARATHON 1855」

………

冒頭に提示される上
>>続きを読む

ファースト・マン(2018年製作の映画)

4.0

【生死境界線彷徨う夢遊病者】


米ソ軋轢なぞどうでもいい。歴史の大偉業や、公私狭間の葛藤もどうでもいい。それどころか抑この男は、人類の大いなる飛躍などこれっぽっちも思っちゃいない。
人物を最接写し、
>>続きを読む

鈴木家の嘘(2018年製作の映画)

4.0

【窓枠のビニール】


逸損した助手席窓部分に貼られた脆弱なビニール膜が、走行風を受け音立てて揺れている。
剥がれかけのそのビニールは「遠からず露見する其場凌ぎの嘘」の顕現でもあろう。

母(原日出子
>>続きを読む

えちてつ物語〜わたし、故郷に帰ってきました。〜(2018年製作の映画)

1.7

【並行せし二本の鉄製軌条】


旅客列車駆動の動力源として最も必要なのは電力でも資金でもなく〈人の想い〉である。
そして、列車を駅から駅へコネクトする事は〈人と人が繋がる〉こと。

列車が走れば-もう
>>続きを読む

恋は雨上がりのように(2018年製作の映画)

4.0

【Run for the Sun】


走行中の軽自動車内で橘(小松菜奈)に想いを告げられる近藤(大泉洋)。その刹那、大型車の前照灯が目前迄急迫する--歓喜の“光明”であると同時に“命取り”ともなる事
>>続きを読む

ウインド・リバー(2017年製作の映画)

3.7

【時遡る原初的邂逅】


扉を起点に物語が駆動する。

分け隔てられていた事件の端緒と終極は一枚の扉に依って接合され、ノックを契機に開け放たれる。
内と外が、偽りと真実が、部外者と当事者が、加害と被害
>>続きを読む

シェイプ・オブ・ウォーター(2017年製作の映画)

3.0

【mainstream~傍流から主流へ】


東西冷戦、マッカーシズム、公民権運動、パワハラ、セクハラ、人種/女性/身障差別 - それら[異]を怖れ力で排斥する事当然であった時代に、例えばポリティカル
>>続きを読む

ブロンコ・ビリー(1980年製作の映画)

5.0

【アメリカーナ~星条旗よ永遠なれ】


20世紀今現代に、自らを西部一の早撃ち/本物のカウボーイと信じ疑わぬ 猪突猛進/直情径行な男 - ブロンコビリー(イーストウッド)の夢追いを描いた 滑稽と悲哀が
>>続きを読む

ノッティングヒルの恋人(1999年製作の映画)

4.0

【愛の世界】


ムルナウ「サンライズ」の中で、道路の真ん中で男女が抱擁し合った事で 大渋滞を引き起こす場面がある。
その喧しいクラクションや怒鳴り声は本来大変に物騒で悍ましいものである筈なのに、その
>>続きを読む

アリー/ スター誕生(2018年製作の映画)

2.3

【Shallow】


一晩飲み明かした翌朝、アリー(レディーガガ)宅前で車両窓越しに彼女を見送るジャック(クーパー)の相貌を覆う表情視認困難な深い影がその後の二人を暗示する。

全編通じて頻出する“
>>続きを読む

風の谷のナウシカ(1984年製作の映画)

5.0

【醜愚塗り拡げた地上に射す唯一条の光】


腐海の奈落に転落した少女は 地の底で目覚めた後 再び地上へと浮上してゆく-。
『垂直構造に於けるナウシカの下降/上昇の運動』は、彼女が己の深淵に潜り 真理を
>>続きを読む

サニー/32(2018年製作の映画)

3.5

【サイバーカスケード】


反射式石油ストーブ、囲炉裏、バースデーケーキ上の蝋燭、ドラム缶の焚火 - それら画面上に立ち上る数々の焔の刻印。
静電気、スタンガン、そして稲光の“電子体質”等、そのストレ
>>続きを読む

イレブン・ミニッツ(2015年製作の映画)

4.7

【何故私は私なのか】


戯れ言を云う。

911、そして311。どちらもTV生中継で見た。
その叫喚に愕然とする一方で、今 私が見ているのは モニター上の無数の画素/ピクセルが 単にグラデーションを
>>続きを読む

アンダー・ザ・シルバーレイク(2018年製作の映画)

3.5

【詭激な原因帰属】


例えば人物への照射光が順光であれば[恩寵]であるとか、二人が背を向け合えば[対立]で、傾斜した画面は不安定で[邪]な印象であったりする。
それら私が常々行っている『自分なりに映
>>続きを読む

ベビーシッター・アドベンチャー(1987年製作の映画)

4.1

【Longest Night】


「親の計り知らぬ子供だけの一夜の大冒険」~ 週末 共に夜更かしして観たい一本。

場面転換、人物の出し入れ 共にそつが無くテンポは良好。
物語の端緒となる友人ブレン
>>続きを読む

清須会議(2013年製作の映画)

1.7

【痛画】


目を背けた - 大泉洋のキャラクター造形や中谷美紀の御寒い舞踏に - あまりに痛々しい。
大泉洋は羽柴秀吉を演じるのではなく、羽柴秀吉の演技をした「THE大泉洋」に終始する。その他演者も
>>続きを読む

アーティスト(2011年製作の映画)

1.5

【嗚呼稚拙】


階段上がる女と降りる男 - 場面の趣意は伝わるものの只其れ丈の印象。

趣意/主張や映画理論なぞ、ストーリーに溶かし込み意匠で魅せた上で、私達が大なり小なり汲み取るものであってそれが
>>続きを読む

ミュージアム(2016年製作の映画)

1.5

【アーティスト】


僅か数ショットの大森南朋が劇中の圧巻では、ずぶ濡れで困憊疲弊し続けた小栗旬も浮かばれまい。

危機焦燥を狙ったと憶しき喧しく捲し叫び続ける小栗は、結果緩急を欠いているが故に 皮肉
>>続きを読む

イニシエーション・ラブ(2015年製作の映画)

1.9

【イニシエーションムービー】


前半部の前田敦子は 後景が歪化する程に極大接写されるのに対し、後半 冷蔵庫前に立つ彼女と 隣室の松田翔太の揉事悶着では、両室を仕切る玉簾に視界を阻礙される事もあり 彼
>>続きを読む

ボヘミアン・ラプソディ(2018年製作の映画)

3.7

【パパ…】


フレディー(マレック)の相貌上に懸架したサングラスの漆黒が、彼の心象と 世間との遮絶を顕す。
会見場の不躾な記者達はその漆黒に鏡写=撥ね返され、彼の眼差しと視線が合う事は無い。
医師の
>>続きを読む

ういらぶ。(2018年製作の映画)

1.3

【ういらぶロック優羽】


「私は変わらなきゃいけない」そう優羽(桜井日奈子)が呟いた直後のカットで 彼女はバスの窓際に腰掛けている。当然その車窓に彼女の姿を鏡写させ〈自分自身を見つめる〉のかと思いき
>>続きを読む

暗黒女子(2017年製作の映画)

3.3

【鈍色ジーン】


自身のペルソナを剥ぎ取り 新たなパーソナリティーの表明と共に姿を消した清水富美加と、入れ代わりにヒロインの座に就く飯豊まりえ-。
上記は 富士テレビ系情報バラエティ『にびいろジーン
>>続きを読む

サウルの息子(2015年製作の映画)

4.5

【son of …、life is beautiful】


「ライフイズビューティフル(ベニーニ)」観賞時に思ったのは『現実を見せない事、見ない事〈無知〉こそ幸福』であり『希望とは自己を -真実を-
>>続きを読む

少女(2016年製作の映画)

3.7

【生死境界線上の綱渡り】


他を想いやるは -己を見つめる事。
他の傷を癒やすは -己の痛みに向き合う事。
そして他を救うは -己を救う事。


水没降下中に突き出される縋り藻掻く様な手。保健室で横
>>続きを読む

デス・ハント(1981年製作の映画)

3.5

【western elegy】


“1931年カナダ”-いまだ19世紀の面影残す山峡を舞台にした「失われし西部への哀歌」。

「時代は変わったんだ、未来を良く見ろ」-ハイランズ
「そんな未来なんか見
>>続きを読む

マトリックス(1999年製作の映画)

4.8

【solipsism】


ベルリンの壁崩壊とソヴィエト連邦解体で、東西冷戦は 西側民主/資本〈自由〉主義の勝利に依って一応の終わりを見た。

然し、本当に〈自由〉なのかと…。


東西冷戦下の西側の
>>続きを読む

エイリアン:コヴェナント(2017年製作の映画)

3.8

【ホモ・デウス】


登場人物がバカで感情移入出来ない。現実には有り得ない。整合性。御都合主義。突っ込みどころ。荒唐無稽-。
それら安易映画批判常套句を振りかざす向きは、そもそも映画が〈制作者の都合〉
>>続きを読む

悪女/AKUJO(2017年製作の映画)

4.0

【不死偽の國】


左右を壁面に遮られた長い狭小通路の閉塞性。一人称接写に依り歪んで映る後背景。展開/所作行動の非現実性は言わずもがな。アクションシーンのみならずドラマパートでも遠景は展望を欠き、隔絶
>>続きを読む

若おかみは小学生!(2018年製作の映画)

4.0

【self-esteem】


画面“中央”に背筋を伸ばし“屹立”する少女おっこが 前方(旅館春の屋側)へ“歩を進める”。
彼女の目線であろう春の屋の看板ショットが映り、幾許かの講話を挟んだ後、彼女は
>>続きを読む

カメラを止めるな!(2017年製作の映画)

2.8

【どこまで見ている】


どこまで見ている-。

物語か、主題か。俳優の所作行動や科白か。
構図や人物配置、画面に於ける人物占有率の寡多。モチーフ。配光、照明設計。そこから浮かぶ心象の顕現や隠喩・諷示
>>続きを読む

散り椿(2018年製作の映画)

3.2

【屹度また華開く】


麻生久美子の右手を包み込む様に支える岡田准一の“右手”は、彼女の頬を優しく撫で 肩を抱きしめる。

着座しその膝に乗せられた右手は、時に落ち着かぬ様に指先を戯れさせ、時に彼の表
>>続きを読む

クワイエット・プレイス(2018年製作の映画)

3.7

【Silent Majority】


主題論としては『強権に対し声上げる事許されぬ弱者達の苛み』であり、相撲協会、日大アメフト、日本ボクシング連から東京医科大等々 数々の「パワハラ」や「個を蔑ろにす
>>続きを読む

きょうのキラ君(2017年製作の映画)

3.3

【sparkle~アカルイミライ】


「アカルイミライ」-そう口にし廊下へと飛び出した少女達(飯豊と平)の前景には、彼女の前途を暗示する様に強い光芒が射し込んでいる。
それは、危殆回避と条件や打算最
>>続きを読む