岩嵜修平さんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

岩嵜修平

岩嵜修平

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異人たちとの夏(1988年製作の映画)

3.7

やっぱり最高。山田太一×大林宣彦という交わらなさそうな個性が、たまたま交わったが故のオリジナリティ。終盤の展開のインパクトが強くて珍作感があったけど、それ以外の風間杜夫×秋吉久美子×片岡鶴太郎による人>>続きを読む

ヤンヤン 夏の想い出(2000年製作の映画)

3.9

奇しくもエドワード・ヤン最後の長編となったが、最高傑作と言って良い見事な群像劇。自身を投影したようなヤンヤンの視点から見る大人たちには、キュアロン『ROMA』やスピルバーグ『フェイブルマンズ』を想起し>>続きを読む

ゴジラxコング 新たなる帝国(2024年製作の映画)

3.3

あまりに評判が悪いので、ハードルを下げ切って観たら、途中から呆れ笑いが止まらなかった。バカが考えたプロットを、真面目なスタッフが、なるべくモナークでのロジックが崩壊しないように調整したけど無理だった感>>続きを読む

走れない人の走り方(2023年製作の映画)

3.6

藝大院の修了制作とは思えないクオリティで、PFFでも感じた蘇鈺淳監督の確かな手腕を実感。しかも、他の監督はやらないような遊び心も垣間見られて、それは立派な作家性になっていきそう。主人公が、若き苦悩する>>続きを読む

悪は存在しない(2023年製作の映画)

4.1

圧巻。終始、映画を観る快楽に満ちている。長回しを多用し、何も起こっていないように見えるシーンの連続にも関わらず、驚かされ続ける。濱口竜介らしい、感情を込めない発話が繰り返されるのに心揺さぶられる。石橋>>続きを読む

異人たち(2023年製作の映画)

3.5

期待していたアンドリュー・ヘイの新作だったので、ピンと来なくてビックリ。『WEEKEND』も『aftersun』も『異人たちとの夏』も好きなので、組み合わせが今ひとつだったとしか…。原作踏襲とは言えあ>>続きを読む

霧の淵(2023年製作の映画)

3.8

予告編からの期待通り、良い!村瀬大智監督、これは、また日本から新たな映画の才能が出て来たと言って良い。現代日本における山深い田舎を舞台にした映画を観たのは久々。ファンタジーとしての『わたくしどもは。』>>続きを読む

ソウルフル・ワールド(2020年製作の映画)

3.9

改めて傑作。これは絶対に当時、劇場公開すべきだったな…。これから先、生きている間は何度でも見返したくなる、死後から考える人生の美しさを描いた寓話。生きる理由たる煌めき(スパーク)は、案外と身近にある。>>続きを読む

プリシラ(2023年製作の映画)

3.5

久々のソフィア・コッポラ作品で楽しみにしていたが、盛り上がらないまま終了。全体に職人監督に徹した印象。EPにも入っているプリシラ本人の意向が強かったのか、淡々と彼女がエルヴィスと会ってから別れるまでを>>続きを読む

アイアンクロー(2023年製作の映画)

3.9

こんなに嗚咽したのは久々。こんな話、泣くしかない。有害な男性性は健全な肉体にも精神にも宿る。そして、有害な男性性は人を死なせ得る。親のコンプレックスのために人生を狂わせられる兄弟。感情を押し殺してはい>>続きを読む

ブルックリンでオペラを(2023年製作の映画)

3.8

たまに、こういう思いも寄らない傑作に会えるから映画を観続けるのは止められない。予告編のイメージから全く異なる予想もつかない展開の連続。ラブコメとして笑いながら楽しめるけど、それだけに終わらない人物描写>>続きを読む

あの夏のルカ(2021年製作の映画)

3.6

【2回目:劇場(吹替版)】

本作もまた、原語で観ることに意味がある作品なので吹替だけは残念だけど、映画館で観て、大幅に評価は上がった。脚本の荒さやリアリティラインの欠如は、感動を損なうには十分なレベ
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美と殺戮のすべて(2022年製作の映画)

3.6

奇しくも、国立西洋美術館でのデモ直後に公開されることに意義を感じる映画。デモ自体についてはモヤっていた(スポンサー視点では損が無いと思った)自分が、その背景と先を見れていなかったと気づけた。何もしない>>続きを読む

ゴーストバスターズ/フローズン・サマー(2024年製作の映画)

3.3

これだけ面白くないハリウッド映画は久々。GBシリーズに思い入れもないのに、なんでまた観てしまったのか…。大好きなジェイソン・ライトマンが退き、前作の脚本だったギル・キーナンが監督。子ども向け映画にして>>続きを読む

オッペンハイマー(2023年製作の映画)

3.9

【2回目:DolbyCinema字幕】
IMAX以外でも映画としての魅力は全く損なわれなかったし、2回目を観てこそ作品として完成した感。初見では理解しきれなかった箇所もスッと入って来て、改めて編集の上
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ペナルティループ(2024年製作の映画)

3.6

『人数の町』が一部で好評だったとは言え、良く、こんな企画が日本映画で通ったなと。木下グループ、懐がデカい。面白くはないループシーンの連続の先で、待っているのは徒労感。でも、映画でしか、この感覚は表現し>>続きを読む

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章(2024年製作の映画)

3.7

原作好きなので、アニメ化する意義が疑問だったけど、あったわ意義。あの宇宙人に声(言葉)を与えること。彼らだけでなく、すべての登場人物に血を通わせることに意義があるし、梅林太郎の音楽も良かった。脚本は流>>続きを読む

ピアノ・レッスン 4Kデジタルリマスター(1993年製作の映画)

3.6

恥ずかしながら初見。トラウマ映画と聴いていたので構えていたが、そっちのトラウマか…。男性の欲のために娶られた女性が、逆に自らの欲に男性を利用する展開は興味深かったが、最後はそれで良いのかと思ってしまっ>>続きを読む

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)

3.6

【2回目】
アカデミー賞候補で、高評価な作品がピンと来ない訳がない…!と思って2回目を大好きなル・シネマで観たけど、やはりピンと来ず…。中年おじさん号泣映画と聴いていたけど、初見も2回目も、鑑賞後に鼻
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四月になれば彼女は(2024年製作の映画)

3.8

よくある日本の恋愛映画とは一線を画す「恋」と「愛」を模索する映画。川村元気の原作からそうなのだろうが、セリフの張り巡らし方が凄い。恋愛ものに興味がない人間でも興味深い人生そのものの思索がそこかしこに。>>続きを読む

ビニールハウス(2022年製作の映画)

3.7

長編初監督にして恐ろしくシビア。なるほど、イ・チャンドン×アリ・アスターな、現実的で救いのない絶望的展開の連続。『パラサイト』より残酷な世界のリアルを観客にとって身近な視点で映している。28歳にして、>>続きを読む

FLY!/フライ!(2023年製作の映画)

3.8

面白い!字幕版の回数少ない(都心だとTOHO日比谷くらい)けど、字幕(原語)で観るべきアニメ。だって、原題「Migration(渡り≒移住)」よ。ちゃんと演じる声優の背景にも意味を持たせている。フラン>>続きを読む

GIFT(2023年製作の映画)

3.8

『GIFT』上映+石橋英子ライブ・パフォーマンス
複製芸術たる映画を再現不可能な形で上映する試み。今までに世界で7回しか行われていない中での8回目。無声映画の活弁士ともまた違う、映像と字幕で設定と人物
>>続きを読む

海がきこえる(1993年製作の映画)

3.5

ジブリ好きながら未見だった本作。改めて宮崎駿や高畑勲、近藤喜文ら他のジブリ監督たちの演出と脚本の上手さを実感。説明的で、主人公たちのキャラ描写も定まっていない。観ていて恥ずかしくなる展開の連続なのは1>>続きを読む

12日の殺人(2022年製作の映画)

3.7

面白いのだが、実話を元にしている分、判断が難しい。冒頭に殺人シーンが描かれるが、実際にそれが行われたかの記録は無く、被害者が直前に自撮りした動画だけ。登場する男は警察(theホモソ)側も含めて偏った思>>続きを読む

NN4444(2024年製作の映画)

3.6

予想以上にしっかり「映画」だったので、映画館で観て良かったし、下北沢K2以外もかけると良いと思う(ほぼ全回満席の人気だし)。トークで名前が挙がったように、黒沢清以降と思える作品が多かったが、広告畑のス>>続きを読む

青春ジャック止められるか、俺たちを2(2024年製作の映画)

3.5

映画愛と映画館愛にはグッと来る面もあるが、前作につづき、映画としては評価が難しい。脚本も演出も良いとは思えない。恐らく低予算で、これだけのキャスト稼働ができるという事実だけで価値はあると思うが、面白い>>続きを読む

関心領域(2023年製作の映画)

3.7

これは何も知らずに観るのが正解なのでは。SNSで戦争の悲劇が流され続ける現代において、誰も他人事にできない、とある家族を映した映画。登場人物の誰にも感情移入させない、内面をほとんど描かない客観的なカッ>>続きを読む

リトル・リチャード:アイ・アム・エヴリシング(2023年製作の映画)

3.8

ビートルズもストーンズもマイケルもプリンスも、現代のポップミュージシャンのほとんどが彼の影響下にあるにも関わらず、日本で音楽ファン以外には認知度が低い「ロックンロールの創造主」は、ゲイでクイアの黒人だ>>続きを読む

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)

3.8

【DolbyCinema字幕】
改めて結論、#デューン はIMAXレーザーGT一択。海外ミュージシャンや海外カンパニーの公演で1万円くらいは掛かるので、池袋まで遠征の交通費を含めても安いくらいかも。フ
>>続きを読む

すべての夜を思いだす(2022年製作の映画)

3.9

<2回目>
2度目の鑑賞。やはり、バス・ドゥヴォスと通じるものを感じる、たまたま選ばれた、特別でない3人の1日。撮ることを選んだ以上は、彼女たちが、たまたま出会った人たちも、その背景を含めて慈愛を込め
>>続きを読む

パレード(2024年製作の映画)

3.4

少なからぬ人が言及してるけど、ベースは是枝裕和「ワンダフルライフ』よね。ただ、今、是枝さんがこういう題材で撮ったとして、震災やら学生運動やら色々と引用したかというと、そうでもないと思うんで、やはり藤井>>続きを読む

ARGYLLE/アーガイル(2024年製作の映画)

3.7

マシュー・ヴォーン愛を試される作品だと思うけどファンとしては大好き!これだけ、ただ楽しめるアクション映画は久々。中年のイケてない女男コンビが主役(人種云々は関係ない)なのも良いし、二転三転するストーリ>>続きを読む

せかいのおきく(2023年製作の映画)

3.4

今の時代に、時代劇をちゃんとやるだけで凄いし、映像はキレイだけど、あれだけ映画賞に選ばれる作品かは分からなかった。SDGsへの目配せとしても、現代に、肥溜めとか襤褸とか無理では。ベテラン監督が、ちょっ>>続きを読む

ポライト・ソサエティ(2023年製作の映画)

3.5

「パキスタン系ムスリムの少女たちの思春期の葛藤や家父長制、性差別的な抑圧など、女性たちのさまざまな闘いを描き出す」というあらすじだけど、全編ふざけててアクション満載、終盤の展開は『ピースメーカー』ぽさ>>続きを読む

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)

3.6

大いに笑えてグサッと来るけど、これまた #Oscar ぽくないような。読者が試される時代。匿名作家が増えている中で有りそうな話。これ、同じことを映画でやってくれれば(監督のキャリアとか騙してくれれば)>>続きを読む