元空手部

生きる LIVINGの元空手部のレビュー・感想・評価

生きる LIVING(2022年製作の映画)
3.8
黒澤明の「生きる」はおそらくトルストイの「イワンイリイチの死」を下書きにしている。
「イワンイリイチの死」はキリスト教者であったトルストイの思想が強い作品であったわけだが、黒澤版でも啓示に近い場面(言わずともわかるでしょう)が挿入されていた。
対して本作ではそう言った決定的な契機が省略されている。純然たる死を待つ人のドラマになっていた。

オリジナルにはなかった通勤の汽車のモチーフが、ブランコの存在に新たな意義を見出している。
汽車は終点に到達するまで一直線に動く。目的地に辿り着くと再び終点へと折り返す。
ブランコの振り子運動も行ったり来たりを繰り返すという意味で同じモチーフとしての効用があるわけだが、ブランコは感覚の短さゆえに縦軸に近づいている。垂直へ近づいていく動きは死の感覚に近いものであり、それでもなお死には届かない痕跡となっていた。

鏡のフレーミングについても幾らか散見された。
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    斜め上の視点からこじつけがちな映画レビューがモットーです。そんなもんでとっつきづらい感じのレビューですが、気軽にコメントで絡んでください。そういったやりとり憧れています。 ・星4以上は個人的なオス…

    斜め上の視点からこじつけがちな映画レビューがモットーです。そんなもんでとっつきづらい感じのレビューですが、気軽にコメントで絡んでください。そういったやりとり憧れています。 ・星4以上は個人的なオススメ ・レビュースタンスや採点に統一性はない ・ワグネリアンなんで、作品にワーグナー的側面があったら評価高め