僕は、あなたを十六年四ヶ月、思い続けてきた・・・ 萩原朔太郎を師と仰ぐ三好達治は、朔太郎の美貌の末妹・慶子と結ばれることを望むが、貧乏書生と侮られ拒絶される。しかし十数年後、慶子が夫と死別すると、三好は妻子と離縁して慶子と結婚。時は太平洋戦争の真っ只中、身を隠すように越前三国にひっそりと新居を構えた二人には、雪深い冬の過酷な生活が待ち受けていた。三好は純粋な文学的志向と潔癖な人生観の持ち主であり、奔放な慶子に対する一途な愛と憎しみが、いつしか激情とともに制御できなくなってゆく・・・。 「天上の花」とは、仏教用語で曼珠沙華、彼岸花の別名。燃えるような赤い花は情熱の象徴である一方、有毒性をもつ。これを食した後は「彼岸」つまり「死」しかないという説もある。
京都。まだ芽の出ない女優、長谷川泰子は、まだ学生だった中原中也と出逢った。20 歳の泰子と 17 歳の中也。 どこか虚勢を張るふたりは、互いに惹かれ、一緒に暮らしはじめる。価値観は違う。け…
>>続きを読む桂一雄には、先妻の子をはじめ、日本脳炎で言葉と手足が麻痺したままの次郎を含め5人の子供と妻ヨリ子との家庭があった。妻は次郎のことで、怪しい宗教にすがるようになっていた。昭和31年夏、一雄は…
>>続きを読む宮沢賢治の父・宮沢政次郎。父の代から富裕な質屋であり、長男である賢治は、本来なら家を継ぐ立場だが、賢治は適当な理由をつけてはそれを拒む。学校卒業後は、農業や人造宝石、宗教と我が道を行く賢治…
>>続きを読む永井荷風は妻も取らず女道楽を続けていたが、58歳を迎え、色欲の衰えとともに創作意欲が減衰していくのを感じていた。そんななか、荷風はお雪という娼婦に出会い足しげく通うように。創作意欲を取り戻…
>>続きを読むあるハイミスの銀行員がふとしたきっかけから性の歓びを知った時、彼女の生活は一変した。ギャンブル好きの情夫に、銀行の公金を横領してつぎこんだ額がいっしか億単位になり、狂った女の哀しい性と罪の…
>>続きを読む昭和初期、林ふみ子は行商をしながら、母親と駄菓子屋の二階で暮らしている。八歳の時から育てられた父親に金を無心されるふみ子に、隣室に住む印刷工・安岡は同情するが、初恋の人を忘れられないふみ子…
>>続きを読む高校教師の原美鈴(奈緒)は、教卓の高みから生徒達を見下ろし観察することで、密かに自尊心を満たしながら、女であることの不平等さから目を背けていた。ある日、美鈴は親友の渕野美奈子(三吉彩花)か…
>>続きを読む©2022「天上の花」製作運動体