大雨の中、大きな波に乗る1人の男ジョニー・ユタ（キアヌ・リーブス）の姿。ハーヴァード大学出のエリートはFBIによる実地テストを満点でクリアし、見事カリフォルニアのFBIに配属される。上司のハーブ（ジョン・Ｃ・マッギンレー）に嫌味を言われながら、彼とコンビを組むことになったのは、銀行強盗の捜査を22年勤めるアンジェロ・パパス（ゲーリー・ビジー）だった。目隠ししてレンガを2つ取るという馬鹿馬鹿しい練習。パパスはジョニーに1本のビデオを見せる。レーガンやニクソンの覆面を被った4人組の銀行強盗は鮮やかな手口で銀行を襲い、僅か90秒間のうちに逃げ去ってしまう。そして一味の1人が防犯カメラにお尻を出して挑発するのが慣例だった。一味らしき4人組が犯した銀行強盗は3年間に27件、だが足取りが全く掴めずにパパスは手を拱いていた。挑発した尻に残る僅かな日焼け跡から彼らがサーファーであると掴んだジョニーは、おとりとしてサーファーたちの間に潜入する。かつて花形のフットボールのエース9番としてならしたユタではあったが、サーフィンは不得手で、海辺であった美人サーファー、タイラー（ロリ・ペティ）にサーフィンのいろはを教わることになる。サーファーの生活に慣れたユタは、サーファーたちから一目置かれているボディ（パトリック・スウェイジ）という男と出会う。タイラーに現代野蛮人と称されたボディとジョニーは相反する関係ながら互いに友情を深めていく。

　おとり捜査としてサーフィンにのめり込んだジョニーと、自由を愛する無法者との関係性は前作『ブルースチール』同様に相反する2人を狂気で繋ぐ。57年型のシボレーを抱えたジョニーの姿に、ボーディは最初から魅了されており、タイラーにお前の新しい男なんだなとほくそ笑む。波を感じて、そのエネルギーと一体となることの尊さをジョニーに切々と語るボーディの様子は、前作『ブルースチール』のユージン・ハント（ロン・シルヴァー）とは対照的に、物質主義とは無縁の新世代の若者として描写される。ミートボール・サンド3つとレモネードを頼んだその真裏で4人組の決定的瞬間を目撃してしまったジョニーの焦燥感。いつもならすぐに逃げるはずのボーディが常軌を逸したガソリンスタンドで焼き尽くした小豆色の車、着地に失敗したジョニーが半身で構えた銃口のミス、そしてスカイダイビング上空1000m以下でまだ引かない背中のパラシュート。男たちは互いに危険を感じながら、目の前に現れた宿敵との攻防の恍惚に打ち震える。母なる海に身を任せる男たちの攻防は、FBIだと言う真実を告げられなかった最愛のヒロインを巻き込み、クライマックスへと至る。60年代のヒッピーたちの精神を受け継いだ「ジェネレーションX」たちの悪行は一つのミスから徐々に歯車が狂い始める。サーフィン〜籠城〜カー・チェイス〜スカイ・ダイビングと作劇をしっかり描き切るキャスリン・ビグローの手腕は男性顔負けであり、芝刈り機や非番の警官といった小技も効いている。半世紀に一度の奇跡のような波に呑まれたヒールの姿は単なる悪役に留まらず、ある種の崇高さとジョニーとの永遠の友情を讃えている。

FBI捜査官と銀行強盗犯の攻防という王道ストーリーにサーフィンという異色のエッセンスが加えられているが、クライムアクションと人間ドラマの両立がいい感じに成り立っていた。爽やかな新米捜査官のキアヌ・リーブスと見た目も性格もワイルドさ溢れるパトリック・スウェイジの関係性の描き方、コンビのベテラン刑事も良い味を出していた。

製作『ターミネーター』『タイタニック』『アバター』のジェームズキャメロン
監督『ハート・ロッカー』『ゼロ・ダーク・サーティ』のキャスリン・ビグロー

実際に二年間程、婚姻関係にあった二人がタッグを組んで制作された本作は、最近でも『X-ミッション』でリメイクされたり、『ワイルド・スピード』などにも影響を与えていると感じさせる作り。「キアヌ・リーブス」はもちろん、劇中では精神力と体力の強さからサーファーの間で、カリスマ的存在の役を演じた「パトリック・スウェッジ」が素晴らしい！
『ゴースト・ニューヨークの幻』が有名な作品なのだが、残念ながら57歳と若くして病気で亡くなられてなければ、再びキアヌと組んでの続編を計画されていただけに残念でならない。サーフィン・スカイダイビング・銀行強盗など、当時としては

「斬新な設定」
「おしゃれ」
「個性的」

な本作は業界人に評価されているからこそ、影響を感じさせる作品が多いのだろう。

• #レンタルであと一本が決まらない時におすすめ！