TAMA NEW WAVE一般審査員にて鑑賞🌟
わずか20歳の現役大学生監督・金子優太が監督・脚本・主演を務めた作品。
幼いころから映画作りに興味があり、大学で映画サークルに入部し、独学で学んだ映画製作や脚本術にて本作を製作。
第44回ぴあフィルムフェスティバルにて映画ファン賞を受賞しています✨

血縁へのどうしようもない嫌悪と、それでも血縁に何かを期待してしまう淡い期待。
和製アリ・アスター作品のような雰囲気を感じた。
自身の体験を半自伝的に映像化したと本人が暴露していて、それなのにこれでもかと人の汚いところに真正面から向き合っていて、その潔さがいっそ清々しい。
この屈折した家族観はなんなんだろうと激しく不安になり、そして同時にこの監督と1対1で話せたら、どんなに楽しいだろう…と想像してしまった。
それくらい映画の中のシーンで聴きたいことがてんこ盛り。
副音声解説付きの円盤とか出たら、絶対に買ってしまうやつだ、これ。


【ストーリー】

兄の雅信からの家庭内暴力に耐える高校生の悠晟は、人間の性格を決定するのは遺伝だと考え、家族に流れる血液を嫌悪する。そして自分自身もいつかは雅信のような人間になってしまうという運命に悩む。ある日、塾で出会った男子生徒の水瀬と仲良くなるが、彼の容姿や生活に憧れを抱くあまり、次第に異常な行動を繰り返すようになる。


【監督からのメッセージ】

このような素晴らしい映画祭で上映の機会をいただき、誠に光栄に思います。本作は半自伝的作品として製作しましたが、実際に起こった出来事に忠実に描くのではなく、あくまでエンタメ性と分かりやすさを追求して脚本を書きました。ご覧になる観客の皆さまに強烈な刺激と、そして何か新しいものを提供できればと願っています。

• #みりぺでぃあ2022
• #みりおの多摩映画祭

瀉血 [86分／監督：金子優太]

TAMA NEW WAVE コンペティション作品

グランプリは逃したが、個人的にはこれが今年の一番！

冒頭のタイトル「瀉血(しゃけつ)」や「悪い血」の説明。何か禍々しいものを予感させるオープニングだ。

モノクロの世界で描かれる、兄による暴力と母による支配は緊張感が増す。

それと対比される友人への憧れと２人の会話が生き生きと描かれ希望にも見えるのだが…

終盤に至るまでの印象的な台詞が全て布石になっているのが恐ろしいし秀逸。

「俺に現実をコントロールする能力はない。でもフィクションなら。フィクションを書く。それが家族にできる唯一の復讐だ。」

緊張感増す終盤に、突然第四の壁を破ってスクリーンのこちら側に語りかけてくる演出も効果的。

フィクションだと思っていた劇中の主人公が、その劇中の世界への復讐を「映画」にする。見たことのない入れ子状態は大いに興味深い。

ただ、肝心の第4章「向こう側へ」が難解。何度も見て大筋は理解できた気でいるが、瀉血をどう使って入れ替わるのか、もう少しわかりやすく提示してくれないと、たぶん一度見ただけでは何だかわからずに終わってしまう人もいるんじゃないかな？

脚本、編集をブラッシュアップすれば、すごい作品になると思うが、この荒削り感が生み出した緊張感も捨てがたい。

実は予備校の帰り道に2人でしゃべりながら帰るシーンがとても好きだった。

U-NEXTで配信開始。

すっげぇー。久々に映画でこんなにイライラさせられた(良い意味で)。暴力的な兄。過保護な母。なんかみんな厭なやつ。そのうえ主人公の行動心理もあんま理解できなくてもう苦しい苦しい。

機能不全家族の描写も妙にリアルで、自分の家庭と重なったりして、精神的にしんどい部分もあったけど、描いてることは意外と普遍的(?)なのが救いだった。

『瀉血』というタイトルも秀逸で、物語が進むにつれて冒頭の説明文が主人公の滑稽さを浮き彫りにさせる。普通にこの漢字読めないし、初めて見たし、どういう経緯でこの言葉に出会ったのか分からないけど、よくもまぁこんなピッタリのタイトルを付けたな〜って関心すらしてしまった。

あと素人から見ても撮影にめちゃくちゃ力入ってるのが分かったし、モノクロなのも相まってなんだかんだ最後まで惹き付けられた。

まぁ会話のラリーが若干早かったり、場面展開おいて多少粗いと感じる部分はあったけど、この不安定な物語の中ではそれすらも味方につけているようでとても良かったです。