フィルメックスコンペティション、中華圏からニューヨークにやってきた移民の受難劇です。
完全に現代の『自転車泥棒』で、確かにUberなど、配達の需要が伸びるこの職業が歴史を繰り返した感があります。
同じニューヨークのアジア人の移民を描いた『ディアストレンジャー』と比べると、現実的でリアリズムの中で展開していきます。
エンドロールを観ると、アメリカの大物がプロデューサーにも関わっており、寒風吹きすさむ冬のニューヨークんｌ姿をテーマにも入れ込んでいきますね。

• #東京フィルメックス2025

東京フィルメックス2025にて。

ショーン•ベイカー「テイクアウト」（とはいえ、配達シーンは少ない）＋デ・シーカ「自転車泥棒」だわ。手持ちカメラでドキュメンタリータッチのシーンもあれば、劇伴を入れて「これは物語だよ」と見せているところもある。また緊張感ある中での娘のチェキ音が効いている。

チャン•チェン演じるお父さんは崖っぷちなのにカッコいいという…。娘にちょっといいセリフを言わせているあたりが多少気になるけれど、ラストシーンの構図も含めて好き。

踏んだり蹴ったりだったけど、家族もいるし、何とかなるのかなとも思う。

【それでも僕は娘にウソをつく】
動画レビュー▽
https://www.youtube.com/watch?v=pVdjGrtXzlM

第26回東京フィルメックスにて『ラッキー・ルー』を観た。本作は最近、国際映画祭市場で頻出のテーマとなっている《追い込まれるギグワーカー》ものである。この題材は不幸陳列罪を犯しがちになる一方で、時間で管理される逼迫感と映画との相性はよく『L'histoire de Souleymane』は昨年のカンヌ国際映画祭で審査員賞と俳優賞を受賞していたりする。『ラッキー・ルー』も確かに不幸陳列罪映画だし、竜頭蛇尾ではあるものの、サフディ兄弟作品のようなテクニカルな編集と修羅場のつるべ打ちに魅了された。

主人公のルーは、一足早くNYにやってきてようやく我が家を手にする。彼は自転車一本で配達員の仕事をしている。妻子もようやくNY入りする段階で不幸が次々と彼に襲い掛かる。自転車は奪われ、仲介役に支払った金は家主に渡っておらず家から出ていけと言われる。ライフラインのスマホも取られ、ローンも組めなくなってしまう。そんな中、妻子がやってくるのだが、ようやくたどり着いた矢先に真実を伝えることができないルーは心配されながらも何事もないかのように振る舞う。でも、金策が上手くいかなければ家族は路頭に迷う。金策の旅に出ようとすると、娘にせがまれ一緒に街を駆け巡ることとなる。

前半は、ルーひとりに不幸が押し寄せる流れとなっている。社会システムにより確実に窮地へと追い込まれる様と編集による追い込みがシンクロし、恐ろしい程にひとつずつ重要なアイテムを失っていく。ただ、実際問題、人はそう簡単に死に場所を選べず、HP1の状態で街を彷徨うこととなるのだ。

首の皮ひとつつながった状態で家族を受け入れることとなるのだが、娘が恐ろしい程にすべてを見透かしている。

「パパじゃないみたい」
「仕事休んで遊んでくれないの」
「本当にだいじょうぶなの」

とナイフのようにルーを突きさしてくる。明らかにバレているのだが、それでも娘をガッカリさせないように嘘をつきながら綱渡りで金策をしていくのである。

この地獄のようなオデュッセイア、サディスティックな程に容赦なく、死の一歩手前で殺さない作りに感銘を受けた。

• #第26回東京フィルメックス