演出、出来事の気持ち良い連鎖によって強引にハッピーエンドに連れていかれる映画。この時期のルビッチはこういう映画いくらでも作れたんだろうなと思う。同じ時期のこの監督の映画を見ていれば見る必要はないような感じもするけど、ただただ見ていて気持ちいい。

ロミオとジュリエットの設定を借りて、舞台を田舎の雪国(『白黒姉妹』と同じロケーション？)に移し、後半に起こる悲劇をねじ曲げた映画。

対立する二つの家があり、些細なきっかけで喧嘩を始めたり雪を投げ合ったりしている中で、ジュリエットは親の決めた相手と結婚しなくてはならなくなる。相手の家にロミオが数年ぶりに帰ってきて2人が恋に落ちる。それが叶わないならと2人は家に自殺することを伝えた手紙を起き、薬屋に毒を貰いにいく。薬屋が渡したのは毒の瓶に入った砂糖水で、2人でそれを飲むけど、砂糖水だから時間が経っても全然死なないしおいしいからいっぱい飲んでしまう。手紙を見つけた2家の人々がその2人の元に駆けつけきたために2人は死んだふりをする。2人が死んだと思って2家は和解し、そこに死んでなかった2人が起き上がってきて終わる。

ロミオとジュリエットの悲劇が個人の選択の結果というよりも家同士の対立、当時の婚姻の慣習などの構造によって半ば必然的に起こるものだとすれば、田舎に舞台を移し全員がある程度コメディ的な判断力のなさに落とされたことで、その構造が変わり必然的にハッピーエンドに落ち着く形になったようにも思う。ご都合主義的な物語のねじ曲げはしていないというか、全て荒唐無稽なようで必然的な展開に思えてしまう。

3人連続で滑ってこけて、4人目は滑った状態でフレームに入ってくるところとか、一瞬のクライマックスである2人が起き上がるのを見た全員がひっくり返るシーンなど、他の作品と変わらず気持ちよい演出が続く。この監督特有の謎の縦画面もある。結婚のシーンでゆらゆら揺れてる着ぐるみの人たちとか、連鎖の中にあるリズムを作るためのショットですら良い。ただただ何も知らず幸せそうに飯食ってる親の決めた相手の男で終わるのもおしゃれ。

『牡蠣の王女』を見てから見ると、ロミオとジュリエットの時代と比べて主体的な思考を必要とされなくなっている、だからこそ幸福で悲劇は成立しないと言っているようにも思える。プロローグの基準も判断も存在しない適当な裁判はその象徴のように感じる。ルビッチタッチって大衆に対する皮肉のようなものだったのでは。

染色で雪が真っ黄色すぎて目がおかしくなるほど眩しかった

喜劇 ロミオとジュリエット