『アトランティスのこころ』
原題 Hearts in Atlantis.
製作年 2001年。上映時間 101分。
自分のことしか頭にない母と二人で暮らす11歳の少年が、不思議な力を持つ老人と出会い、人生という現実の感動と悲しみを体験する奇跡の物語。原作はスティーブン・キング。　
監督はスコット・ヒックス。
脚本はウィリアム・ゴールドマン。
出演はアンソニー・ホプキンス、アントン・イェルチン、ミカ・ブーレムほか。

写真家ボビーのもとに幼なじみの訃報が届く。
生まれ故郷に戻ったボビーはそこで、過去の出来事を思い起こす。
それは1960年の夏。
11歳のボビーは友だちのキャロルとサリーの3人で楽しい毎日を過ごしていた。
そんなある日、彼と母親が二人で住む家の二階に新しい下宿人テッドがやって来た。
知的で物静かなその老人にはある不思議な力があった。
父を早くになくしたボビーは、そんなテッドに特別な親しみを感じていく。
しかし、テッドはその不思議な力のために謎の男たちから狙われていた。そして、男たちはすぐそこまで迫っていた。。。

日本でも多大な支持を集めており、『広辞苑』にも今作品の原作者スティーヴン・キングの項がある。
日常の中に潜む『ちょっとした不思議』を題材にした作品も目立つ。
『キャリー』（1974年）で作家デビューし『ホラーの帝王』とも呼ばれてる。
しかし、スティーヴン・キングはホラージャンルだけではない。
例えば、『ショーシャンクの空に（原作：『刑務所のリタ・ヘイワース』）』『スタンド・バイ・ミー（原作:『The Body』）』や『グリーンマイル』など、映画化された話題作でも有名かな。
ヒャッとはする中にも温かく感動的な気持ちにさせる作品も沢山ある。
謂わば、前者のホラーを、黒スティーヴン・キング、後者を白スティーヴン・キングと云うとか云わないとか。(勝手に云ってます)
日本でも二足のわらじ(ジャンル)で書く作家って云えば、『麻雀放浪記』(漫画『哲也-雀聖と呼ばれた男』の元ネタで坊や哲は原作者がモデル)の原作者 阿佐田哲也。
彼は色川武大って、別のペンネームで純文学を書いてる。
あと、ノワール小説を書く一方で対極的に静謐な純愛小説も書く新堂冬樹がいる。
あと、パッと思い付くのは東野圭吾や宮部みゆき等々かな。
各々、何か玄人跣の趣味があるのは共通点かな。
兎に角、悪を知ってるから善の見る目があるのか、人を怖がらせるが、逆に大きな感動を呼び寄せる。
スティーブン・キング原作の映画には、スティーブン・キング原作ちゅうだけで大きな利点がある。
スティーブン・キングはフィクションの天才であり、たとえ彼の作品の映画化がうまくいかなかったとしても、フレームの下に潜む素晴らしい青写真を見ることができる。
しかし、映画化が成功すれば、彼が紡いだ物語を土台に、他のすべての要素を支える、視覚的に刺激的なプロジェクトを手に入れることができる。今作品は、彼のアンソロジー作品
『Low Men In Yellow Coats'.』ってタイトルに基づくモンやけど、実は5つの物語
順に
『Low Men In Yellow Coats`』
『Hearts in Atlantis』
『Blind Willie』
『Why We're in Vietnam』
『Heavenly Shades of Night Are Falling』で、異なる時代、異なる登場人物に渡って収録されている。　
スコット・ヒックス監督は、脚本家のウィリアム・ゴールドマンが、その範囲と焦点を絞るために、素材にかなりの自由を与えたと述べている。ボビーが登場するのは最初と最後の2話だけやけど、物語は40年も時間が離れているので、ゴールドマンは最初の話をフラッシュバックとして使い、最後の話の2つの部分の間に挟み、他の3つの話は捨てたという。
監督が『Hearts In Atlantis』を選んだ理由は、彼が目指していた幽玄で感傷的なトーンにずっと近く、不吉なフックも少ないからだと思う。
今作品はスティーヴン・キングとしては少し薄っぺらい筋書きに見えるかもしれないが、それには理由がある。
この物語は、キングの大作『ダークタワー』の中の小さな断片やからだ。
テッドとボビーはその物語の中で重要な役割を担っており、その中でこの映画の出来事はほんの一文に過ぎない。
謂わば、スピンオフ。
しかし、今作品の製作者たちは、この物語を独自のものにする方法を見出し、異世界の陰謀のささやきと融合した感動的な青春物語を作り上げている。
ボビーとテッドに迫る漠然とした脅威と魅惑的なノスタルジーが融合し、スリラーとは少し違う、ジャンルにとらわれないユニークなトーンに仕上がってました。
ホプキンスは役柄によって恐ろしくもあり、優しくもある。
今作品では、テレキネシスの力さえ超えて、優秀な人物にのみ許される世界的な直感を持つ男を、優しさの化身として演じている。
数年後、『スパイダー』(2001年)で再び共演することになるアントン・イェルチンとミカ・ブーレムは今作品の素晴らしい核となる存在でした。イェルチンは、強い信念を持った作品を次々と発表しており、彼の演技の質の高さは、この素晴らしい原点となる役柄にまで遡ることができる。ブーレムは最近あまり使われていませんが(最近のやと『ザ・ウォード/監禁病棟』くらいかな見かけたの)、今作品で感情的に照らし出す彼女の姿を見れば、なぜ彼女がもっと活躍しないんか不思議。
トム・バウワー、セリア・ウェストン、アラン・テュディック、そして過ぎ去った日々を懐かしむ年老いたボビーを演じるデヴィッド・モースも素晴らしい脇役を演じています。
キングのお気に入りのトピックや設定は、中西部の思春期、アメリカ大陸の特異な地域、そして常に存在する超自然的な側面であり、今作品はそのダイナミクスをふんだんに与えてくれる善き作品でした。

何に焦点を当てたいのか、何を語りたいのかが全く不明瞭。全てが中途半端なので、煮え切らない気分で観終えることになる。

とにかく母親の愚かさにはため息しか出ないし、父親の位置付け、テッドの超能力者としての危うさも放ったらかし。

古き良きアメリカの時代背景でなんとか雰囲気を保っているだけの映画。

スティーヴン・キング原作。
色々調べていると原作は「ダーク・タワー」とも関連しているとか。

結論から言うと、物凄く好き！！
スティーヴン・キングらしいホラー・テイストはないが、少年時代のノスタルジーと、特殊能力を持つ老人という異質な物語が見事に融合しており、その独特の雰囲気が堪らない。

親友サリーの訃報を知らされ、ボビー・ガーフィールド（成人期:デヴィッド・ムース、少年期:アントン・イェルチン）は少年時代を回想する。1960年の夏。2階に越してきたテッド・プローディガン（アンソニー・ホプキンス）という風変わりな老人との交流。ボビーは、テッドに不思議な力がある事を知る。

最近見掛けなくなった名脇役のデヴィッド・モース！！
そして、今は亡きアントン・イェルチンやんかー！！
加えてアンソニー・ホプキンスときたら、キャスティングだけでご飯3杯はいける。

ボビーの幼馴染である少年サリーと少女キャロルの仲良し3人組のキラキラした毎日は「スタンド・バイ・ミー」風味。

タイトルの「アトランティス」とは、二度と戻らない少年時代を「幻の国」に見立てた喩え。そして、テッドと心を通わせたひと夏の儚い思い出も内包している。

ボビーは母親と2人で暮らしているが、この母親がまぁ最悪。テッドへの嫌悪感を露わにし、職場の男性との性的な関係を匂わせ、お金が無い無いという割に、自分はドレスを買い漁って一人鏡の前でファッションショー。因みに何処かで見たと思ったら、MCUシリーズで、トニー・スタークの母親役の女優さんだった。

この母親との微妙な関係性と、テッドの超能力を狙って、彼の行方を追っている政府機関の男達の迫り来る不穏な恐怖感とが、終始張り詰めた緊張感を醸し出し、前述のノスタルジックな楽しい少年時代とのバランスが非常に良い。

優しく、楽しく、でも儚く、恐ろしい。
この絶妙な塩梅での空気感の出し方が上手い。

ボビーの家を映し出すカメラワークも特徴的で、ワンカットでボビーの部屋と母親の部屋とを映し出し、その対比が面白い。

千里眼とも予知能力とも言える、テッドの力。

物憂げに佇んで、見えないものを見ているかの様なアンソニー・ホプキンスの演技は流石の一言で、本当にそんな力がある様に見えるから凄い。

名作映画の定番、老人と少年の友情物語は胸にこみ上げるものがあり、テッドとボビーが、それぞれ違う場面で発する「何があっても絶対に忘れない」という言葉がひたすら沁みる。

前述した、この映画が持つ絶妙なバランスの空気感。

それが好き。

• #2020akirunaway