①「踏み切りに立つ少女」
母親が倒れたと知らせを受けた女性が、数年ぶりに故郷に帰る。弟と一緒に母親の看病をするが、ローカル線の踏み切りで不思議な少女とすれ違ってから、身のまわりで怪奇な出来事が立て続けにおこり彼女を悩ませる。
怨念によって現世にとどまる幽霊が、怨みを持つ相手に呪いを与えるという、かなり分かりやすく古典的な怪奇もの。幽霊側に、特定の人物を呪うに至った理由があるため、Jホラーらしい不条理さはない。
ただ、実際にいじめたやつよりも、助けを求めたのに助けなかったやつの方に強く恨みをつのらせてしまうのが、人の心の一筋縄ではない理不尽さをあらわしていて面白かった。
でも、子役の演技が雑くいじめの内容の描写が明確でないため、イマイチ女の子の受けた仕打ちの酷さが伝わってこなかった。
掃除用具ロッカーに閉じ込められて、扉をガンガン叩かれるとかはまだわかるんだけど、絵の具セットの筆でつんつんさわさわは、いじめっこってよりエロガキなんよ。
ホラー演出は本格派。特に、人気のない校舎に入っていく場面や、因縁の踏み切りをロングショットでとらえた場面は、とても怖い。
でも、場面が変わるたびに「けたけたけたけた!いひひひひひひひ!」みたいな女の子の笑い声のSEが入る演出は、手抜きで安っぽかった。筆がくすぐったかったのかな。かわいいかよ。
呪われるヒロインの女性がとてもキレイでした。セーターにロングスカートという落ち着いた女性。フィルム撮影もあいまって、ノスタルジックでステキ。
大切断された弟の血ぼとぼと落ちるのは、残虐でかなりいいけども、どんな理由があろうと犬をいじめるやつは容赦しない。ガキだろうとぶち回します。覚悟したまえよ。
②「まちぼうけ」
稲川淳二の体験談としてはじまる。古びた温泉宿に取材でやってきた一行。夕食の席で仲間に肝試しを持ち掛けられ、かつて旅芸人の一家が心中したという「開かずの間」に侵入するのだが…。
登場人物が少なくおどろおどろしい小さな世界を演出していた「踏み切りに立つ少女」とはうってかわって、登場人物も複数人おり演技も明るくコミカルな内容。
稲川淳二の演技がみられる。目が覚めたら謎のばばあが顔を覗き込んでいて驚く稲川淳二、ギョロ目汗だくで廊下を走る稲川淳二、空かずの間のなかで光の点滅のなか過呼吸で怯える稲川淳二、怪談のときと同じテンションで演じる名シーン。稲川怪談の白眉は、稲川淳二が本当に怖がりながら話す姿だったのだ。
稲川淳二の語り口をそのまんま映像化したようなドラマチックさで、視覚化によって本家より具体的に頭に入ってくる工夫された恐怖演出がよかった。
夕食のとき、浴衣姿の女の子が空かずの間のはなしに興味を持ち、ずいっと前のめりに男衆を見つめてくるシーンがあって、彼女らが前に屈んだとき、少しはだけた胸元をガン見してしまった。映画の人たちもそうだったし、僕だけじゃなくて安心。
そんなことよりも、空かずの間に興味津々な女性たち。私たちの顔になんかついてる?って気づいてない様子。古いオッサンに作られた女性観だなあって感じ。女の人って「コイツいま胸見たな。」って、すぐわかるらしいっすけどね。実際どうなんでしょう?
前作に続いて『心霊2』もよかった。ふたつとも見応えがあって、連なるドラマのテイストが違っているのがよき!稲川怪談2.5次元バージョンみたいな思索があれば、これからも見続けていきたい。
恐怖の現場シリーズも、フィルマークス登録されねえかな。