木下恵介監督による凄まじい戦争映画。日本が降伏する数日前。舞台は北海道の片田舎。行われるのはペキンパーばりの銃撃戦！おそらく、本作は加害者としての日本人が描かれた数少ない戦争映画だと思います。その一点においてすごく価値がある。

っていうか、むしろホラー？アイヌ楽器による音楽がディジュリドゥのような不気味な旋律。そうだよ、この怖さが戦争映画だよ！

日本の戦争映画ってかわいそうな一般国民が描かれるのが通常です。もう絶対にこんな悲惨な戦争はしちゃダメ。日本人がかわいそう！でも、戦争において一方的に被害者なんてことはなく、加害者でもあるわけです。被害者になりたくないだけでなく、加害者になりたくないと思えなければ、日本人はまた戦争を起こしてしまうのではないでしょうか。

戦争末期に疎開で北海道にきた園部家。その娘の黄枝子（岩下志麻）に村長の息子の剛一（菅原文太）との縁談が持ち上がる。しかし、黄枝子の兄である秀行（加藤剛）は剛一が戦地で強姦を行うのを目撃している。そこで、縁談を断ることになるのだが、それから権力者である村長家を中心とした村人たちの嫌がらせがはじまる。園部家の味方になってくれるのは猟師の信太郎（加藤嘉）とその娘百合（加賀まりこ）だけ。ある日、黄枝子は剛一から乱暴を受けるのだが、これがきっかけで村を二分する争い（というか一方的な私刑）となるのだが……という話です。

ストーリーもすごいですが、テーマもすごい。始まりと終わりは現代が舞台でカラー映像。普通の長閑な農村。メインのストーリーは過去で白黒映像。つまり、現代から過去を振り返っています。この長閑な農村が舞台で凄まじい争いがあった。法治国家とは思えない集団発狂による暴力。それは振り返ることなく、忘れられている。すごい！まさに今の日本じゃないですか。

そして、その白黒映像がすごい。これスローモーションがあったら完全にサム・ペキンパーじゃないですか！画面に映し出される強烈な暴力性。陰影の濃い白黒映像での村人たちの無表情なクロースアップ。怖い！

色々とすごい作品だと思うのですが、モノローグが説明くさくて今ひとつなんですよねえ。完璧な映画！傑作！と手放しで褒められない部分もある。園部家の母親は田中絹代が演じているのですが、大女優だから見せ場を作らないといけない。しかし、これが完全に蛇足なんですよ。田中絹代のシーンは全く必要なかったと思います。

それでも本作が素晴らしい作品であることには変わりません。日本人が被害者のおなみだ頂戴な戦争映画を観るくらいなら、本作を観た方がいいと思いますよ。

No.3800

木下恵介については詳しくないんだけど、これは彼の作品群の中でも、やっぱり珍品なのか？

思ったよりバイオレンスでサム・ペキンパーかと思ったｗ
あるいは西部劇？　アメリカン・ニューシネマ？？

しかも、こんなバイオレンスになっちゃうまでの過程がもう・・・😢😢

でも、ただ荒々しいだけじゃなくて、構図が決まってて撮り方がかっこいいのよ。

まだ終戦から20年も経ってない中での本作のような映画は、なかなかぶっ飛んでるというべきか、なんというべきか。木下流の戦時中の総括か？

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音楽がまた奇妙奇天烈で頭おかしくなりそうになるｗ。
しかもほぼ全編、ノンストップで流れ続けるし。

音楽は監督の弟、木下忠司。

グーナドッティルのどこまでも陰鬱な劇伴が『ジョーカー』の世界観構築に大貢献したのと、ちょっと同じ匂いがする。

音楽のテンションはまったく両作で違うけどね。

昔の閉ざされた村ってほんと怖いと感じました。
あんな時代に生まれなくてよかったと思えてしまう作品。
でもそうなると、これ以前の時代はもっと酷いのかも……。

加賀まりこさんが、いいコなのにとてもかわいそうな運命の役どころで後を引きました……。