反体制思想家の屋敷に従事している女中（谷ナオミ）が、兵役についた若旦那（五條博）の生還を結実させるべく、体制側の虐待行為を耐え凌いでいく。大日本帝国陸軍の暗部を題材に扱っている、日活ロマンポルノ。「私刑」は「リンチ」と読む。

高橋明が指揮を執る警察官たちが、左翼対策のために谷ナオミと若旦那の妹（東てる美）を折檻する。床にたくさんの豆をばら撒いてから、「全部拾ったら釈放してあげましょう（嘘だけど）」の流れに、サディズムの真髄が感じられる。

やがて若旦那が出征すると、屋敷に取り残された谷ナオミと東てる美が、反体制ドラマを展開させる。「肉体と精神を別のものとして考えなければ軍人は務まらない」という少佐（江角英明）の思想が、谷ナオミに伝播するところが面白い。

エンタメ路線のSM倒錯とは異なる、至極堅実なエロティック・ドラマ。全編が重苦しい雰囲気に支配されているが、谷ナオミのリベンジ要素が働いているため、強大なカタルシスを得ることができる。

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ドラマと撮影の濃度が強い。完璧といえば完璧なのだが、完璧すぎて。ナオミさんも完璧だったが五條さんの妹役の東てる美も完璧に可愛い。鏡と江角さんの将校黒ブーツの完璧すぎる使い方。

谷ナオミさんのお顔がどんどんと疲弊していく特高高橋明の取り調べ。枡一杯の豆を床にこぼして拾いなさい。泣き虫だったって江角英明の陰湿さたまらない。軍歌に縋りついてまで哀願しても戻ってきた五條さんは盲目に、本が読めなくても音楽があるって幸福だった過去の回想シーン挟んで江角さんに凌辱されるシーンのこれ以上ない残酷さ。高橋明に掛ける言葉もなかなか死なない口数多い江角さんも忘れらんない。