アメリカ国民の性意識を調査する動物学教授が、危険人物として当局からマークされてしまう。1948年と1953年の2回に分けて、性意識の報告書「キンゼイ・レポート」を発表した人物、アルフレッド・キンゼイの伝記を綴っている、ヒューマン・ドラマ。
「性交渉は子孫を残すための行為である」「子作り以外の性行動(避妊、自慰、同性愛)は神への冒涜である」という道徳観がまかり通っていた時分の物語。キンゼイ博士は、これら宗教的観念を取り払い、根源的な性意識の明瞭化を試みる。
面接形式のアンケートを始めたキンゼイが、禁欲主義者の父親に心境を問い掛ける場面が印象的。キンゼイ博士の行動理念が「悪」に転じてしまう展開もまた見応えがあり、人間の傲慢さと儚さが伝わってくる。
本作では、ランダムな人間を相手にして面接をおこなっているように演出されているが、実際はキンゼイの活動に賛同する白人を中心にして面接をおこなっている。そこが問題点とされているのだが、本作の趣旨を語るうえでは野暮なことかも知れない。