ほとんど人の姿が映らない空っぽの風景にさざめく、濃密な人の気配と声。静かに狂気を孕んでいく男女の日常が、美しい朝焼けや薄明の光景とともに、声や物音だけでつづられていく―。 いま出てきたトイレの中に、誰かがいるような気がしてならない…。パジャマ姿の青地(つぐみ)が眩しそうにカーテンをめくる。もう陽も高い。中学の非常勤講師をしている彼女は、このごろ学校へ行くのがおっくうで、いくら寝ても寝たりない感じが抜けない。同僚教師の野口(西島秀俊)は、自分の顔のことは棚に上げ、青地の顔がだんだん膨らんできていると笑う。長く付き合い過ぎた彼氏(山本浩司)との会話は上滑りし、好きだという気持ちもすでにおぼろになっている。 繰り返し見続けるのは、記憶とも妄想ともつかぬ奇妙な夢。どうも何かが変だ…。
映画が音楽と出会ったのはいつのことだろう。19世紀末に生まれた映画と詩劇『サロメ』。その連関は映像と音声が同時に別々の物語を語ることで表現される。本作では擬人化された映画史の映像と、音声と…
>>続きを読む「あなたはわたしじゃない」 そう言って、あの人は私のまえからいなくなった。 あの晩、私は森の中で置き去りにされた。 獣のマスクをしたあの人は、私のお母さん、だったのだろうか? …
>>続きを読む新世紀を迎えたばかりの2001年の台北。恋人のハオと一緒に暮らしているヴィッキーは、仕事もせずに毎夜、酒とゲーム、クラブ通いと荒れた生活を続けるハオにうんざりしていた。仕方なく始めたホステ…
>>続きを読む商社マンの小野にふられたOL・理花は、酔ってかけまくった電話で、映画配給会社に勤める甲野と知りあう。理花は甲野に癒やされながらも、小野を諦められず、彼を執拗に追い回していた。甲野は目的に向…
>>続きを読むいつから私はひとりでいる時、こんなに眠るようになったのだろう―――。毎日家で眠りながら恋人の電話を待つ寺子(安藤サクラ)と、永遠に眠り続ける妻を持つ恋人の岩永(井浦 新)。そんな中、男たち…
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