《揺れ動く少年の心》
映画を見終わった後、この後味こそガス・ヴァン・サント監督の傑作「エレファント」を思い出させる感覚だと思った。ずっと残り続ける余韻のようなもの、それは決して心地良い余韻だけではなく、考え込んでしまうような、そんな感覚がガス・ヴァン・サント監督らしいなと思う。

スケートボードに夢中の少年アレックスと、彼が起こした過ち。彼が過ちを起こす前と後とを時勢を混ぜながら描いていく作品。少年の揺れ動く気持ち、不安定でどうにも掴みづらい心を距離をおいて描いている。特に印象深いのはそのカメラワークで、スケートボードをする姿を後ろで追うように、ゆらゆらと映し出す。

ガス・ヴァン・サント監督は街の雰囲気を描くのが得意だ。「マイ・プライベート・アイダホ」でも、「小説家を見つけたら」でもそうだったが、その街にいる人々をそのままに映すことで空気感を伝える。今作もスケートボード場でのシーンなどによく表れている。

とても静かで起こっている事件に対する冷めた視線というのは今作でも健在。どこか諦めや寂しさのようなものを感じる。地味な作品ではあるが、考え込んでしまうような、心に残る作品だと思う。

DVD📀所有。「マイ・プライベート・アイダホ」「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」のガス・バン・サント2007年脚本・監督作品。映画初主演のゲイブ・ネヴァンス主演映画。

主演のゲイブ・ネヴァンス、透明感があって中性的な魅力満載です

1人の少年の罪の意識と葛藤を描いた人間ドラマ。07年カンヌ国際映画祭で60周年記念特別賞を受賞。

オレゴン州ポートランド。スケボーに夢中の16歳の少年アレックスは、不良スケーターが集まるパラノイドパークへ行くようになる。だが、そこで、思わぬ偶然から誤って1人の男性を死なせてしまう。アレックスはその後も何事もなかったかのように日常を過ごすが……。

あの頃の心の居場所…

彼の表情は変わらない、何も話さない。それでも映像は彼の心を映してゆく。

アレックス。

彼がノートに綴る誰かに宛てた手紙には絶望と孤独と不安、そしてその全てを飲み込んでしまった空虚感。ある出来事に対する不安定な彼の心情、その独白が時系列を歪めながらも日常的な風景の中に映し出されてゆく。


個性的かつ偏光的なので、感情移入は疎かその物語を追うにも恐ろしく退屈な映画なのかも知れません。なので誰にもオススメはせず自分ひとりでずっと大切にしたいと思う作品。音楽もめちゃ良き。

鑑賞後『エレファント』を撮ったガス・ヴァン・サント監督作品と知り、妙に納得いたしました。



以下ネタバレあり〼
↓ ↓ ↓






前情報なく観始めたもんだからその実験的な映像美に少々面食らいましたが、なるほど納得。

心象的な長回しの映像とアレックスの無表情からは罪への意識は微塵も感じ取れないんですよねぇ。でもそれは彼の中にあるはずの数々の感情が殺されてしまうほどに、アレックスの心が空虚感に苛まれてしまっていたから。

正直、琴線には触れるものの心は持っていかれない…そんなような作品に自分は感じます。でもそれこそが 本作らしさ のようにも思うのです。

出会えて良かったと思う作品がまたひとつ増えました。※今フィルマの映画通の諸先輩方のレビュー拝見したら軒並み低評価…あらら😅