大枚叩いてDVD買ったら突然特集上映組まれよって、あはは…と変な笑いが止まらなくなったが、この異常気象&非常事態の中アテネ・フランセの灼熱の廊下に並んで「私、生命の危機です。こっちはシネフィルのジジイ。」ってやるのもなんだしと、クーラーのガンガン効いた部屋でアイスコーヒーなんて嗜みながら悠々自適に鑑賞した結果、1回目は猛烈お昼寝モードに突入してしまった為その時点で大正解であったが、折角大枚叩いたのだし意味分からんまま終わらせるの癪だしと続け様に鑑賞したものの、結局2回観たところでろくすっぽ意味など分からず、ただ「イネスの太腿がやべぇ…」といつも通りの感想だけを抱いて素直に停止ボタンを押した。

まぁきっとゾンビ映画なのでしょうね、自殺したはずのレオンは生き返るが、その代わりにマリアーナを守った黒犬は舌を噛み切って自殺（？）する、ひょっとしてこの二人…入れ替わってる！？そういやターノの腕の傷も明らかに何者かによって「噛まれた」様な傷、やっぱりイッヌを殺したのはこやつなのだろうか。政治犯の恋人を負ってこの島に住みついたエディットも最初は死人の様な顔をしているが徐々に回復を見せていく、その代わりに幼いティナとターノは犠牲になる、みたいな？溶岩の色を思わせる赤いワンピースを着用したマリアーナがズンズンと歩き回る事によって島の風景が写し取られていく。未見と言いながら同じ様な作品を撮ってしまった黒沢清は、中の人ペドロ・コスタってこと？レオンとマリアーナの主従関係が逆転してくとこはちょっと青山真治の『こおろぎ』っぽくもある様な。とは言え分からんもんは分からんので分からんのだが、イネスのクローズアップはめちゃくちゃな破壊力だし、窓枠フレームの先でお乳丸出しのとこも最高と言わざるを得ない。生と死の敷居たる火山の存在、との事です。

• #太腿映画大賞

ペドロ・コスタ監督作品…初期3部作の2作目…。

クロースショットの火山の噴火口から溶岩が流れ出る壮絶なシーンで始まり、異世界に引き込まれます…。

看護師のマリアーナ(イネス・デ・メディロス)は移送される意識不明の男レオンに付き添ってカーボ・ベルデ島へ向かいます…。

レオンは出稼ぎ先のポルトガル、リスボンの工事現場で事故なのか、自殺なのか…足場から転落…2ヶ月もの間、昏睡状態…。

彼らが降り立った島は死の香りが漂うサウダージの世界…男たちはポルトガルへ出稼ぎ…取り残された女性たちはアフリカ系、混血、ポルトガル系…一様に虚無的な表情を浮かべています…。

その中で真っ赤なミニワンピを着たマリアーナは明らかに異質感を放ち、アヴァンギャルドで神秘的…名前からもまるで女神のように天から降り立ち、人々の救済に努めます…。


生死の間で揺れ動く人間を見つめ、彼らの記憶に触れるスピリチュアルな医療はどこかアピチャッポン…そんな中、陽気な音楽隊も絡み合って寓話的な面白さも魅せてくれます…。

暗闇の中で月の光にぼんやりと照らされるマリアーナの輪郭…孤独な彼女は、誰かを求めることや求められることに、どんどん鈍くなっていきます…。



撮影監督は後期ブレッソンや後のオリヴェイラを支えたエマニュエル・マシュエル…乾燥した火山地帯の広大さや厳しさを背景に、暗い溶岩の家屋に対しポップな色彩のマリアーナのワンピ…真っ赤な色がマグマと連動するように生を感じます…。

また対照的に、島の人々のクロースアップも多く、影を取り入れサウダージ感を高めます…。

最初は早くこの島を出たいと思っていたマリアーナ…島に馴染めず、受け入れられない…しかしそれにも拘らず…どんどん島を離れられなくなっていくのです…。



1作目の『血』と同じ監督とは思えない作風…どこに帰結するのか?? 3部作ラストの3作目も愉しみです…ෆ*

かねてより、いつかアフリカの大地で野垂れ死にたいとか考えていたから、このフィルムに刻まれた火山島の大地との邂逅におどろきを禁じ得ない。これはロッセリーニの『ストロンボリ』で露顕した崇高な威光とは根本的にちがう何かだ。生命が震えている。