素晴らしい！！！
もう最高に愉快な愉快な映画だ！フランス映画の印象が180度ガラリと変わった！こんなに楽しく軽快で微笑ましい映画があったとは！！！

とにかく娘役のダニエル・ダリューが可愛くて可愛くて！笑　
父親の話に一喜一憂する表情など、変化に富み見事だ！甘ったれたり、タバコを咥えはすっぱな感じを出したり、もう自由自在の表現で観ていて実に愉快だ！この当時、彼女は19歳か。
父親が弁護士として働くことを許すと言いつつ条件を与えるシーンにおけるダニエル・ダリューの可憐な可憐な表情と演技は何度観ても飽きない。
これまでに鑑賞した古今東西の映画の中で、こんなに愛らしくコメディタッチでテンポの良い演技は観たことがない。

ダニエル・ダリューを惚(とぼ)けた美人と形容し、妖艶なだけの女優さんだと思っていたことを深く反省した。彼女は、コメディも可憐に完璧にこなす女優さんだったのかと…。いや、コメディエンヌとして一流だと思った。
どうも私は、美人でコメディが巧いと手放しで称賛してしまう癖がある笑　
コメディが一番難しいジャンルだと思っているが故に尚更だ。

そして、ダニエル・ダリューが歌も歌える女優とは知らなんだ。しかも上手い…！
彼女の歌も聴けるし、その歌がまた嬉しくなるほど軽快だし、映画のテンポも流れるようで、本当に気持ちのいい映画だ！！　

初めて弁護士として仕事をもらい、彼女が喜び歌いながら運転するシーンがある。
運転する彼女から見えている前方風景の長回しがあり、周りを走る車と同様にスイスイ走り、時にはヒヤッとするぐらい近い距離で目の前を通過する車があったりする。
このシーンは、運転する車が彼女自身であり、周りを走る車は、世の中を表しているのだろう。弁護士として社会に出て、自由に、そして自分の足で渡って行く…、その描写であろう。

この場所は譲らない何があっても
この場所は譲らない最高の場所だから
悩みは消え心には希望だけ
道ゆく人たち全員に幸せだと叫びたい
すごい財産が喜びとは限らない
月を贈られても遠慮する

映画冒頭は、非常に興味深い内容で、1936年のフランス映画だが、同時代の日本と全く同じ価値観だと思った。
パリ大学を優等で卒業して女法学士になったダニエル・ダリュー。父親は、娘をすぐにでも結婚させたく思っており、女の幸せは「結婚」であり、「女は家庭に入るべきだ！」と考え、社会に出て働くなど考えられないと言う。母親は、娘を「家庭の奴隷」にしたくないと言い張り、「料理人や子守になるために勉強させてきたのではない」と反撃し、かなり極端だが「結婚はさせません！」とまで言ってのける笑
父親が「娘に教育を受けさせたのは、男を軽蔑して暮らす独身女にするためか！？そんなの不良女だ！」と言うのもまた興味深い。意外とフランスは1936年の時点でも、この父親のような考え方が主流だったのではないだろうか。

1930年代後半の松竹映画や東宝映画でも「女性の自立」「女性の社会進出」を謳った映画が数多く製作されている。全世界的に観て、時代の潮流だったのだろう。この作品と同様に同じ女性弁護士ものである1939年の松竹映画『新女性問答』などと内容を比較してもおもしろいかもしれない。
新旧価値観の対立が興味深いわけだが、現代になっても、この「女性の自立」や「女性の社会進出」というテーマは、文学や映画の中で描かれ続けており、どの国もこの1930年代と状況が全く変わっていないことがわかる。
逆に言えば、この「1930年代」という時代がいかに進んでいたかということでもあろう。
「進んでいる」とは言ったものの、しかし、個人的には、バリバリ働きたいキャリアウーマンは別として…、大体の女性は家庭の中にいる方が幸せなのではないか…という考えを持っている。私の母は専業主婦になりたくてなった人で、それを見て育ったから余計かもしれないが。
フェミニストの前では口が裂けても言えないね笑

さて、この映画、とっても微笑ましく好ましい大団円を迎えるわけだが、タイトルで損をしている気がする。
正直、『不良青年』というタイトルがなんとなく社会派映画のような感じがして、あまり観たいとは思わなかった。
『不良紳士』とか『お嬢さんお手柔らかに！』とかなら、タイトルからもコメディだとわかったように思う。

とってもかわいい。
いいな。フランスならではの思い。

当時にしては先進的なアプローチに感心していたら、ド保守的なドンデン返しに脱力。

でも、歌良し、衣裳良し、カタいこと言わずに見てる分には、軽妙で楽しいコメディ。

特に、お母ちゃんのキャラが笑える。

『虎に翼』のヨネさんの男装は、この映画がモデルかも。