シュワちゃんの”ジュニア”を思い出させる男が妊娠する話。オープニングの演出や流れる主題歌、ヒロインのカトリーヌ・ドヌーヴのファッションが冴えわたっている、フランスらしいお洒落なほっこりするコメディ映画だった。

”人間にミスはつきもの。”

ジャック・ドゥミ監督×カトリーヌ・ドヌーヴの黄金コンビによる異色のコメディ映画。ある男性が“妊娠”した事によってはじまるドタバタ騒動。彼は瞬く間に世界中の注目の的になり、常識が覆ろうとしていたが…。

監督特有のカラフルな色合いはそのままにシュールなテーマをテンポ良く描く。もし男性が妊娠したら世界は、人類はどうなるか？マタニティブランドとかがこぞって新作を発売する展開とまさかのオチが面白い（笑）。カトリーヌ・ドヌーヴの美容室と彼女の衣装はいつもカラフル且つ統一感があってさすがだなと。

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今なお幅広い層から絶大な人気を誇るフランスの映画監督ジャック・ドゥミも明日10月27日で没後27年目を迎えます。

また今年はちょうど「ロシュフォールの恋人たち」の公開50周年ということで、ドゥミ作品のリバイバル上映も大盛況を博している昨今！

そんなドゥミが作曲家ミシェル・ルグラン&カトリーヌ・ドヌーヴと共に4度目のタッグを組んだエスプリ全開の傑作コメディ「モン・パリ」
なぜか本作だけBlu-ray化がされず、しかも今回のドゥミ祭りも本作はスルーされちゃうという不遇な扱いを受けておりますが、個人的には大変お気に入りの作品でもあります。

男が妊娠するという前代未聞の騒動が、やがては世界を巻き込む社会現象にまで発展してゆくというトンデモ展開が愉快痛快！
見所はなんと言っても当時ドヌーヴと事実婚状態だったマルチェロ・マストロヤンニが旦那役で出演している点でしょう。

ドヌーヴはビビッドカラーの可愛い美容院を繁盛させる美人妻イレーヌを演じ、
夫で自動車学校の教官マルコ・マゼッティをマストロヤンニがコミカルに演じます。

実際本作の直前にはドヌーヴがマストロヤンニとの娘キアラを出産したばかりであり、
美しきドヌーヴの表情がいつにも増して輝いて見えるのも、彼女の幸せの絶頂が窺えるポイント。

男が妊娠という一見荒唐無稽なシナリオは謂わば当時人類初の月面着陸に端を発するように、
劇的な文明の発展でそれまでの価値観は改変され、世界が多様化社会へと突き進む転換の時代を饒舌に示唆したドゥミ。

また当時アメリカを中心に世界中で巻き起こったウーマンリブ運動に際し、
フェミニズムの先進国フランスが高次元の男女平等をカリカチュアするというユーモアも彼の真骨頂であります。

そしてフランスのシャンソン歌手ミレイユ・マチューが劇中で「モン・パリ」で歌い上げるように、
徐々に近代化し、古き良き面影を失いつつあるパリへの郷愁も込められているのです。

イタリア人女優の前妻とのいざこざでドヌーヴとは籍に入らなかったマストロヤンニですが、
そのくだりもしっかり本編に反映されていて本当ドゥミの作り込みには頭が下がります。
だからこそラストが大変粋な演出なのも素敵。

それにしてもヨーロッパ映画界の三大プレイボーイ(ヴァディム、トリュフォー、マストロヤンニ)の全員と付き合い、内2人とは未婚で子どもも授かったドヌーヴ。
改めて凄い女だぜ！