さすがマカロニウェスタン。タイトルは例によっていい加減です。
『ミスター・ノーボディ』の続編でもなんでもない日本未公開作品です。
製作にセルジオ・レオーネが嚙んでて主役がテレンス・ヒル、音楽がエンニオ・モリコーネという共通点からこの邦題なのでしょう。
原題は“Un Genio, due compari, un pollo”（天才、二人組、マヌケ）ですからむしろ『続・夕陽のガンマン』の原題（善玉、悪玉、卑劣漢）をパロッた感じ。

マカロニ後期のコメディタッチの作品ですが、名作『ミスター・ノーボディ』の面白さを期待するとかなりガッカリします。
監督はジャン・マリア・ボロンテ主演の『群盗荒野を裂く』のダミアーノ・ダミアーニ。
冒頭にレオーネの演出シーンもあったりしますが、作品としては残念ながらレオーネが関わったウェスタンでは一番の凡作。

出演は他に可愛い子ちゃん担当のミウミウ、悪役担当はパトリック・マクグーハンにジャン・マルタン、クラウス・キンスキーとけっこう胡散臭いのが揃っているのにいまひとつパッとせず（キンスキーは笑えますが）。

本作でも相変わらず頑張っているのは音楽のモリコーネ。
『ミスター・ノーボディ』の路線で明るくほのぼのとした曲を聴かせてくれます。
モリコーネはよく曲の中にクラシックの名フレーズを仕込むお遊びをしますが、『夕陽のギャングたち』では“アイネ・クライネ・ナハトムジーク”、『ミスター・ノーボディ』では“ワルキューレの騎行”、本作ではとぼけた場面で“エリーゼのために”がインサートされていました。

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マカロニのコメディリリーフ、Tヒルが今作でも超身軽。

名前あるし、ミスターノーボディでもなんでもないが、全く必要なかったと思われるレオーネ演出のOPやPマクグーハンの差し込みなど小出しに良ネタ揃い。ミウミウもぐうかわ。

散々コケにされたのち、ゴミ箱に捨てられるような扱いだったキンスキーがなんだかんだピーク。

奇術に長けている詐欺師の青年（テレンス・ヒル）が、同じ志をもつ仲間たちと共に、騎兵隊の隠し財産を奪い取ろうとする。頭脳明晰、天真爛漫なトリックスターの活躍ぶりを描いている、マカロニ・ウエスタン（イタリア製西部劇）。

狡猾なテクニックで世渡りする主人公、原住民族からドロップアウトした無頼漢、その2人の狭間で心を揺り動かすコケティッシュな娘。この3人組が、凸凹チームとなって行動を開始する。作風はスラップスティック・コメディ調に終始一貫している。

本編では、主人公チームが別行動を取り、様々な状況下での喜劇が展開される。とりわけ、騎兵隊に扮装したアウトローが、偽者だとバレた状態で、都合よく利用されるシークエンスが面白い。冒頭部、ヤラレ役で登場するクラウス・キンスキーも絶品。

「無闇に銃撃しない西部劇」へと方向転換しつつ、反体制運動を背景にしたドラマを紡ぎ出す。過去作に比べると、さすがにパワーダウンが否めないけれど、マカロニ・ウエスタン末期の残り香を純粋に楽しむことができる。