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降霊 KOUREI
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『降霊 KOUREI』に投稿された感想・評価

4.2
 グラスに水を注ぐ音、ユングの心理分析、仮定の話が多い早坂文雄(草なぎ剛)の博士論文を訝しむ北見教授(岸部一徳)の姿。別室で呼ばれるのをも待っていた佐藤純子(風吹ジュン)は今日は会えないですと断りを入れた早坂の様子をじっと見つめる。効果音技師の佐藤克彦(役所広司)は今日も窓のない密閉された部屋で作業に勤しんでいた。家に帰宅すると、妻の純子はおもむろに金沢智子(石田ひかり)の亡くなった夫の降霊術を開始する。克彦と純子の夫婦は、郊外の一軒家につつましくも幸せに暮らしていた。しかし、純子には“霊”を感じる特殊な力があった。ある日、少女誘拐事件が発生した。だが、身代金受け渡しに失敗した犯人は逃走中に足場の落下事故で意識不明となり、少女も忽然と姿を消す。そんな折、純子の力に興味を持つ大学院生・早坂を通して、警察が彼女に協力を求めてきた。ところが、その少女は克彦のバンの中から発見される。犯人から逃亡した際、咄嗟に彼の仕事用ケースに隠れた少女の姿。仰天した克彦を尻目にその時、純子はある計画を思いつく。しかし、騒ぎ出した少女を静かにさせようとした克彦が過って彼女を死なせてしまう。

 黒沢映画において夫婦の関係性が出て来たのは、『復讐 運命の訪問者』の哀川翔と大沢逸美からである。『CURE』の役所広司と中川安奈や、『蜘蛛の瞳』の哀川翔と中村久美もそうだが、黒沢映画において、ある時から急に出て来た夫婦の関係性は、ここで一つの到達点を迎える。純子には霊を感じる特殊な力があった。彼女は霊媒としての能力で糊口を凌ぐが、環境を変えたいからとファミレスでのバイトを始める。しかしバイト初日に来た客(大杉漣)の背後に霊の姿を見てしまった純子はあっと言う間に店を辞めてしまう。ふいに挿入される場面、公園で緑色のワンピースを着た少女に若い男が話しかける。最初は見知らぬ男に警戒した少女だったが、母親の入院という狂言により、あっさりと車に乗る。その場面がやがて夫婦の間に波紋をもたらしてゆく。森を抜けた女の子はある箱の中に隠れ、それを知らずに主人公は家まで持ち帰る。この偶然の連鎖が、やがて夫婦に決定的な亀裂をもたらすことを2人はまだ知らない。映画の冒頭、霊体験や予知能力を発揮するのは風吹ジュンだけなのだが、中盤以降、少女の死から役所広司にもその体験が「感染」する。『CURE』でも『カリスマ』でも最後には常人離れした恐怖を身に纏った役所広司が、今作では夫婦の破滅を受け入れることになる。その予兆になった少女の霊の手のひら、まるで『スウィート・ホーム』の焼き爛れた刻印のように、彼女は自分の存在証明を役所広司のTシャツに記述する。もはや哀川翔扮する祈祷師でさえ救うことが出来なかった夫婦の災いが、やがて悲劇を生む。

いよいよ明日です。今回は年末大忘年会スペシャルと題しまして、管理人のベスト10発表、2017年の総括もやります。 宜しくお願いします!!
2017.12.28.(木)21:00~03:00 『映画の日 8』charge:500yen
@Music Bar LYNCH  栃木県宇都宮市二荒町8-12
3.8
黒沢清監督のホラー映画。実際に幽霊が見えると言う人達がこれを見て「ここに出てくる幽霊が一番自分達が見てる幽霊に近い」と言ったそうです。なるほど、霊感が強い人達には実際の幽霊はあんな感じでモヤって見えるのね。霊感が無くて本当に良かったってこの映画をみて改めて思ったわ「笑」
できるだけ事前情報無しで見てほしいタイプのホラーなので詳細は避けますがこの映画って最初と最後だと見えていた景色が全く変わるから面白怖い。加えてJホラー独自のこれから嫌な事が起きるぞと言うじっとり感と計算されつくした撮影構図が作品の緊張感を作り続ける上で完璧に機能しているのが素晴らしい。
ぶっちゃけあの夫婦には「なんで?」って思う所もあるし全てに共感できるわけじゃないけどそもそもあの2人が元凶なのかと言われたらそれは違うし何かがとチクるって平穏な日常が壊れてしまう恐怖っていうのは現実の自分達にも予測できない所から降りかかって来そうな部分は凄くリアルだ。
正直見る前に想像してた奴とは違う部分の方がかなり多かったですがそんな意外性も含めて良い意味で恐怖を駆り立てられる派手な演出に頼らない非日常を描いた良作でした。
私の人生で一番怖いと感じた映画は同監督の「黒い家」やけどまたまたやられてしまいました。
Yuuki
4.8
TVマンの佐藤は妻とともに郊外で慎ましく暮らしているのだが、妻は降霊術を持っていた。ある日佐藤は音源収集のために森の中の音を録音している時に自分の荷物に誘拐から逃げてきた少女が紛れ込んだことに気づかず、そのまま帰宅してしまう。妻は少女を利用して霊能者としての名声を得ようとするが、二人の歯車はやがて狂い出していく…な話

黒沢清監督の、20年前の心霊+サスペンスの傑作。あの〜、これめちゃめちゃ怖かったんですけど!?!?何ですかこれ?やば…。まず二人が見えてしまう幽霊の全ての登場シーンにジメジメとまとわり付くような寒気が怖い!!ビビらせ音は使わずにあくまでしっとりと、ジャパニーズホラーの基礎を抑えながら演出面で最高峰に食い込むほどの恐ろしさでしたね。ファミレスの席に気づいたら座ってたり、木陰に佇んでいたり、ちゃんとドアを開けて入ってきたり。この「…いる!」という感覚が最悪な割に、特に呪い殺したりせずにただ心を追い詰めていくっていうのも無限地獄な感じで怖い!加えて佐藤たちが「幽霊に対しての罪悪感」で精神的に締め付けられるのも居心地が悪くて素晴らしい!

かと思えば誘拐した少女をめぐったサスペンス的な要素や、人間のうちに潜む狂気や感情の爆発なんかも心に大ダメージを与えるほどの嫌さに満ち溢れていて、バランス感覚すごすぎる…と改めて感じました。なのに改めて全体を通して振り返ると、全てのシーンが唐突でブツ切りだったり、そもそも妻が降霊術あるのかすら怪しくなる構成だったり、無茶な展開もあったり、やけにシュールなシーンもあったり、あと黒沢清お得意の「動いてない車に効果音をつけて走ってるように見せるシーン」とか、あまりにも予想外な哀川翔の登場など、見るものを不安にさせる歪さもまた凄まじかったです。配信とかはされてなくてDVDでしか見る手段ないけど、TSUTAYAに寄ることがあれば是非借りて欲しいですね…

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