短文感想 68点
パゾリーニの生の三部作の1作目。ボッカチオの『デカメロン』を現代風に仕上げたオムニバス映画。通常の目線から見ると相当ヤバイ作品なんでしょうが、『ソドムの市』を見た者からすると全然マシにみえる。初っ端から足を踏み外しトイレの底に沈んでしまいクソ塗れになってしまう主人公には笑えましたし、シスターたちが快楽を得ようとするあたりは衝撃的。無茶苦茶な話かなと思いきや、話はしっかりしていて全く見るに耐えないという訳ではありません。あと、他の人も言及していますが、歯並びが悪い人が多い笑 意図的にも見えるこのキャスティングには苦笑いでした。

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パゾリーニ監督作品はいまだ未見の「ソドムの市」のあまりにもの悪評にずっと敬遠していたのだが、先日アマプラで鑑賞した「テオレマ」が割と自分好みの歪んだ作風だったので、今回、監督の「生の三部作」第一作に当たる本作をゲオでレンタル。

ルネサンス期の詩人・作家による「デカメロン」自体は世界史で習った程度でその内容までは把握していなかったが、原作がユーモアに満ちた恋愛談のオムニバス形式という点で、一応、ちゃんとしたパロディになってんのね。

にしても、あまりにもパゾリーニのクセが出過ぎというか、やりたい放題感。若い男性が主役となるエピソードなんて、絶対、知名度や演技力を全く無視して監督の好みで男優選んでるだろ。演技が上手い下手って、台詞回しに一番出るので、イタリア語が分からない日本人視聴者にはそこら辺はごまかせそうな筈なのに、明らかに大根役者だなあと伝わっちゃうのが凄いし、コメディ作品という観点でそこも含めての演出だとしたらパゾリーニはもっと凄い。

若い男性の俳優陣を美男で揃えて来ているのとは対照的に女優陣に、あえてそこまで美しくない女優さんを選んでいるのか、メイクでそう見せているのか、とにかく男のほうを美しく見せようとするこだわりもやっぱりパゾリーニ。

そんな中で唯一、マリア役で登場するシルヴァーナ・マンガーノは役どころに相応しく神々しいまでの美しさで、こういう贅沢な起用法やリスペクトのやり方もパゾリーニ。

全編通して、ドタバタコメディの作風なんだけれど、残念なのはちゃんとオチがついた作品が少ない点。

しっかりオチもあり、唯一声を出して笑ってしまったのが、修道院に突如現れた青年にまつわる珍騒動を描いた「神様の贈り物」。コメディやユーモアの原点って、やっぱり絶対的な権力に対する皮肉が万人にウケる訳で、修道女いじりというタブーは不謹慎でもカトリック信者ではない日本人には面白い。

作品全体として荒削りな作風で、そう考えると「テオレマ」なんて随分洗練された作品なんだなあと思いきや、本作のほうが後年の作品なんね。

ベルリン国際映画祭の銀熊賞受賞作である事実にも驚いたが、カトリックの総本山バチカン市国を擁するイタリア本国でも大ヒットしたとは、さすが、かつて、セクシー女優チッチョリーナをイタリア下院議員まで選出したおおらかな国民気質を感じるなあ。

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