『あん』　
映倫区分G.
製作年2015年。上映時間113分。

河瀬直美監督が、2014年に旭日小綬章を受章した名女優・樹木希林を主演に迎え、ドリアン助川の同名小説の映画化した日本・フランス・ドイツ合作品。

あることがキッカケで刑務所暮しを経験し、どら焼き屋の雇われ店長として日々を過ごしていた千太郎。
ある日、店で働くことを懇願する老女、徳江が現れ、彼女が作る粒あんの美味しさが評判を呼んで店は繁盛していく。
しかし、徳江がかつてハンセン病を患っていたという噂が流れたことで客足が遠のいてしまい、千太郎は徳江を辞めさせなければならなくなる。
おとなしく店を去った徳江だったが、彼女のことが気にかかる千太郎は、徳江と心を通わせていた近所の女子中学生ワカナとともに、徳江の足跡をたどる。
千太郎役に永瀬正敏、ワカナ役には樹木の孫娘である内田伽羅が扮した。
お孫さんとの共演やのに樹木希林は役を徹してるのは役者魂が見えたし、お孫さんとの共演は素晴らし思い出になったやろなぁ。
ホンマ樹木希林は可愛い。
市原悦子も映画をなんとも云えんエンディングに向かい花添えてた。

小豆のアは赤い色から、
ズキは溶けるほど柔らかいという意味から、”アズキ”と名付けられた、この小豆から作るあんこ(餡子、または餡とも)。
昔から赤い太陽や赤い炎は信仰の対象であるとともに、赤い色は魔除けの色として邪気を払うと重んじられてきたらしいし、赤い色をした小豆も、厄除けや魔除けとして食されてきたようです。
あんことして中国から伝わったんは、紀元607年推古天皇時代と云われてるが、もはや日本の十八番加工食品。
いろんな和の菓子が消え逝くなかでも不動のアンコ。
たい焼き、どら焼、今川焼(大判焼き、回転焼きなどとも)、あんころ餅に、ぜんざい。
最近やと焼き菓子にも入ってて美味しいアンコさん。
あんこなげたん食べたろか。
まとめて作って冷凍しておけばメチャ便利やし、小生も小豆からあんこを炊く。
おいしゅうなれ～ぇ、おいしゅうなれ(カムカムエブリバディ風に)と炊くもののイマイチ美味しくで出来たためしがない。
最近は、作る機会が多いみたらし団子のタレや(これは意地になったし、作る原価が安い)は市販より己の味に合うのが出来るし、珈琲は(これは、わざと高い豆かって失敗しないように細心の注意をして)上手に点てれるようになった。
こうしたように、鍛練が必要なんだろと思うが、一年で何度もアンコを作る事がないから、小豆アンはどうしても味やら食感がマチマチに仕上がる。
そないな細々な事を経験してるだけに、また、歳とともにモノすべての呼吸もうっすらながら感じてきてるし(地球の呼吸みたいなんも)、今作品のアン作りの描写は楽しく見ることが出来た。

映画全体を通して、ほとんどが詩のように見えました。
まるで金子みすゞの詩の一篇を見てるかのように。
脚本も担当した監督には脱帽です。
また、キャストの演技が際立ってたし、ストーリーに輪をかけ、俳優陣と撮影の素晴らしさが、この映画をより良く見せているのだと思いました。
料理レシピを本にして出版したり、ネットで公開したりする人もいるけど、こないな映画は、食べ物好きでない人が見てもインパクトがあり、深刻な欲求や飢餓感(ハァ喰いた～いって)を抱かせるのではないかと思います。
嗚呼、アンコ食いたい。
あんこぶつけて～あんこさん。
ホットケーキミックスでつくる菓子(蒸しパンにホットケーキ等々生クリームとの相性も抜群)にほぼ合うあんこ、何て云ってもバタートーストにアンコをドップリのせて、美味しく点てた苦みばしった酸味のある珈琲と共に食するのは超絶超越秀でた絶品に絶句。
因みに、つぶあん派。

今作品は、桜の花が咲き乱れる美しい街並みを背景に、冴えない仙太郎が不機嫌な表情で(こないな役が永瀬正敏にはピッタリ。奇を衒う演技よりこの方がしっくりきてました。)、淡々と仕事をこなす。
徳江の登場は、仙太郎の作るどら焼きの味(侘びしい人生)にそよ風を吹かせ、
物語はのんびりと、予想通りの展開を見せる。　
やがて、徳江の悲惨な過去が前面に押し出されてくる。　
彼女は、指が曲がっていたり、手が変形していることから、ハンセン病の被害者であり、何十年も同類とともに療養所に社会から隔離されていたことがうかがえる。
仙太郎と若菜が緑豊かな療養所に彼女を訪ねたとき、徳江は貧血気味でお迎えがすぐそこに来ていることに気づく。
徳江と仙太郎が、最後のアニミズム的な知恵を授けて仙太郎を励まし、仙太郎は霞んだ瞳で自分の悲哀を語るのである。
老練な樹木希林は徳江の老いを見事に表現し、それを浮き立つような真摯さで打ち消す。
仙太郎は、ある意味、みじめな姿のまま自己隔離されているのだが、永瀬正敏は、仙太郎の内面を、抑制のきいた繊細な輪郭で見事に描ききっている。
嗚呼、この二人はなんちゅうピッタリな息なんやろ。
また、河瀬直美監督の人間味あふれる語り口とゴージャスなミザンセーヌ(作品の筋、登場人物を作り出すこと)は、現在急成長している女性監督たちの集団の中で、大きな存在感を示しているんやろな。

桜が芽吹くまで、あと少し待たないと。

最近、殊に桜の木の幹の黒さを感じる

この時期、特に。



真っ黒なその幹は

沢山の栄養を蓄えて

その日に備えている


押し黙り、寡黙な幹

太くて強くて

そして

しなやかに大きく手を広げた



沢山の人を抱くように

みんなの言葉に耳を傾けるように

一生懸命、守るように



そんな桜の木に、綺麗な花が芽吹いてくる

解き放たれた鳥が楽しげにさえずるでしょう


自由だよ！って

やりたいこと、できるんだぞって


それならば

全身全霊、頑張ろう

全身全霊、笑おうよ


ものの言葉に耳を傾け

人の心の言葉を想像しよう



大きな声で叫ぶんだ

『どら焼、いかがですかー！』

• #樹木希林さん、沢山、木がある！素敵

‘あん’に包まれる映画。

偏見と差別と生きていくこと。
深くやりきれなく切ない。

でも、優しさが滲んだ沁みる作品。

樹木希林さんと永瀬正敏さんの2人のやりとりを観ているだけで心にじわーっと温かみと哀しみが湧き上がる。

実にいい映画です。

• #朝からどら焼き食べたい。