古びた街の電器店で働く浦瀬夏生のもとへ、九州の母親から1本の電話がかかる。それは弟が国立大学に合格したという知らせであった。弟の合格を喜びつつも歯切れの悪い夏生。母親は夏生が一流電気会社で社長の片腕として働いていると勘違いしているが、本当のことを言い出せずにいた。昭和の香りが残るキッチンで古めかしいトースターを覗きこむ一組の男女。電器店の社長の昭治と、倉持佳乃である。佳乃の夫は半年前に亡くなったばかりだったが、絵を描いてるばかりで面白くなかったからせいせいしたと佳乃は強がる。夏生の狭いアパート。その床にところ狭しと並べられた画材…。東京で一人暮らしをしている夏生には親にも社長の昭治にも話していなかったが、絵を描く趣味があった。給料をほとんど画材購入に使ってしまい貯金がない夏生は、家賃の更新と弟の合格祝いを買うため給料を前借りしたいと昭治に申し出る。ある日、修理した古いトースターを届けに行った昭治は、佳乃が「ルームシェアをする」と言い出して、娘のひかりと言い争いになっているのを耳にする。「最適任者を知ってます」と去っていった昭治が連れてきたのは夏生だった。60歳と19歳の奇妙なルームシェアが始まったのだった…。
珈琲の香りに誘われて、函館に短い夏がやって来る。 函館の街にひっそりと佇む古い西洋風アパート翡翠館。オーナーの荻原時子は翡翠館を仕事場兼居住スペースとして貸し出し、若い才能を後押ししている…
>>続きを読む死んだ父親の借金を背負い、古アパートが建つ祖父の土地を売ろうとした僕。理不尽な仕事から逃れようと突発的に会社を辞めてしまった後輩。フリーの仕事もままならず、結婚でその不安を解消しようとする…
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>>続きを読む宮川澪は、20歳。 両親を早くに亡くした彼女は、長野・野尻湖のほとりのこじんまりした民宿を祖母と2人で切り盛りし、淡々とした日常を送っていた。しかし祖母の入院を機に民宿を閉めざるを得なくな…
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>>続きを読む再開発が進む、渋谷。その片隅にある古い家の床は少し傾いている。ここで共同生活する愛、瑞穂、恵梨香の三人は夢を追い求めながら、悩み、もがき、飲んで、愚痴って、笑っては、泣いた。彼女たちが手に…
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