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野獣死すべし
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『野獣死すべし』に投稿された感想・評価

4.2
 黄色いレインコートを着た7歳になる少年は家までの帰路をたった1人で歩く。どんな海の幸が取れたのかはわからぬが、男の子の足取りは軽やかだ。だが港町の道路には場違いな黒い車が粗い運転を繰り返しながらこの地へとやって来る。黄色い徒歩の男の子と暴力的な黒い車とを交互にカッティングしながら、陰惨な事故まで一気呵成に見せるシャブロルの手際の良さ。作家チャールズ・テニエ(ミシェル・デュショーソワ)の7歳になる息子マイケルは、砂浜から帰る途中に無残にも轢き逃げされる。警察の懸命な捜査も虚しく、犯人の手掛かりはおろか、足取りすらもまったく見えて来ない。父親の人生はこの日から暗くどんよりとしたものになる。何よりも大切な一粒種を失った瞬間から夫婦関係は破綻し、妻は屋敷を去った。天涯孤独な男の人生は暗く重い。家政婦の目から逃れ、1人になった男は映写機で映し出された息子の8mmフィルムに過ぎ去りしあの日を思う。映画は現在から未来に向かうメディアであると自覚するシャブロルはこの場面にも安易に回想を使わない。チャールズ・テニエに在るのは息子を殺した誰かへの復讐だ。例え何年かかろうとも、犯人を見つけて機会を待ち、必ず白状させると。

 そんな男の犯人への手掛かりが、うっかりハマった水たまりなのだ。偶然が何の因果が数年前の偶然を連れて来る。有名な女優ヘレン・ランソン(カロリーヌ・セリエ)に男は脚本を書いて、あなたを女優に映画にしたいと言葉巧みに近付く。脚本家と称した男と高名な女優。男と女は本人たちが覚え知らぬままに更なるぬかるみの深淵へと分け入る。婚約をして顔合わせる際に男は遂に、息子をひき殺した残虐な男と初めて対面する。ブルジョワジーの一家を支配する義兄のポール(ジャン・ヤンヌ)は粗暴でガサツな男だ。夕食の席で妻の書いた詩を酷評したかと思えば、息子にモノを投げつけたり平気で平手打ちしたりする。家族の中に入り込んだ他人夫婦はここではほとんどモノを言わない。ポールは権力者で、彼より若いチャールズ・テニエの本名はシャルルという辺りは初期から続く正義と悪の符牒だが、ここでのシャルルはポールと互角に渡り合う。彼の独白で始まる物語は、彼が毎夜綴る手帳を元に物語が進行するが、そもそもその手帳の存在が巧妙な罠だ。赤いペンで書かれた文字の羅列はポールへの重要な撒き餌であり、観客をミスリードさせる。ブルジョワジーの屋敷の隣にはフリッツ・ラングばりのおんぼろな中古車工場がある。ポールと母親は労働者階級であり、芸術を語る才がない。粗暴で無礼な男は一見この家の支配者でありながら、どこにも居場所がない彷徨い人だ。だから洗面台の裏にあれを隠し持っていたのだ。

 後半に向かうに従い、ポールの哀れが露になると同時にシャルルが嘘の語り手であることも少しずつ露になって行く。嘘の語り手の欺瞞ぶりを白日の下に晒すのはモーリス・ピアラ扮する刑事だ。幾重にも散らばる真実めいたヒントを手繰り寄せながら、やがて一筋の真実を導き出そうとするのだが、最終的に罪を犯した人物の意思によってミステリーのカタが付く。これまで一度も会ったことがないポールの息子はシャルルに対し、「あなたが父だったら良かったのに」と呟く。息子を殺された父と、理想的な父を夢想する息子(何とこの子どもたち2人は実の兄弟!!)。シャルルは元気だった息子を思いながら、いったいどのようにあの美味しそうな鴨肉を食べたのだろうか?肝心要の殺しの瞬間がどこにも映っていないというのも実にシャブロルらしい。心底狂ったミステリーの傑作は、クロード・シャブロルのフィルモグラフィの中でも間違いなく代表作の1つに数えられる。
No.3709

カニを踏み潰すカットが怖すぎる。

イケメン息子のフィリップ君が尊すぎる・・・。
leyla
4.3
息子をひき逃げした犯人を見つけ出し、復讐しようとする父親を描いたクロード・シャブロル監督のサスペンス。

展開が最後まで面白い。原作はダニエル・デイ=ルイスの父だそう。

冒頭から数分のシークエンスを観ただけでもこの監督が信頼できてしまう。

『肉屋』にも出演していたジャン・ヤンヌが最低な男“野獣”を演じててイヤな役がうまい。

ブラームスの曲が印象的に使われます。“野獣死すべし”という言葉はブラームスの「伝道の書」を基にした一節の歌詞から来てるのだとか。

獣が死ぬように人間も死ぬ
すべてのものは同じ息を持ち
人は獣にまさることはない

途中まで主人公の復讐を応援してたけど、最後は罪とは?罰とは…?とハッと考えさせられる、余韻の残るラストでした。

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