「男子」の馴れ合いの中に颯爽と飛び込み切り裂いていくユペールの手元の赤の鮮烈さが目に付くがこれと言って決定的な事が起こるわけでは無い外し具合。甥っ子とのなんだが親密過ぎる関係性も、ユペ自身が次第に感じ取るタイトル通り既存の権力構造を撹乱する権力に対する陶酔も、そんなユペに対する見えざる者からの攻撃も、わざわざ拳銃の存在を見せつけながらも部屋の窓から飛び降りた（たらしい）旦那も、何より背後に有象無象が蠢く事件の顛末そのものも全てが曖昧模糊としたまま終わる。ピラニアとまで呼ばれまさに執拗なまでな食い付きを見せる一方で常に少女性の片鱗を見せつけることも忘れないユペール。単純な対立構造や二面性の映画でもなく結局これはなんなのだ…？とも思うが、この綱渡りの感覚を味わうのが醍醐味ってことなのかも。

ピラニア

やり手の予審判事ジャンヌ・シャルマン＝キルマンは、公金横領事件の担当になり、巨大企業のトップであるミシェル・ユモーに嫌疑をかける
ジャンヌは、徹底的な検証と関係者への事情聴取を進めるうちに、自分の権力が大きくなっていくことに気がつく
しかし、彼女が事件にのめり込むのに従って、彼女の私生活には崩壊の兆しが見え始め……

2000年に実際に起こった石油会社エルフ事件を基にした社会派ドラマ

入院

しっかりと取り調べ

危険
いろんな問題が

それぞれ
重たいドラマ

人間関係

行方はいかに

シャブロルのミステリからはちょっと外れた作品。

大手会社と政界の癒着による公金横領事件。予審判事のジャンヌ（イザベル・ユペール）は、関係者を一人ずつ追い詰めていこうとするが、命を狙われたり、逆に大きな部屋（予審判事はそれ以上出世のしようがないので）をあてがわれたりする。様々な横槍を入れられるが、ジャンヌはへこたれずに受け流して事件に食いついていく。
しかしボディガードの存在などは、ジャンヌの繊細な夫には耐え難いものだった。二人は別居に追い込まれるが、それでも仕事から離れないジャンヌ。

ユペール様の赤に近いえんじ色のバッグと皮手袋、ブルーグレーのコートの組み合わせがおしゃれ。「彼女はピラニアだ」と噂された次のカットで写る鯉。ジャンヌと妙に気が合う甥の存在も近すぎて不思議。シャブロルの映画の、ヒロインの伴侶は陰鬱で気持ちが不透明だから気持ち悪い。

ジャンヌの身近で事件が起こるが、まだ彼女が諦めない様子で唐突に映画は終わる。ジャンヌに追い詰められる人たちの会話もずっと写しているのに、なんだか何をしているのかわからない。でも殺し屋が出てきてもおかしくないので、ドキドキはする。とにかくユペールを観ていられて満足。