カツマさんの映画レビュー・感想・評価 - 28ページ目

BIUTIFUL ビューティフル(2010年製作の映画)

4.0

『アモーレスペロス』で長編デビューして以来群像劇を連発してきたイニャリトゥ監督が、1人の男の人生に迫る人間ドラマを撮り始めたという意味でとても重要な作品。監督の原点でもあるメキシコに戻ったことからも、>>続きを読む

ある子供(2005年製作の映画)

3.8

タイトルの『ある子供』とは売られていく赤ちゃんのことかと思っていた。だが、このタイトルが指し示す『子供』とは大人になりきれない親のこと。未成熟な『子ども』が親となった時に起こりうる悲劇が悲愴的なまでの>>続きを読む

ニューヨークの巴里夫(2013年製作の映画)

3.9

スパニッシュアパートメントが本当に好きな映画だっただけに続編のロシアンドールズはどうもモヤモヤ。しかし、この完結編がずっと溜まっていた違和感を完全に吹っ飛ばしてくれた!やっぱりロマンデュリスとオドレイ>>続きを読む

みなさん、さようなら(2003年製作の映画)

4.0

この作品の公開当時は『アメリ』『グッバイレーニン』といった単館系ヒット作が次々と生まれ、俄かにミニシアターブームが活気付いていた頃。2003年のアカデミー賞で日本の誇る自信作『たそがれ清兵衛』を打ち破>>続きを読む

ショーシャンクの空に(1994年製作の映画)

4.6

まだ若い頃、自分の中で『希望』という言葉はごく当たり前の言葉の中の一つだったと思う。しかし、歳を重ねるにつれその言葉の力を強く感じるようになった。希望を失ってしまったらそれこそ人生は永久に監獄の中。淡>>続きを読む

ブリーダー(1999年製作の映画)

3.8

今にも発火寸前の火薬庫のようなチリチリと何かが燃えていくような感覚。レフン監督作品に共通する今にも爆発しそうな狂気は、この初期作からすでに確立されていた。監督自身が映画オタクであることを感じさせるよう>>続きを読む

IT/イット “それ”が見えたら、終わり。(2017年製作の映画)

3.6

こんなに見終わった時に疲れていた映画は久しぶりでした。エグいくらいのお化け屋敷映画です。序盤からショック描写を連発し、まるでホラーのEDMかとばかりに次から次へと休む間も無くピエロが登場!しかも絶対に>>続きを読む

ノクターナル・アニマルズ(2016年製作の映画)

3.9

強烈なオープニングは何の意味があったのか。現実と小説との境目はどこなのか。そしてあのエンディングの意味とは。連続するクエスチョン。そこに込められた禍々しい感情。創造するしか、読み解くしかないのだ。不気>>続きを読む

マイヤーウィッツ家の人々(改訂版)(2017年製作の映画)

4.0

Netflixで何観ようかなと眺めていたら、おや、ノアバームバックの新作?しかも超豪華キャストに加えて、カンヌでも大きな話題を呼んだ作品がNetflixオリジナルで配信されていて驚愕!これがまたフラン>>続きを読む

ファンタスティック Mr.FOX(2009年製作の映画)

3.6

恐らく何の前情報が無くてもこの映画がウェスアンダーソンだと分かると思う。例えアニメでも、キツネでも、ウェスアンダーソンのあの可愛い色使いとファンシーな世界観でいっぱい!そもそも3次元をスーパーマリオ的>>続きを読む

君が生きた証(2014年製作の映画)

4.4

最後の歌にこの映画の全てがあった。もう涙が止まらなくて、嗚咽混じりの中で静かにエンドロールが流れた。父と子の通わなかった想いが時間を越えて再び巡り合う。例えそれが一方通行だったとしても。
バンドストー
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ブレードランナー 2049(2017年製作の映画)

4.0

ブレードランナーという伝説的な看板をドゥニ・ヴィルヌーヴという圧倒的個性が完全に上書き!正統派な続編でありながら監督自身の主張がはっきりと打ち出され、リドリー・スコットの名前は遥か遠くへと掻き消された>>続きを読む

ソーシャル・ネットワーク(2010年製作の映画)

3.6

思い返すとFacebookの出現はSNS社会の段階を次のフェーズへと進めた、所謂時代の転換点だったのではないかと思う。TwitterもLINEの一般化もFacebookという概念が成し遂げた功績に他な>>続きを読む

ウソはホントの恋のはじまり(2013年製作の映画)

3.8

昨年カリコレにて上映されていた現代版ラブストーリー!カフェで見かけた可愛いあのコのFacebookから趣味趣向を完全分析。と書くと完全にストーカーか!というレベルの代物だけども、この主人公がなかなかの>>続きを読む

スウィート17モンスター(2016年製作の映画)

3.9

子供から大人への階段の1段目上がるか上がらないかくらい、それが17歳という困った時期。拗らせイケテナイ系に生まれ落ちてしまった辛さはよく分かるぞ、と思いながら妙に主人公に共感して見てしまいました(笑)>>続きを読む

ユージュアル・サスペクツ(1995年製作の映画)

4.0

ベイビードライバーでも健在を印象付けたケビンスペイシーの出世作としても、若きベニチオデルトロが出演していることも、最後の大ドンデン返しが当時非常に話題になったことも、今こうして観ても映画史に刻まれた重>>続きを読む

アトミック・ブロンド(2017年製作の映画)

3.9

シャーリーズセロン主演で送る本格派アクションムービー!そう、間違いなく本格的!冒頭のNew orderから炸裂する80年代の素晴らしきサウンドトラックが、映画の世界観にピタリとハマり、そこにパープルの>>続きを読む

僕のワンダフル・ライフ(2017年製作の映画)

4.2

泣ける泣けると言われている作品ほど案外泣けないものだが、この作品に関しては溢れ出る涙を止められなかった。犬の命は短くて、ご主人様が幸せになる姿を見たくて見たくて仕方ないのに、彼の命は尽きていく。悲しい>>続きを読む

スティーブ・ジョブズ(2015年製作の映画)

4.0

スティーブジョブズの伝記映画と呼ぶにはあまりにも監督と脚本家の個性が漲り過ぎている。3回のプレゼンと会話劇のみで天才の人生を総括した驚異の脚本と、躍動感溢れる展開力とスタイリッシュなカットをバシバシと>>続きを読む

グリーンルーム(2015年製作の映画)

3.6

前半と後半で全く違う映画になってしまうクローズドサークル系のバイオレンスムービー!パニックの第一段階、逃亡の第二段階、そして捨て身の第三段階と、主人公側の心理が凶悪な方向に向かっていくのがこの映画最大>>続きを読む

マイ・ファニー・レディ(2014年製作の映画)

3.5

ペーパームーンの監督ことボグダノヴィッチがお送りするドタバタラブコメディ!監督がウェスアンダーソンの仲介でオーウェンウィルソンと出会ったことで、彼を主演にする前提で陽の目を見たというアナザーストーリー>>続きを読む

ダークナイト ライジング(2012年製作の映画)

3.9

ノーラン映画常連俳優勢揃いとなるバッドマン3部作の大団円を飾る完結編!人間の表と裏の精神世界を登場人物に重ねて描き出した前作とは違い、善と悪の所在が分かりやすくなり、ヒーロー映画らしいエンターテイメン>>続きを読む

ヴィンセントが教えてくれたこと(2014年製作の映画)

4.2

『ドリーム』の監督セオドア・メルフィの長編デビュー作!一作目にしては出来過ぎです。冒頭ST.VINCENTの文字がドカンと出るので、アニークラーク出てるの!?と勘違いしましたが、まさかの原題。
ですが
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ドント・ブリーズ(2016年製作の映画)

3.4

お化けも殺人鬼もミュータントも出てこない!敵は盲目のおっさん!(と犬)。たった1人と1匹相手にこの強盗犯達は何をやってるんだ、と思ったのも束の間、このおっさんがそんじょそこらのエイリアンよりも恐ろしい>>続きを読む

ブルーム・オブ・イエスタディ(2016年製作の映画)

4.0

昨年の東京国際映画祭グランプリ受賞作品!しかもホロコーストを扱っている、となるとどれだけお堅いお話?と思いながら見てみたら、中身は何と濃厚濃密な情熱型ラブストーリーなんです!これ本当にドイツ映画なの?>>続きを読む

ダークナイト(2008年製作の映画)

4.8

完全にヒーロー映画の枠を越えている。ヒーローとは何かという命題を光と闇の中に埋めながら、人間の中に潜む何か邪悪なものを一人の狂人めいた悪役に投影した。ジョーカーは人間の裏の顔をそのまま焼き付けた異形の>>続きを読む

DRAGON ドラゴン(2015年製作の映画)

3.6

ジャケとタイトルと最初の10分の展開から、『そうか、この映画はさてはロシア版ドラゴンクエストだな!?』という自分の予想はこっぱ微塵に打ち砕かれ、美女と野獣すら見ていない自分へのお仕置きとばかりに何と王>>続きを読む

スラムドッグ$ミリオネア(2008年製作の映画)

4.0

当時はダニーボイルがアカデミー賞?と思ったものだけど、いまや彼の代表作としてすっかり定着。主演のデヴ・パテルも『Lion』で一皮向けた演技を披露しすっかり成長。インドの土っぽい空気とお金の匂いを作品全>>続きを読む

パッセンジャー(2016年製作の映画)

3.3

SFサバイバルのような設定に王道のハリウッドラブを融合させるという、奇妙なギャップが炸裂する異端のSFラブストーリー!主演2人のパワーと物語の設定に頼り過ぎたきらいがあり、演出とストーリーテリングとい>>続きを読む

ドリーム(2016年製作の映画)

4.5

ネガティヴをポジティブに変換する、これぞ時代を超えるパワー!アメリカ社会にはびこる差別や、メッセージ性を娯楽映画として解き放つ、見事なバランス感覚を持った作品!勇気ある闘いを成し遂げた彼女達への祝福は>>続きを読む

草原の実験(2014年製作の映画)

4.2

絵画のような画が連続し、大自然の表情をも映し出した美しい色彩に彩られたサイレントムービー。ただ美しいままであってほしかった。牧歌的な風景も、美少女を取り巻く男同士の決闘も日常的な景色であってほしかった>>続きを読む

ピアノ・レッスン(1993年製作の映画)

4.0

凍れる能面がガラスのようにひび割れ、その隙間から封印してきた情熱が蒸気のごとく吹き上がる。青と白のポスターからは想像も出来ないほど、焔の色に燃えさかるラブストーリーだ。ラストには暴走した愛のつぶてが降>>続きを読む

ファミリー・ツリー(2011年製作の映画)

4.2

この映画はラストカットが本当に素敵ですね。家族の理想って、父親の理想って、あの最後のシーンに集約されていたような気がします。家族ドラマの名手アレクサンダーペインは比較的地味なキャスティングが多いイメー>>続きを読む

ラン・ローラ・ラン(1998年製作の映画)

4.1

テクノゴッドKRAFTWERKを生んだ国からお届けするテクノ&ランを素で行く疾走ムービー!ジョジョの奇妙な冒険のボインゴが書いた漫画のようなアニメーションに導かれ、テレビゲームのように上手くいくまで何>>続きを読む

ブレードランナー(1982年製作の映画)

3.8

ついに公開が1ヶ月後に迫ったブレードランナー2049。その前にこちらを予習。今見ると新しい気づきも多く、1982年に制作されたことを考慮するとその革新性をより深く感じることができた。レプリカントに投影>>続きを読む

ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅(2013年製作の映画)

4.2

こんな素敵な親孝行があってもいいよね。モノクロの風景の中をのんびりと進んでいく親と子のロードムービー。まるで今そこに存在しているかのような自然な人物描写とリアルな会話劇。そしてわざと大きめに取ってある>>続きを読む