カツマさんの映画レビュー・感想・評価 - 25ページ目

ブンミおじさんの森(2010年製作の映画)

3.7

そこにあるのは神秘の世界。フラッシュバックする輪廻転生、聖霊の森。この映画は切り取られたアートの連続。まるで名匠が描いた絵画や写真のように、構図と色彩にこだわり抜いた芸術作品だ。昨年、谷中でアピチャッ>>続きを読む

裁かれるは善人のみ(2014年製作の映画)

3.9

どうしてこうなった。例え裕福でなくても、慎ましく暮らしていた普通の人々が、何故こんな凶悪な怪物に呑み込まれなくてはならない?この映画の原題は聖書に登場する魔獣リヴァイアサンだ。海岸に打ち上げられた骨は>>続きを読む

チャップリンからの贈りもの(2014年製作の映画)

3.5

さすがに喜劇王の名は伊達じゃない。チャップリンは墓の中にいてもなお喜劇を生んだのだから。この映画はチャップリンの墓荒らしという実際の犯罪事件を素材にして、チャップリンへの愛とオマージュを目一杯に詰め込>>続きを読む

ホーリー・マウンテン(1973年製作の映画)

4.2

完全にいっぱい食わされた。こんなに意味不明の連続なのに、最後には晴れ晴れとした空を眺めるように霧が晴れていくのだから。カルトの帝王ホドロフスキーの作品の中にあってキングオブカルト、正に頂点に君臨する聖>>続きを読む

M★A★S★H マッシュ(1970年製作の映画)

3.9

少しの毒のつもりが終わってみたら猛毒だった。風刺の闇を、極濃の墨汁をそこらじゅうにブチまけるように一心不乱に撒き散らし、登場人物がふざければふざけるほど戦争を皮肉ることになる、アリ地獄のようなブラック>>続きを読む

ファニーゲーム(1997年製作の映画)

3.5

標的はその冷徹な視線の先にあった。最初は所謂被害者側から見たリアリズムに徹したサイコスリラーなのかと思っていたのだが、その切っ先は次第に方向を変え、不敵な笑みはまるでモナリザのようにこちらに向けられて>>続きを読む

リメンバー・ミー(2017年製作の映画)

3.8

あの世へと旅立った人を忘れたくはない。大切な人は記憶の中でずっと生き続けるんだと、自分に言い聞かせてた。この映画はそんな想いに優しい世界を見せてくれた。もし死者の世界があったら、きっとこんな設定だった>>続きを読む

しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス(2016年製作の映画)

4.3

エンドロールが終わるまで誰一人として席を立つことがなかった。自分に関して言えば、それは涙が拭き終わらなかったから。悲しい涙じゃない。澄んだ限りなく透明色の雫が誰の目にも光っていたのだと思う。
これは一
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パシフィック・リム(2013年製作の映画)

3.8

オタクの夢がハリウッド規模で爆発した、ご存知本格派の怪獣特撮ムービー!続編がついに来月公開ということで前作をまずは鑑賞。
パトレイバー、Gガンダム、エヴァンゲリオン、そして数々の怪獣映画にオマージュと
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ピアニスト(2001年製作の映画)

3.8

吐き気がするほどの純愛映画だった。性欲の寓意をそのまま画面にブチまけたかのような、強烈な自慰行為の産物にも見えた。もはや花火のように弾け飛ぶヌメヌメとした泥色の激情は、ラフレシアのような狂気の華となり>>続きを読む

フルートベール駅で(2013年製作の映画)

4.0

悲劇へと向かう列車。慟哭の終着点が邪悪な口を大きく開けて待っている。こんなにも日常のすぐそばに差別ははびこり、そしてこんなにもあっさりと人の命が奪われてしまう。この物語はアメリカの人種差別の闇は遥か深>>続きを読む

ハローグッバイ(2016年製作の映画)

4.2

10代の頃に戻りたいとは思わない。グループでいれば息が詰まり、一人でいれば友達がいないと思われる。この作品は教室のクラス内にあるその対照的な孤独を、一つの音楽がまるでSNSのような繋がりを生んだ物語。>>続きを読む

フルメタル・ジャケット(1987年製作の映画)

4.4

ローリングストーンズの『黒くぬれ』と共に転落していくエンドロール。全てを塗りつぶす戦争と言う名の黒色は、グシャグシャに人間の精神をも崩壊させていく。この映画は戦争への問題提起というよりも、戦争そのもの>>続きを読む

スティング(1973年製作の映画)

4.2

スコット・ジョプリンの軽快なピアノの調べに乗せて送る、めくるめく一大ぼったくり協奏曲!劇中の登場人物よろしく鑑賞者をも欺く巧みな展開力は見事で、それらを7部構成に分けて、詐欺師の段取りを疑似体験してい>>続きを読む

ヴィジット(2015年製作の映画)

3.8

この映画にはどんな芳香剤も効果はない。数年間、蓋をされ充満し尽くしていたシャマラン臭が爆裂に弾け飛び、画面全体を完全に侵食。そう、かつての『得体の知れないものへの恐怖』をサスペンスタッチで描く一流のB>>続きを読む

エル・スール(1982年製作の映画)

3.9

まるでジョルジュ・ド・ラ・トゥールの絵画の中にいるかのような、煉瓦色の光と漆黒の闇。それは思い出の中へと沈められた父親の記憶。印象的なシーンを絵画のように切り取って、その陰影は戻らない時間を遥か遠くへ>>続きを読む

バリー・リンドン(1975年製作の映画)

3.8

人生とは運命と言う名のレールに導かれる歴史の中の一コマに過ぎないのか。この物語は徒然草の一節、猛き者も遂には滅びぬ、という言葉をある男の人生になぞらえたかのような一大叙事詩だ。怒涛の3時間という大ボリ>>続きを読む

メイド・イン・ホンコン/香港製造 デジタル・リマスター版(1997年製作の映画)

4.0

中国返還前、20年前の香港の空は仄白く、今にも落ちてきそうなほどに頼りない。その曇天の下を刹那澄んだ青色に染めた一度きりの青春時代。ああ、生きていれば良いことがあるだなんて、彼らにとっては何の意味もな>>続きを読む

At the terrace テラスにて(2016年製作の映画)

4.3

デジャヴの連続。いや、それらはもう社会人にとっては日常の連続なのか。これはいわゆる『耐えなくてはならない飲み会。そしてその先へ』。会話が噛み合わないのは能面を貼り付けたうわべだけの関係だから。だが、そ>>続きを読む

アウトサイダー(2018年製作の映画)

3.6

海外作品が日本を描いた場合、そこには架空の島国ジパングが描かれていることが多い。だが、この映画は少なくともその基準はクリアした比較的硬派な極道映画だ。そう、恐らく日本の極道映画の中に海外のスターが混じ>>続きを読む

ブラックパンサー(2018年製作の映画)

3.8

もはやアベンジャーズのスピンオフ作品という枠を大きくはみ出し、今この時代に生まれるべくして生まれた新しいヒーロー映画だろう。現在にはびこる人種問題をひっくり返し、男女の強さの境目を無くし(むしろ女性の>>続きを読む

アナイアレイション -全滅領域-(2017年製作の映画)

3.5

『エクスマキナ』でついに監督デビューを果たしたアレックス・ガーランドの2作目がNetflix限定配信開始!今作でも近未来的SFの世界観と、人間の深層心理へと切り込むストーリーテリングが合体。SFサバイ>>続きを読む

ファントム・オブ・パラダイス(1974年製作の映画)

4.0

堪え切れない悲しみが、血みどろの宴となって狂い咲く!それは狂乱のロックオペラ!オペラ座の怪人を題材にしていながら、若きブライアンデパルマの野心が全編で爆発!ファウストに襲いかかる悲劇という名の劇薬をブ>>続きを読む

地獄に堕ちた勇者ども(1969年製作の映画)

4.0

世の中には遅効性の毒というものがある。かつてドイツ国内に蔓延していたその毒の名前こそが、ナチズム。ナチス時代を描いているにも関わらず、この映画にはヒトラーは肖像画でしか登場しない。霧散するナチズムと言>>続きを読む

ザ・プレイヤー(1992年製作の映画)

3.9

これは巨匠ロバートアルトマンからハリウッドへの脅迫状だ。ハリウッドを馬鹿らしいほどに分かりやすく皮肉っておきながら、その要素を敢えて全てぶち込んで見せるという荒技!劇中でセックスシーンを入れることを皮>>続きを読む

彼の見つめる先に(2014年製作の映画)

4.3

ベルアンドセバスチャンがこんなに素敵に聞こえる映画には、もう二度と出会えないと思った。地味なアルバムのラストにコッソリ仕舞ってあるようなThere's too Much Loveという曲。この曲を主役>>続きを読む

聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア(2017年製作の映画)

3.9

この監督は人間の負の感情を主人公にしたような映画を撮る。人間とはそもそもが醜き心の集合体であり、その化けの皮を剥ぐことに心血を注いでいるかのようだ。だが、悲しいことにこの考え方は、人間の本性の一つの側>>続きを読む

ハッピーエンド(2017年製作の映画)

4.1

人はすぐに『恋人がいれば幸せ』とか『結婚していれば幸せ』とか自分の中の幸福論を他者に押し付けたがる。この映画はそんな一般論という名の固定概念に真っ向からノーを突きつける真のハッピーエンド映画だ。今作で>>続きを読む

若者のすべて(1960年製作の映画)

4.2

この世の中とは優しく寛大な人間を不幸のどん底へと突き落とす、血も涙もない場所なのか。美しい涙の結晶は誰も救うこともできずに、ほろ苦い若者たちのレクイエムが延々と奏でられるばかりだ。南北イタリアの格差と>>続きを読む

イカロス(2017年製作の映画)

3.9

本作は本日のアカデミー賞受賞式でドキュメンタリー部門を見事受賞!取るかな、と思いましたが、やはり取りましたね。興味本意のドーピングドキュメンタリーを撮ろうかと思っていたら、あれよあれよという間に国家規>>続きを読む

ロリータ(1962年製作の映画)

3.6

この映画はロリコン映画という定義を非常に分かりづらくさせてくれる!犯罪臭はかなり薄く、むしろそれよりも異常な執着心と嫉妬心渦巻く、屈折した恋愛観の方が強調されていた。だが、この主人公は間違い無く気持ち>>続きを読む

きっと、いい日が待っている(2016年製作の映画)

4.3

見果てぬ夢が無かったら、この物語は途中で終わってしまってた。最後の最後まで飛べると信じるその想いこそが、彼に一握りの勇気を振り絞らせた。いつ終わるともしれない閉塞感が延々と続き、心の奥底をドリルで抉ら>>続きを読む

シェイプ・オブ・ウォーター(2017年製作の映画)

4.5

あまりにロマンチックなラストカット。エンドロールで目を閉じて少し微笑んでいる自分がいた。
琥珀色の海に沈みゆく赤い靴。いっぱいの青色は緑がかった光と共に、抱きしめ合う2人を包んでいく。この映画はロマン
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ハネムーン・キラーズ(1970年製作の映画)

3.6

恋愛は心の病、などという表現があるけれど、ここまでいくともはやそれは不治の病だ。極限まで膨張した愛は食べ過ぎの肥満体のように肥大化し、そのまま狂気となって爆発した。このアメリカで実際に起きた連続殺人事>>続きを読む

ミュート(2018年製作の映画)

3.4

昨年から大作を連発し出したNetflixが今度はダンカン・ジョーンズ監督作品をドロップ!『月に囚われた男』でお馴染み異色SFの名手である彼が、ブレードランナー的世界観でお送りするラブサスペンス!声を失>>続きを読む

グレイテスト・ショーマン(2017年製作の映画)

4.8

この映画には迸るほどに圧倒的なパワーがある!夢を追う力、コンプレックスを乗り越える力、そして、大切な人を愛する力がいっぱいに詰まっている!押し込められた感情を解放し、魂の歌唱と共に解き放つ!物語はとて>>続きを読む