海さんの映画レビュー・感想・評価 - 7ページ目

アスファルト(2015年製作の映画)

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たった一回きりの夜が、何年も何十年も、わたしを生かしてしまうことに、何と名付ければいいだろう。海から帰るときいつも、一緒に居る誰かに背を向けて走り出したくなる、波にふれるときいつも、「海だ」と言いたく>>続きを読む

ベッドの下(2014年製作の映画)

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どうしてそうなのかわからない物事たちがそこにあることは、口に出さないでいるうちに忘れてしまうのかもしれない。明日もあなたはここに居るだろうか?明日もおなじ目でおなじようにわたしを見るだろうか?そんなす>>続きを読む

天使の涙(1995年製作の映画)

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あなたとわたしの体だけはどんなときだって綺麗だよってそんな嘘みたいなわがままと、だからって恋は触れ合うことじゃなくて触れ合わないことなんだよってそんな夢みたいな関係が、一気に叶ってわたしを満たす、まる>>続きを読む

サマーフィーリング(2016年製作の映画)

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とても大切にしている小説に「ひとは失ったもの以上に何かを愛せない」という文章があって、はじめて読んだときから心から消えない。ひとが誰にも見せずに隠し続けている秘密の一つがそれなんだと思う。去ってしまっ>>続きを読む

バイオハザード(2002年製作の映画)

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原点にして頂点。もうこれ5億回は観ています。まず原作のゲーム版「バイオハザード」の立ち位置について、もともとゲーム界隈ではホラーというのは非常にマニアックなジャンルとされており、それを現在のようにメジ>>続きを読む

アド・アストラ(2019年製作の映画)

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職業柄、ごくたまにではあるけれど、黙々と仕事だけして誰とも話さないまま帰路に着くような日がある。先週もそういう日があった。帰りに映画を借りに行く日だった。帰宅ラッシュで混雑する幹線道路を三十分ほど走る>>続きを読む

ゴーストランドの惨劇(2018年製作の映画)

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パスカル・ロジェ監督、春爛漫の四月生まれというのはさすがに悪質なデマではと疑ってしまうくらいの春とか季節自体からかけ離れた大いなる変態です(天才!)、序盤からキレッキレの世界創造能力が発動されており、>>続きを読む

シャイニング(1980年製作の映画)

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人間を怪物にする場所というのは確かに存在するし、人間を狂わせてしまうには言葉一つで十分だとも思う。それは決して閉塞感や緊張感だけが連れているものじゃない。この世には得体の知れない現象の方がずっと多いの>>続きを読む

シャイニング(1997年製作の映画)

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わたしが個人的に読んでいて気が狂いそうになったのは今のところスティーブン・キングの小説『シャイニング』と長岡建蔵プロデュースのノベルゲーム『さよならを教えて』(R-18なので注意)の二作品だけだ。この>>続きを読む

テイク・ディス・ワルツ(2011年製作の映画)

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早く目が覚めてしまった休日の朝に、もう少し眠りたくて目を閉じて迎える途切れ途切れの微睡み、ちょうどあんなふうにすべてをあいされていたい。夢を見ることも増えたし、電気を消してから長い間眠れない夜も増えた>>続きを読む

クローズ・アップ(1990年製作の映画)

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嘘なんか平気でつけるくらいがいいわ、どうせ続いていく道なら自分で歩けたほうがいい、自分のために泣くくらいだったら誰かのために笑ったほうがずっといい。嘘、いつわり、演技、それなくしてわたしはわたしを表現>>続きを読む

オリーブの林をぬけて(1994年製作の映画)

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『友だちのうちはどこ?』の少年が植木鉢を持って走ってくるシーンでもう感動が抑えられなかった。いろんな場所から集められ、いろんな人の手によって置かれ、いろんな人の腕に抱えられ帰っていく、植木鉢、わたしは>>続きを読む

そして人生はつづく(1992年製作の映画)

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過ぎ去った時間が形になって返却されてくる瞬間が苦手だ。給料明細とか無事故無違反証明書とかそういったもの、以前は年越しや誕生日さえ苦手だった。時間を、大きい区切りで一度終わらせてしまうことで、何か大切な>>続きを読む

桜桃の味(1997年製作の映画)

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中学生の頃に太宰治の『桜桃』に出会った。明るく振る舞いながらも歪み続けた心では密かに自殺を考えている語り手の男は、太宰自身がモデルになっている。冒頭で旧約聖書の「われ山にむかいて目を挙ぐ。」が引用され>>続きを読む

風が吹くまま(1999年製作の映画)

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生き物は温かくて自然は美しくて死とはおそろしくて川は海へと続くであろう、それらに時に驚いて足を止めたい、自分の中に流れている時間をとどめたい、この先を急がなくていいのなら、いくらでもいつまでもこの世を>>続きを読む

友だちのうちはどこ?(1987年製作の映画)

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きっと必要のない人にはまったく必要のない映画だと思う。でも必要な人には語り尽くそうとする唇も止まったまま、驚きのあの一瞬がだらりと続くように、ひたすらに愛するしかない映画だと思う。果てしない感動に飲み>>続きを読む

ワイルドライフ(2018年製作の映画)

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幼いころ、自分の見たもの聞いたものはいつまでも母と共有し続けていくものだと思っていた。帰り道に一人で見た燃えるような夕焼け、バスの中から友達と見たおだやかな海、すぐに母に伝えることも帰ってから言葉で表>>続きを読む

COLD WAR あの歌、2つの心(2018年製作の映画)

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用意された答えはいつでも冷たい色をしているものだけれど、昨夜のあいだ降り続けた雨を運命の仕業だと思いたい人々にとっては、ひどくやさしい色をしているように見えるだろう。願いは簡単に世界の色を変える、青い>>続きを読む

この世界の(さらにいくつもの)片隅に(2019年製作の映画)

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呉の海沿い、国道31号線をずぅっと行きよったら、おっきい公園が見えてきますが、なんであんなおっきいんかいうと、昔はあそこ呉ポートピアランドいう遊園地じゃったけえなんです。ちょうどわたしが生まれた年に閉>>続きを読む

ホール・イン・ザ・グラウンド(2019年製作の映画)

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自分は今得体の知れない暗闇の中で恐怖を味わっているんだーーっと思ってたら急になんか土臭くなってきてよく目を凝らしたら土の中だった。別に暗闇の正体が土であろうと大量の猫であろうとかまわないけれど、でも絶>>続きを読む

I Am Easy To Find(原題)(2019年製作の映画)

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わたしはとにかく動物が好きな子供だったけれど、とくにアーネスト・トンプソン・シートンの動物記が大好きだった。ロボ、銀狐、ネズミとガラガラ蛇、ギザ耳うさぎ、サンドヒルの牡鹿、裏街の野良猫、ドミノ、クルー>>続きを読む

クリスマスのその夜に(2010年製作の映画)

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今日は寒かった。そのうえ眠くて、午後一に、午前中の記憶がほとんど飛んでることに気づいた。窒息で死ぬまでには15分くらいかかってしまうからできるなら衝撃的に死にたいですねって避難訓練の時に会社の人が言っ>>続きを読む

マッド・ガンズ(2014年製作の映画)

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わたしの住んでいる町は、本屋すらないほどのゴーストタウンなんだけど、それでも高校生だった頃は、歩いて行ける距離に古いレンタルショップがあった。そこの店長の趣味は結構変わっていて、表彰されていたり世間で>>続きを読む

ファントム・スレッド(2017年製作の映画)

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靴下の柄ひとつで嫌いになった人が居て、上着の脱ぎ方ひとつで好きになった人が居る。時間を忘れるほど気が遠くなるほど、引っ張り出した記憶と画面に流れる映像を行ったり来たりしていた。佇まいを思い描くだけで気>>続きを読む

恋する惑星(1994年製作の映画)

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誰かと比べたわけじゃないけれど、わたしは本当によく眠るひとだと思う。布団が肌に触れるのが好きで、冬でもときどき下着で寝て風邪をひいてしまう。わかってるのに今までに何度もやってる。そういう自分のどうしよ>>続きを読む

ANIARA アニアーラ(2018年製作の映画)

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ひたすらに死んでいくだけのいきもの。デイジー、ハグロトンボ、羊雲、ショッピングモール、雨の日の匂い、ジュビリー、ケーキに立てた蝋燭、遮光カーテン。わすれゆき、夢にみる。失われたものにすがりついて目をふ>>続きを読む

愛がなんだ(2018年製作の映画)

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一人で部屋に居ると、自分だけの幸福が満ちてくる。あれを好きなひとと共有できたらいいのに、と、わたしの幸福に包まれてる時のあなたの顔が見てみたいと、思うけれど、でもきっと本当にそれは、いつも、難しいんだ>>続きを読む

不完全なふたり(2005年製作の映画)

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去年のお盆休み、長崎までふらっと旅をして、中華街を歩いていた時だった。四人兄弟がおばあちゃんと一緒にわたしの前を歩いていて、一番上のお兄ちゃんだけ中学生くらいで、下の子たちはみんな小さかった。そのうち>>続きを読む

ウトヤ島、7月22日(2018年製作の映画)

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どんなことでも良い。早く家に帰って飼い猫を抱きしめたいとか、今朝ママに伝え忘れた「ありがとう」を伝えたいとか、恋している相手に好きって言ってみたいとか、人の死や苦悩や後悔にはとても見合わなく思えるよう>>続きを読む

トリコロール/赤の愛(1994年製作の映画)

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歳の離れた人に愛を告白されたことが今までに二度ある。一度目は母よりは歳下の女性、二度目は祖父よりも歳上の男性だった。二人目の方は職場で知り合った方で、よく本や花の話をしていた。彼が定年退職してから間も>>続きを読む

トリコロール/白の愛(1994年製作の映画)

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手に入らないと思うほど欲しくて愛しい。すれ違いさえ上手くできず、衝突するか絡まるかしかできないふたり、完璧な形をした人間なんかこの世に自分だけ居ればいいのになぜ他人と眠る時それを求めてしまう。自分が可>>続きを読む

トリコロール/青の愛(1993年製作の映画)

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面影。信仰も希望もかけて、縋り付くべきだった一つの人生。ふと顔を上げれば、あなたってこんな顔だったかな。見知らぬ顔からよく知った声が聴こえたり、よく知る顔から聴きなれぬことばが飛び出したり、遠くて近い>>続きを読む

CRESCENT 冷たい海の底(2017年製作の映画)

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「海ってなあに」「世界の端っこよ」ぽつりぽつりと心の表面に浮かんでくる切なさは、果たしてさびしさかぬくもりか。母なる海と、砂浜で波を待つ子。あなたの頬と同じ鴇色をした記憶の中で、ゆっくりと奪われていく>>続きを読む

サスペリア(2018年製作の映画)

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自分が女であるというただそれだけのことのためにひどく苦しむ時期があり、そしてそれを乗り越えないと、大人にはなれない。誰もがそうかは分からないけれど、少なくともわたしはそうだった。自分を待っている未来や>>続きを読む

夏至(2000年製作の映画)

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洗濯物を干して、お風呂の栓を抜いて、朝起きたくないのに起きて、仕事に行って、泣きたいのに笑って、そういうことを毎日同じように繰り返しながら、毎日同じひとを愛している、というのは、言い表せはしないほどに>>続きを読む

彼岸花(1958年製作の映画)

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祖母の家で知った。横になってうとうとしていたわたしの姿が、ひとには眠ってるように見えてたんだろう。ぽつりと祖母が「きれいな体ねェ。死んだおばあちゃんもこんなやったねェ」と言った。父方の祖母。母をひどく>>続きを読む