手緩いコメディ演出の中に辛辣な人間描写がたっぷり盛り込まれており、引き算すると悪意が見えてくる怖い作品。登場人物全員が内心に怒りと不満を抱え、狭い空間の中で毒づき合う悪循環に当てられた。
終盤、南原>>続きを読む
終盤、現実と創作が入り乱れていく映画的な構成で、意外に見応えがあった。
人種差別的なセリフが散見されるのが気になったものの、作中でいい思いをしているのは明らかに虐げられた人々で、アメリカの崩落をそこは>>続きを読む
ややこしめな脚本の、偏執的殺戮サスペンス。期待を裏切らぬ監督の安定感は、過激さを少し推し進めたヒッチコックという感じ。
ゆるふわパーマにアイシャドウキツめの80年代美女たちが、絵柄も美しく血みどろにな>>続きを読む
ホラーかと思って観たら、シリアル・キラーもののサスペンスではないか。それも超一級の面白さ。
ファンタジックな要素にこだわった『サスペリア』よりずっと地に足が着いていて、文句なく楽しめる。
脚本は重層>>続きを読む
4~5個のセットとロケで回す低予算映画。『ルポールのドラァグレース』で名を上げたドラァグクイーンが複数登場する。
「ノンケの世界でさまざまな障害に出合ったゲイが、最後に自己実現する」という物語の『逆>>続きを読む
70年代が全盛期のロックアーティストの作品って、個人的に最も退屈だと思うため(特にアレンジ)、エルトン・ジョンの曲はほとんど知らない。
ただ一時代を築いたゲイSSWの伝記映画だったので、一応観ておくべ>>続きを読む
高所ロケから始まる撮影にワクワク。
黒澤映画からの影響が感じられる無頼漢な主人公、そして思い切り憎める犯人像が良い。
展開も凝っていて、カタルシスが要所にあるし、エンタメサスペンスとして一級品。
セックスに飽き足らず、人間の尊厳を売買する闇商売の存在を提示。
それなりに容姿端麗な主演女優が監督と脚本を担当し、実話ベースを謳っているので、本人の体験談かもしれない。
あまり予算はなさそうで、ラフ>>続きを読む
子供の無責任ではなく、親に差した魔を描いているところがユニーク。サイコホラーとして観進めた。
登場人物たちの本心を隠すかのように暗く、表情の判別が付きにくい照明が多用されている。
公開時は今ほど選択肢がなかったせいで『恐怖映画の代表的作品』に祭り上げられたままなのだろうが、内容はどちらかというとダークファンタジーの部類で、全然怖くない。
色彩感覚が非常にポップなのがうれしく、セ>>続きを読む
ちょうど半分だけ照明が当たった冒頭のガエルが象徴するように、光を際立たせる暗闇が印象的な作品。
セピアの色調から一転カラーになる場面や、ホルマリンに漂う死体の描写も美しく、品格がある。高い志を以て撮影>>続きを読む
家族の愛を描くにしても、崩壊を描くにしてもやや極端になるのが映画の特徴だが、本作は後者で会話劇なだけに、余計重い(しかもクローズアップが多い)。「ウチは家族仲が良い」という人が観たら理解不能で、不快な>>続きを読む
LGBT運動の先鋒という印象があるアメリカでも「エンタメ業界はまだまだ白人ヘテロ男主導で、障害だらけ」という現状が、よくわかる作品。
トドリックの音楽性はR&Bだが、セクシュアリティを前面に押し出す>>続きを読む
サスペンス作品ではあるが終始コミック調のシュールなユーモアが付きまとい、脚本もどんどん迷走していくオルタナティヴな作風。
プロフェッションなど主人公の背景をもう少し明確にしておけば、観進めやすかったの>>続きを読む
さらっと魅せる佳作だが、母娘ものというテーマと、濃厚なブラック・ユーモアの塩梅が明らかにアルモドヴァルの影響下にある作品。
主演のブランカ・スアレス以下、マリサ・パレデス、ロッシ・デ・パロマとアルモ>>続きを読む
戦後激動の時代を生き抜いた、フィンランドのゲイ・アーティストの伝記映画。
ソ連とドイツの狭間で苦戦を強いられてきた歴史を持つ、フィンランド。
北欧に属す同国だけにリベラルなのかと思いきや、戦後約30>>続きを読む
自らのセクシュアリティに直面し、葛藤する少年の姿を描く青春映画。
決して目新しい主題ではないが、脚本/演出には予想を裏切る部分も多いので、デティールを確認しながらの鑑賞となった。
アメリカを舞台にしたフランス映画。
バディ映画のように見せておきながら、ふたりの男の間に抜き差しならぬ緊張感を漂わせ、最後まで飽きさせない。
地下鉄でのゲリラロケ撮影、レコーディング風景で女性ジャズ>>続きを読む
1の終わり方だけは不気味で笑ったが、後は「何これ」という感じ。
私的な出来事を反映させるのは結構だが、作品として昇華しきれていないようではしょうがない。
終盤、真情を引用セリフで表現するところなんざ愚>>続きを読む
「研ぎ澄まされた神経の先で作品を生み出す芸術家の配偶者となった者が、精神を病む」といった物語にはドラマがあるが、本作はその逆。
「普通の女が芸術家の配偶者となり苦しんだ結果、関係の平等を実現するため、>>続きを読む
おどろおどろしい性が渦巻く横溝ホラーと、爽やかなレズビアン映画の融合という感じだが、エンタメ要素も強く、終始楽しんで鑑賞できる。
特にレズビアンの純愛が際立つ第二部が秀逸で『アデル、ブルーは熱い色』>>続きを読む
基本的に悲劇なのだが、別の人生を生きる『変身モノ』としてのスリルや高揚感が、音楽などへ微妙に反映されている。
所詮メロドラマというにはあまりに起伏が激しく、ハリウッド古典のやり過ぎ感が、濃厚に漂ってい>>続きを読む
整形ロボと化し、他人を蹴落としながら自身も崩壊するドロドロのミスコン話かと思いきや、居直りをベイシスとする醒めた視点と、シニカルなユーモア精神が随所に発揮されており、トータルの印象は「コメディ」と呼ん>>続きを読む
劇中歌(日本語のスウィングジャズ)のようなたどたどしさやいびつさはあるものの、スピーディな勢いと若さ、そしてコミック調ユーモア感覚でねじ伏せる快作。
脚本もしっかりしており、ファム・ファタールの意外>>続きを読む
20年前にアン・リーが『推手』や『ウエディング・バンケット』で描いていたテーマのゲイ版/大陸版で、フィクションではなくドキュメンタリー。
40分という短いランニングタイムから、現代中国人気質の一端を確>>続きを読む
狂言回しの少年を追う前半は喜劇的で、よく観ると悲惨なエピソードもサラリと流していくが、クライマックスは非常にハードボイルド。
天賦の美を備えた女性を襲う受難の激しさには思わず目を覆いたくなるが、清濁の>>続きを読む
『ルポールのドラァグレース』シーズン6の覇者、ビアンカ・デル・リオを主演女優/男優に据えたコメディで、ほかにアリッサ・エドワーズ、シャンジェラ、ウィリアム・ベリらの人気クイーン、そして御大ルポールも登>>続きを読む
50年代ならジュディ・ガーランドが主演を務めていそうな米南部田舎町の群像劇だが、きついブラックユーモアや現代にも通じるオルタナティヴなシニシズムが横溢しており、クラシックとは言え『80年代後半のヒット>>続きを読む
重要な場面ではほぼ雨が降っていて、その湿り気がミステリアスな雰囲気を倍増させているのは良いのだが、登場人物の相関があまりにご都合主義的で、ドラマが上滑りしていく感じ。高名なジョン・グリシャムの書き下ろ>>続きを読む
鑑賞前の予想はよろめきメロドラマだったが、観進めるに従い「ソフトコアポルノ?」という印象に変わり、終盤はパゾリーニばりのハードボイルドな脚本に、口あんぐり。
モリコーネの複数曲にヴォーカルを乗せるなど>>続きを読む
フォックスで大作扱いにも関わらず、技術に頼ることなく脚本重視で進む展開は、ジェンダーロールやLGBTを扱った作品であればこそだ。
驚きなのはこれが史実であること。神聖なスポーツの世界に悪趣味なエンター>>続きを読む