けんたろうさんの映画レビュー・感想・評価 - 6ページ目

母を恋はずや(1934年製作の映画)

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お母ちやんが其んなにいゝ人でないおはなし。


身近な人が亡くなる其の喪失の切なき感が、画に揺蕩ふ。然うして其の場に生くる人々の図。嗚呼、涙が零る。兄弟の揃うた動きは可笑しく、愛する者が為めの我慢は美
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淑女と髭(1931年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

リンカアンが不憫なおはなし。


もう全員間抜けである。

大体、冒頭の剣道大会からして既にをかしい。
真面目な大会のはずなのに、披露せらるゝは、不意打ちの嵐。真剣な奴が、誰れ一人として居ない。其れで
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その夜の妻(1930年製作の映画)

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もうピストルさへもが愛ほしいおはなし。


多用せらるゝパンが惜しきまでに、カツトの繋がりが総べてを物語る。嗚呼、映画よ!
成るほど、活弁も音楽も無く、何んにも聞こえぬ鑑賞ではある。けれども、此の映像
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落第はしたけれど(1930年製作の映画)

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「~けれど」シリイズのおふたつめ。


嗚呼、大学生の悪行が観てゐて楽しい。
卒業した者の「大学に戻りたいなぁ」には笑うてしまうた。
たゞ、勉強を教へてくれた者への、恩義が故の負ひ目は少しく切なし。
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朗かに歩め(1930年製作の映画)

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真面目な男が一番格好いゝおはなし。


前半が余まりにもダサい。然うして腹が立つほど詰まらない。

成るほど、笑ひを起こさんとする場面は在る。彼れらの揃うた動きは、屹度可笑しきものであるとも思ふ。然し
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東京の女(1933年製作の映画)

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貧しくも美しき人々にどうか光りを。


嗚呼、尋常ならざる心の有り様をも、強いて強いて身内に仕舞ひ込まんとする、其の強さよ。然うして其の美しさよ。断言しよう。最も辛いのは此のひとである。だのに、精神の
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大学は出たけれど(1929年製作の映画)

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「~けれど」シリイズのおひとつめ。


母を想うて噓を附きたる其の痩せ我慢の、何んと無様で美しきことか! 加へて、安き職を断る其の下らぬ矜持の、何んと莫迦で人間なことか! 嗚呼、中々職に有り就けぬ若者
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カルメンという名の女(1983年製作の映画)

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波とバイオリンとが織りなす抒情詩。


夢への逃避。浪漫への誘なひ。
自然と人工とが調和せし、優しく豊かな表現に恍惚とす。
而して当人らにしか感ぜられぬ愉悦。動ぜぬ周囲は少しく可笑し。

果たして独り
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グラインドハウス(2007年製作の映画)

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Funky Fanfareが耳から離れなくなるおはなし。


「プラネット・テラー」
主人公の妖艶さ、各人の滑稽さ、然うしてビシビシ決まる画と音楽。詰まるところ、セクシイでユウモラスでクウル! 嗚呼、
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シン・ウルトラマン(2022年製作の映画)

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無力な人類の力を尚も信じた特撮の名作、『ウルトラマン』を、独自の解釈に依り再構成した一作……とか何んとか纏めようと思うたが、此れは違ふ! ウルトラマンオタクがウルトラマンオタクウルトラマンオタクしてウ>>続きを読む

時の翼にのって/ファラウェイ・ソー・クロース!(1993年製作の映画)

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よく駅で見かける、独り言が煩いおつさんのおはなし。


温かき眼差しで、壁崩壊後のベルリン市民を見守るカシエル。彼れは抱擁するかの如く、人々の心に耳を傾ける。
ときに緩慢に、ときに急激に。場所をも瞬時
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第三世代(1979年製作の映画)

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わ、解らぬ……


経済や家庭に依る束縛から逃れんとした、理想なき犯罪者たち。理想が無いから秩序も無い。其んな遊び半分のテロリズム(?)に走る彼れらには、云ひ知れぬ不快感を覚ゆ。だからこそ、彼れらの破
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都市とモードのビデオノート(1989年製作の映画)

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さすがにタイトルの語呂が良すぎるおはなし。


──絵画の複製が模倣と見做さるゝのに対して、フイルムの複製は模倣と見做されず。世界の主流が絵画から映像へ遷移したことで、複製は最早や模倣ではなくなつた。
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勝手にしやがれ 4Kレストア版(1960年製作の映画)

5.0

劇場が喫煙可であった時代に観たかったおはなし。


臭くもなく鈍くもなく、軽妙に、洒脱に、銀幕の上を躍動するベルモンド。車に於いても家に於いても一箇に固執することが無く、又た軽快なる一挙手一投足が中途
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ストーカー(1979年製作の映画)

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三人のハゲが、お部屋に向かうて彷徨ふおはなし。


ストーカー、ストーカー、ストーカー……成るほど女を尾けて、部屋を突き止め、留守の間にこっそり忍び込み、監視カメラや盗聴器なんかを見えない処に設置して
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惑星ソラリス(1972年製作の映画)

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日本が兎に角やかましいおはなし。


科学的な正しさか、其れとも道徳的な正しさか。人間ではない組織を有するが、然し人間の心をも有した其の存在は、本当に人間でないと云へようか。終はらぬ議論。果たして、人
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突貫小僧(1929年製作の映画)

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段々悪党が可哀想になつてくるおはなし。


悪ガキの純粋さと、人攫ひの小悪党ぶりが愉快な掛け合ひを生んでゐる。手こずる様は非常に可笑しい。警官も亦たいゝ処に居る。本当に面白い。
親方との掛け合ひも亦た
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アンドレイ・ルブリョフ 動乱そして沈黙(第一部) 試練そして復活(第二部)(1969年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

馬が三時間かけて立ち上がるおはなし。


色慾に塗れしヌウヂスト達から拘束を受けたり、権力争ひに巻き込まれて凄惨な殺戮や拷問の場に居合はせたり、救けようとしてゐるのに逆に憎悪の目を向けられたりと、随分
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ことの次第(1981年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

おはなし?


金の工面が巧くゆかずに、難航する映画製作。フイルムも底を尽きて、停止する映画制作。頭を抱へる者が在れば、休息を楽しむ者も在り。諦めの生む可笑しさが在れば、マンネリの生む詰まらなさも在り
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エンドレス・ポエトリー(2016年製作の映画)

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ちんちんとおっぱいが荒れ狂ふおはなし。


おゝ……表現が楽しい! まさかホドロフスキイが此んなにも愉快でユウモラスな表現をするなんて!
とは云へ、彼れの世界観が失はれたわけではない。寧ろ特有の"異形
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まわり道(1974年製作の映画)

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抑〻、お母ちやんの頭が狂つてるおはなし。


不穏。とにかく不穏。音楽も表情も、迚もロオドムウビイだとは思はれぬ其れ。果ては血である。若しや、旅人の感ずる自由が故の孤独、不安を表現してゐるのだらうか。
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東京画(1985年製作の映画)

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無のおはなし。


パチンコに耽る男たちを真剣な眼差しで見つめつゞけるヴェンダース。食品サンプル職人は自らの弁当とサンプルとを間違へて喰うたりしないのかと勘繰るヴェンダース。タクシーやホテルのテレビ映
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シェルブールの雨傘(1963年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

アヌーク・エーメに振られた男がカトリーヌ・ドヌーヴにプロポーズするおはなし。


ジャック・ドゥミの色彩感覚とミシェル・ルグランの日常感覚とに彩られたワンシーンワンシーンがとにかく素敵。心が少しく華や
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ライムライト(1952年製作の映画)

5.0

このレビューはネタバレを含みます

人生は惨めで辛い。だが、美しい。
文字どほり人生を懸けて人々を楽しませてきたコメデイアンの、理智と情緒と経験とに富んだ、含蓄の甚だしき、迚も軽くはない一つひとつの珠玉の言葉。喜劇論から、観客論、群衆論
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さらば、愛の言葉よ(2014年製作の映画)

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陰毛に言葉が絡まるおはなし。


人、犬、木、葉、電車、車、船、自転車、其れからスロウ・モウシヨンと繰り返しとモンテイジ。

告白しよう。始めは、訳の解らぬシインが乱雑に繋がつただけの、纏りなどいふ物
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ベスト・キッド(2010年製作の映画)

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白人の友達がいつのまにか消えるおはなし。


多分初めて観たのは、もう十年以上前。内容なんて殆ど憶えてゐなかった。其んななかでの、久しぶりの観賞だったんだけれども……いやぁいゝなぁ。
無駄な台詞も無く
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光りの墓(2015年製作の映画)

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眠らずには居られないおはなし。


現実と夢想の狭間にて、美と諧謔が同居せし一枚の画。美しき構図のなかで営まるゝオヽトマチスム。詰まるところ、ユウモラス。
自然だけではなく、人工物も亦た美しく描かんと
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THE BATMAN-ザ・バットマンー(2022年製作の映画)

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ジョーの子産み女が峰不二子に成って帰ってくるおはなし。


何の画を取っても美しい。静も動も、とにかく画がキマってゐる。人物の位置、姿勢、背景、振る舞ひ。バットマンの法外な強さが強烈に見ゆるアクション
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真昼の不思議な物体(2000年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

真昼の不思議なおはなし。


始めはナレーション有りきのスタイルに少しく戸惑うてしまった。アピチャッポン映画と云へば、皆な、ノイズなどが一切なく静かな映像で語りかけてくるものだとばかり思うてゐたのだ。
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フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊(2021年製作の映画)

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ウエス・アンダアソン、愈〻遣りたい放題のおはなし。


圧倒的な情報量を帯びた一つひとつの画と、随所に散りばめられたユウモアの数々とが、多幸感を覚えさす。少なき表情のうちに見ゆる情緒が心に染み渡る。
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モービウス(2022年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

幼馴染の顔がホラーのおはなし。


幼馴染の親友が敵に成るといふのが先づ面白い。
互ひに対を為す存在と相戦ふことに成るのはヒーロー映画第一作の典型と云へようが、然し此の典型なくしてヒーロー映画は成立せ
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ルパン三世 プリズン・オブ・ザ・パスト(2019年製作の映画)

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ロレンサ所長が可愛いおはなし。


何んだかいゝ絵だ。ちょっと初期のルパンを思はせらる。プロットも好きだ。素敵なキャラクターが揃ってゐる。本筋の裏で進行するメインキャストの関係性の描写もとにかく好い。
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コーダ あいのうた(2021年製作の映画)

5.0

アメリカ出身のジョン・カーニーが作った『晩春』。


周りの家族とは異なる、云ふなれば変な家族のもとに産まれた普通の子供の物語は、探せば割り合ひ見つかるもの。本作も其の典型に多分に沿うてゐるので、物語
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鹿の王 ユナと約束の旅(2020年製作の映画)

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肩幅が異常すぎて、生きる生きないどころではないおはなし。


ものゝけ姫は神話に成った。
本作が二番煎じなわけではない。寧ろ(何んだかをかしな表現に成ってしまふが)『もののけ姫』が一番煎じに成ってしま
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幕末太陽傳(1957年製作の映画)

5.0

このレビューはネタバレを含みます

ひょろっこい石原裕次郎に、最後まで違和感が有るおはなし。


何が有っても、彼の手此の手でするり〳〵と舞ふやうに切り抜けてしまふ軽妙洒脱な居残り佐平次、通称ゐのさん。其のコミカルな手の動き脚の動き、兎
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