茶一郎さんの映画レビュー・感想・評価 - 27ページ目

マクベス(2015年製作の映画)

3.6

 言わずと知れたシェイクスピアの「マクベス」の映画化だが、原作の内容を知っている人は今作の冒頭で少しの、だが実は大きな改変に驚くだろう。
悲劇、悲劇と言うが、あの「スノータウン」でデビューしたジャステ
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シリアスマン(2009年製作の映画)

4.3

『 私たちはユダヤ人 』

 いつだって教えを請うことができる、そんな人たちのお話。主人公を徹底的なまでに、冷たく追い詰める。まさに『ジーザス・クライスト!』な不条理ブラックコメディ。
このユダヤ人的
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蜘蛛巣城(1957年製作の映画)

4.4


 何やら遠くにそびえ立つ巨大な影。あたり一面の霧が晴れると、それは蜘蛛巣城だった。
クロサワ時代劇版「マクベス」は、パッケージの三船敏郎の顔芸があまりにも有名な一本。壮大なスケールの下でのサスペンス
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カルテル・ランド(2015年製作の映画)

4.1

 映画が始まると、いきなり麻薬を精製している現場への潜入取材から始まる。ハニーハントのように麻薬という巣からなる金を求め、それに手段を選ばない麻薬カルテル。政府、軍、警察は癒着だらけ『もう我慢ならない>>続きを読む

ヴィクトリア(2015年製作の映画)

4.0

『 太陽に近づきすぎた女神は 』

 クラブで踊る女性、そのクラブの照明が点滅するとスクリーンの光で劇場もピカピカ光り出す。クラブを出る。そこは深夜のベルリン。きっと映画が終わる頃には夜が明けているん
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追憶(1973年製作の映画)

3.5

『 思い出は美しいものだけれど 』

 第二次世界対戦下、学生運動に没頭するケイティーとノン・ポリティカルだが優等生ハベル(ロバート・レッドフォード)とのラブロマンス。ハリウッドとアカ狩りとの関係、随
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皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇(2013年製作の映画)

4.1

『 これがここでの現実 それは否定できない 』

 祖国が地獄になっても生まれ育った町を愛し続ける警察官と、暴力を美化、ギャングを英雄化しかねない歌を歌う男との物語。メキシコ麻薬戦争直下、最も治安の悪
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マッチポイント(2005年製作の映画)

3.8

『 ウディ・アレンと罪と罰 』

 ウディ・アレン流「罪と罰」、主人公も劇中で「ドフトエフスキー入門」を嗜む。内容は、ありきたりな昼ドラ的ドロドロの三角関係なのだが、映像美、ダイアログの軽やかさ、特に
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スノータウン(2011年製作の映画)

3.7

『 最近、母親にできた彼氏の様子がちょっとおかしいんだが。 』

 走る車、その窓ガラス越しの曇り空をカメラが捉える。何か嫌な予感がするなぁと思うと、予感は的中。そして、劇中、この曇り空が晴れることは
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ラストエンペラー(1987年製作の映画)

4.4

『 貴族の〜お生涯〜 』

 皇帝が住まう紫禁城、彼に仕える大勢の家臣たちの整列。スクリーンに映るのは、めくりめく雅な清朝の世界。
最後の皇帝の3歳での即位から始まる高貴で華麗な生活の様子は、その全て
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わんわん物語(1955年製作の映画)

3.9

『 (∪^ω^)わんわん 』

 動物の外見的な個体差を現実の社会での人種の異なりに置き換えた3DCGアニメ「ズートピア」(2016)。その作品の解説で、映画評論家の町山智浩氏が、今作「わんわん物語」
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旅情(1955年製作の映画)

3.7

『そうだヴェニス、行こう 』

 明らかに婚期を逃したであろう中年女性の主人公が『奇跡』を求め、ヴェネチアに一人旅。小さい頃に見た、劇場版ポケットモンスターの「水の都の護神」を思わず記憶の引き出しの奥
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オンリー・ゴッド(2013年製作の映画)

4.1

『 おれはジャイアン ガキ大将 』

 裁きを下したら必ずカラオケで歌う。
ゆっくり、のっしり、じんわりと歩く登場人物。明らかに現実の時間90分より長い鑑賞時間は『レフン時間』なるもの。監督ニコラス・
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テラフォーマーズ(2016年製作の映画)

1.1

『 三池崇史の告発 』

 酷い、酷すぎる。最大限に低く設定した期待値を大きく下回る内容。何なんだ?一体、なんなんだこれは。監督は、本当にあの「ガッチャマン」の製作を賢明な判断で回避した三池崇史なのか
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ちはやふる 下の句(2016年製作の映画)

3.6

『 個人団体戦 』

 また、瑞沢高校競技かるた部のアイツらが帰ってきた!前作のチームモノと打って変わり、千早がクイーンに挑戦する個人戦、だけどチーム戦。
『何を言っているのか わからねーと思うが』こ
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シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ(2016年製作の映画)

4.4

『 みんなケンカはやめてください! 』

 マーベル・シネマティックユニバース(MCU)ちゃん、「アベンジャーズ」からお付き合いして早4年弱。前のデートのポリティカル・サスペンス、スペースオペラ、ファ
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アイアムアヒーロー(2015年製作の映画)

3.6

『 何で普通の人になっちゃうかなぁ〜 』

 何かと『邦画なのに』『邦画だけど』と一言添えて語るのが礼儀になってしまっているようで。それもそのはず、大手製作にも関わらず、ゴア・人体破壊描写から逃げない
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ワールド・ウォーZ(2013年製作の映画)

3.2

『 ナニコレ珍百景Z 』

 頑張るブラピお父さんが、世界を行き当たりばったりに飛び回る史上最高のお金がかかったゾンビ映画。この手のジャンル映画の参入障壁となりうる(慣れれば見所なのでしょうが……)直
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オマールの壁(2013年製作の映画)

3.9

『 オマールとそり立つ壁 』

 パレスチナとイスラエル。街の中にある屋根よりも高い高い『壁』、主人公はSAUKE
ばりにロープでこの壁をつたい、向こう側に行く。この壁はモノとモノを分離するのではなく
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ドライヴ(2011年製作の映画)

4.8

『 教習所一発合格 』

 制限速度超えの劇場映画体験3回目をマスターリクエストで。
電子的なサウンドの中、夜のロサンゼルスの街を走る。
現代版「シェーン」として見事、かつ奇妙なアップデートの達成に心
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シェーン(1953年製作の映画)

4.4

『 シェーン! カムバーック! 』

 と、もはやパロディの対象にもなっているセリフが有名な、西部劇の傑作中の傑作。誰もが一度は見たことのある神話的なストーリーの元ネタとして、その名を映画史に刻んでい
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ズートピア(2016年製作の映画)

4.1

『 しまじろうはトリッピーを食うのか 』

 食物連鎖は死んだ。ココは、草食動物と肉食動物が共存する『なりたいものになれる』ズートピア。(ただし、猿と魚と鳥はいない)
この世界設計を冒頭の劇でスマート
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太陽(2016年製作の映画)

4.2

『 完全昼夜逆転生活 』

 夜にしか生きられない新人類『ノクス』と昼に生きる旧人類『キュリオ』、もしも人間がこの二つに分けられたら……
ディストピア『SF』と、入江悠監督的と言うべき『青春映画』の二
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パラダイス・ナウ(2005年製作の映画)

3.7

「パラダイスなう」

 いわゆるパレスチナ問題。パレスチナに住み、常にイスラエル占領に不満を感じている若者の自爆テロを題材にした作品。
……と、一言で『自爆テロを題材』と言ってしまうと大変語弊があり、
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未来は今(1994年製作の映画)

3.4

『 ○ 』

大学を卒業したばかりのバーンズは就職難の中、やっとハッドサッカー社の郵便室の職を得た。夢と希望に満ちた入社日当日、今まさに会社に入ろうとする時、重役室では社長が飛び降り自殺を始めている。
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ティファニーで朝食を(1961年製作の映画)

4.1

『その女、夢追い人につき』

 ティファニーの店の前でパンを頬張るこの女。まるで、彼女が飼っている『名無しのネコ』のように、何にも縛られないようにとワガママで自由気ままなヤツなのだが、これが宇宙最強の
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クレヨンしんちゃん 爆睡!ユメミーワールド大突撃(2016年製作の映画)

3.8

『 好きなもの見ていいじゃない。夢の中なんだから 』

 ひろしが会社ヒーローに!みさえがホスト狂わせに!しんちゃんがナナコお姉さんとイチャイチャしている!
『夢』から始まり、これからの『夢』で終わる
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スポットライト 世紀のスクープ(2015年製作の映画)

4.1

『 バチカンの陰謀 』

 アメリカの奥の奥に潜むタブー中のタブー、キリスト教、カトリックという巨大すぎる権力に挑んだ新聞記者チームのお話。
 
 多くの人が指摘するように今作を『ジャーナリズム』につ
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スリーパー(1973年製作の映画)

3.4

『 すみません!200年遅刻しました 』

 200年間冷凍睡眠され、目覚めたそこは全体主義によって統率された2173年のアメリカだった。
その男、ウディ・アレンが全身のアルミホイルをまくられ、目を覚
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大統領の陰謀(1976年製作の映画)

4.0

『 お仕事シリーズ:しんぶんきしゃ 』

 ひたすらに、電話、訪問、聞き込み、これこそSYU・ZA・I
インターネットもメールもない時代に真実を追求し、大統領を追い詰めた人のお話。

◆前置き◆ 
 
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扉をたたく人(2007年製作の映画)

4.1

『 ドンドン! カッカッ! ジャンベの達人! 』

 妻を亡くしてから、なんとなく『ふり』で人生を過ごしてきた大学教授の話。
学期の始まり、シラバス(講義計画)の日付だけに修正液をつけている様子、
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WIN WIN ダメ男とダメ少年の最高の日々(2011年製作の映画)

3.7

『 ウィンウィンウィン ウィンウィン 』

 ランニングをしていると後ろから追い抜かれる。画面の端にぽつねんとたたずむ主人公。何とも人生の行き詰まりを感じるビジュアル。画面いっぱいに映るのは本作のタイ
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靴職人と魔法のミシン(2014年製作の映画)

3.2

『 オシャレは足元から 』

 駅の構内でしばしば見かける『靴・ヒールの修理屋さん』の看板を見ると思い出す、靴職人アダム・サンドラー×魔法のミシン がこの映画。
そのミシンで繕った靴を履くと、自分の体
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ボーダーライン(2015年製作の映画)

4.3

『 鬼!悪魔!ベニチオデルトロ!』
 
 不謹慎ながら、『メキシコ麻薬戦争』は映画に限って言えば、とても面白い。『戦争』と言うだけの凄惨な暴力は、一般市民の生活と同居し、暴力と平和が共存する奇妙な世界
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COP CAR コップ・カー(2015年製作の映画)

4.1

『 ジュブナイル追跡劇のベーコン炒め 』

 パトカーを盗んだ少年二人。
確かに、それはチビっ子のイタズラ、お母さんに怒られて済むことかもしれない。でも、もしもトランクの中の見てはいけないものを見てし
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クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん(2014年製作の映画)

3.9

『 int system(const char *TO-Chan); 』

 父親たちの威厳は失われた。今こそ、亭主関白の復活を!鋼鉄の体を持て!立ち上がれ父親よ!
 
 え!?お父さん、ひろしがロボ
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