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復讐の鐘を打て
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『復讐の鐘を打て』に投稿された感想・評価

男と女の間に憎しみと愛情が同居してしまったら、もうボクシングするしかない。っていう映画。格闘技と万田監督の動きの演出は非常に相性がいいと思った。ぜひ長編に。
ボクシングシーンが致命的に面白くないのは失敗だろうし、大田恵里圭はいい顔をしてるとは思うものの、アクションに腰が入っていない。男を自室に連れ込むように手を引っ張るアクションの次のカットではベッドへなだれ込むという編集など見るべき箇所はあるが、食卓を囲む男女の背中越しの切り返しや、地下ボクシングで戦う主人公と彼に父を殺されたヒロインのクロスカッティングは単なる情報提示にしかなり得ておらず、特に後者のシーンは俳優が台詞に対して余剰な感情を負ってしまっている芝居を披露していて残念。

だがなによりも抵抗すべきだったのは、ラストでヒロインが主人公に対して「私は一生をかけてあなたを憎む、その代わりあなたは私を一生かけて愛して」と誓いの言葉を投げかけて抱擁をするという、メロドラマ的演出であったのではないか。
もちろんこのラストの抱擁のような男女の接触を伴うアクションは非常に映画的であるし、被害を受けた当事者の立場でこの男を断罪する台詞をかけながら、実行する台詞内容とは一見矛盾するようなアクションが彼等の行く末に対して僅かながら希望を与えているようにも見えるのは結末として一つの正解であると思う。そこには倫理的(という言い方が適切かはわからないが)な正しさもある。
ただ今作の結末がどうしてもある意味で紋切り型にしか見えないような印象があるとすれば、それは男が自らの罪を告白し、その責任に対して女が抱擁をするというのは、あくまでも赦しを与えうる他者がいる前提で演出がなされていることにあるのかもしれない。

映画的、倫理的な正しさは当然ながら作り手は意識的であるべきだろうが、物事はそんな正しさを選択していくような順序で決まっていくわけではない筈だと信じたいが故の批判になってしまうことが心苦しくもあるが、少なくともシナリオに書き込まれたこと以上のレンジの広さを獲得するに至っていないんじゃないかと感じている。
ボクシングと恋愛。恋人たちの距離が縮まってからベッドに行くまでの時間が瞬間的。あなたを一生憎む、という台詞が愛の告白になる。万田映画における言葉の強度にいつも感動させられる。