【タメになる映画】
“笑って泣いてタメになる”キャッチコピーの通り、世界に通ずる笑いもあれば、思わず泣ける命の演出も。自分の身体の事がよく分かり、自愛も深まる、巧みに構成された脚本力が光る。
◆トリビア
〇赤血球を演じた永野芽郁は、原作やアニメで役作りの準備や研究を重ねたという。「仕事がうまくいかずに、落ち込むこともありますが、周りを見ながら、自分に何ができるか常に考える向上心もある。そういう芯の強さも表現したかったですね。」(https://eiga.com/news/20241210/10/)
〇“白血球”役の佐藤健の真っ白メイクに笑いが止まらなかったという永野。「ビジュアルとしてすごい完璧に作り込まれてたんで、それを笑うのも失礼だなと思うと余計にまた笑いが出てきちゃうんで。瞳だけを見つめてお芝居してました。」(https://www.newscafe.ne.jp/article/2024/12/12/2937268.html)
〇クランクイン初日から永野には大泣きのシーンがあったという。佐藤曰く「そこもビシッと決めてくれて。本当に決めるところを決めてきてくれる。かっこいい女優です。」(https://www.cinemacafe.net/article/2024/12/13/96100.html)
○ヒーローショーではなく、アートとして成立させるため細部にこだわったという武内監督。「赤血球役の衣装はショートパンツの丈の1、2センチの差、血小板役のブーツの膨らみ方まで何度もテストしました。」(https://encount.press/archives/717511/)
〇白血球を演じた佐藤健は、本作での本格志向なアクションのために、「るろうに剣心」のアクション監督を自らチームに提案。「『るろうに剣心』以上のアクションを見せないと、自分がやる意味がないという気持ちで頑張りました。」(https://eiga.com/news/20241210/10/)
○佐藤は、短刀を武器に持つことから、より早く細かい動きを取り入れたという。「映画のジャンルとして“ヒーローもの”としても楽しんでもらいたいんですよね。その手のジャンルには、人一倍うるさい自負がありますので(笑)。」(https://eiga.com/news/20241210/10/)
〇佐藤は、ちょうど花粉の時期だった撮影時に、鼻をかむたびに、白塗りがはげていたと告白。「でも、白血球も状況によって白が変わっても良いか、と開き直りました。全シーン、僕の白がどの白なのかに注目していただけると嬉しいです!」(https://wwws.warnerbros.co.jp/saibou-movie/news241205a.html)
〇阿部サダヲ演じる茂が、トイレを我慢する場面でクラクションを鳴らすのはアドリブ。阿部は「それが本編に使われていて良かったです!」と話す。(https://wwws.warnerbros.co.jp/saibou-movie/news241125b.html)
○ 芦田愛菜は演じた日胡について、細胞たちの状態に応じて、外の世界をイメージする感覚が不思議だったと明かす。「中から外を考えるようなアプローチでした。」(https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/interview/1456382)
○阿部と芦田の2人はドラマ「マルモのおきて」のスペシャル版「マルモのおきて スペシャル2014」以来、実に10年ぶりに父娘役で再共演。阿部は会見の場で「こんな高いヒール履くようになったんだね……(撮影現場で)走り回って転んでばかりいる子供だったのに」(https://natalie.mu/eiga/news/603657)
〇異常細胞を演じたFukaseは、白血球とのバトルシーンで、佐藤健から手加減せずにもっと来いと言われたという。「敵役として『死んじゃえ!』みたいな気持ちでぶつかって、役者ってこういう感じなのかなと思いました。」(https://wwws.warnerbros.co.jp/saibou-movie/news241205a.html)
〇監督は、Fukaseが殺人鬼を演じた『キャラクター』を観て、彼の中にある“切なさ”に惹かれ今回のオファーを決めたという。「今回の役は、人間の命を脅かす細胞たちの最強の敵。“狂気”と“悲しみ”が同居するようなキャラクターにしたくて、真っ先に思い浮かんだのが彼の顔でした。」(https://dengekionline.com/article/202411/23586)
〇片岡愛之助が演じた肺炎球菌は、他の配役が決まっていたため”残り物”の役だったという。誰が演じているのかわからなくなるほど本格的なメイクや衣装を纏うことから、監督は「片岡さん、今ごろ後悔していないかなと、ちょっと心配しています(笑)」と明かす。(https://dengekionline.com/article/202411/23586)
○ 佐藤健は、DJ KOO演じる神経細胞のシーンが推しで、台本の打ち合わせのときから『絶対に入れてください』と話していたという。DJ KOO「嬉しい Do Danceですね!僕の出演は健Do Danceのおかげなんですよ!」(https://wwws.warnerbros.co.jp/saibou-movie/news241101b.html)
〇神経細胞が水をかぶるシーンは、その場に居たスタッフ全員がバケツを持って周りを囲み、一発勝負&その日ラストのシーンでもあったことから、スタジオのテンションがマックスだったというDJ KOO。「はたらく細胞 最高 DO DANCE!!」(https://dengekionline.com/article/202410/22016)
〇原作ファンの取材をする中で、血小板の人気が圧倒的だと気付いた武内監督。「何百人もの子どもたちをオーディションしました。ただ、こだわってキャスティングしたのはいいのですが、撮影している間に彼らがどんどん大きくなったのは予想外でした(笑)」(https://jmagazine.myjcom.jp/category/movie/post000274/)
〇「はたらくくるま」の替え歌「はたらくさいぼう」を、キラーT細胞を演じた山本耕史が熱唱する動画が公開。収録ではいろいろな歌い方を試したといい、「やりがいがありましたし、最後はキラーT細胞としてしっかり歌うことが出来たと思います。」(https://wwws.warnerbros.co.jp/saibou-movie/news241128a.html)
〇新米赤血球を演じた板垣李光人は、本作を通じて自分の体が愛おしくなり、初めて人間ドックに行ったという。「自分とも向き合えるし、誰かのことも大切に思えるような映画になっているんじゃないかと思います。」(https://wwws.warnerbros.co.jp/saibou-movie/news241205a.html)
○撮影には、総勢7500人のエキストラを動員。監督にとって本作の難易度は“エベレスト級”だったという。冒頭の体内のシーンは、必要な600人のエキストラが地元だけでは足りず、県外からバスを何十台もチャーターしたという。「着替えてもらうだけでも、2、3時間はかかりました」(https://encount.press/archives/717511/)
○ 武内監督が注目してほしいポイントは、あるシーンで登場する巨大なトウモロコシの粒だという。約70万円の費用をかけ、こだわって制作したそうで、「トウモロコシ出てきたら、ちょっと気にして見ていただけると」(https://natalie.mu/comic/news/602114)
〇原作では、本作のように人間界は描かれない。本作の製作にあたって、ハリウッド並みに費用がかかる体内の世界を回避するため、生まれたアイデアだと監督が明かしている。(https://jmagazine.myjcom.jp/category/movie/post000274/)
○ 本作では、アイデアを出し惜しみすることなく、全てをつぎ込んだと語る監督。同じく全てを注ぎ込んだ『テルマエ・ロマエ』『翔んで埼玉』もパート2があったことを例にし「『はたらく細胞』もヒットすれば、次も作れるとは思います。」(https://encount.press/archives/717511/)
◆概要
【原作】
漫画「はたらく細胞」「はたらく細胞 BLACK」(シリーズ累計発行部数1000万部超)
【監督】
「翔んで埼玉」武内英樹
【出演】
永野芽郁、佐藤健、芦田愛菜、山本耕史、仲里依紗、松本若菜、染谷将太、板垣李光人、加藤諒、加藤清史郎、マイカ・ピュ、深田恭子、片岡愛之助、新納慎也、小沢真珠、鶴見辰吾、光石研、DJ KOO(TRF)、Fukase(SEKAI NO OWARI)、一ノ瀬ワタル、阿部サダヲ
【アクション演出】
「るろうに剣心」シリーズ 大内貴仁
【主題歌】Official髭男dism「50%」
【公開】2024年12月13日
【上映時間】109分
◆ストーリー
人間の体内には37兆個もの細胞が存在し、酸素を運ぶ赤血球や細菌と戦う白血球など無数の細胞たちが、人間の健康を守るため日夜はたらいている。高校生の漆崎日胡は、父の茂と2人暮らし。健康的な生活習慣を送る日胡の体内の細胞たちはいつも楽しくはたらいているが、不規則・不摂生な茂の体内では、ブラックな労働環境に疲れ果てた細胞たちが不満を訴えている。そんな中、彼らの体内への侵入を狙う病原体が動き始め、細胞たちの戦いが幕を開ける。
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◆以下ネタバレ
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◆はたらく細胞
「37兆個もの細胞たちが…」と、原作・アニメ同様のイントロダクションから始まる冒頭。原作ファンが離れないように気をつけたという監督の言葉の通り、擦り傷のくだりや(血小板達の“お疲れ様でーす”にメロメロ)、肺炎球菌とのバトルもほぼ原作に忠実。それでいて、幼少期を時系列に並べ赤白血球ロマンスを分かりやすくし、人間界も描くことで「BLACK」も同時に描き、さらにその人間界のアイデアが製作費の問題も解決してしまうというよくできた話。さらにそのスケールを対照的に描いたという監督。総勢7500人のエキストラを動員したという、体内の世界の画力、こと冒頭の赤血球のトンネル?を登る映像が素晴らしかった。原作をうまくいいとこ取りし、実写化として見事に昇華した成功例だと思った。
◆笑って泣いて
海外の映画祭での上映で手応えがあったという、トイレを我慢するくだり笑。内外肛門括約筋のスクラムバトルという発想力(流れてきたコーンの粒は製作費70万円で最後までプロデューサーから反対されたらしい笑)。阿部サダヲの大袈裟だけど大袈裟すぎない絶妙な演技で大いに笑わせてもらったし(アドリブだというクラクションもよかった笑)、あのBLACK体内横丁に“ラーメン痔ろう”の看板があったのを見逃さなかった笑。かたや、父のガラス越しのフリップ芸に涙腺崩壊(ここでなぜ娘の名前が日胡なのかが分かる)。白血球の死ぬ間際での指切りにも、やはり冒頭の幼少期のシーンが伏線となり、思わず泣かされてしまった(ここも本作の脚本の巧みなところ)。本作のキャッチコピーである“笑って泣いてタメになる”は、後述分も含め、確かにその通りだった。
◆タメになる
放射線治療が行われ、体内の細胞が良も悪も次々と消えていく。骨髄移植で、新しい細胞たちが体内世界に活気づく。なんとなく分かっているつもりでも、視覚的に分かりやすく、さらに映画という娯楽の媒体で医療を学べてしまうこの作品の存在意義。“ありがとう”と体を撫でた日胡と同じく、自分も自分の身体を労わりたい気持ちになれた。生まれ変わった世界で、3806によく似た赤血球のバッジには2525の数字が。おそらく日胡の笑顔にかけたと思われるIDの赤血球が、これまた原作に忠実に白血球と“同じ世界で働いてるんだからまた会えるさ”と再開を誓う。原作・アニメと違い、極力省かれた説明ブロックは、エンドロールで日胡のノートという演出で登場。最後の最後までタメになる本作は、館の明転後、意外と多くいた笑顔のちびっ子達を見て、さらにその存在が意義深く感じた。
◆関連作品
○「はたらく細胞」
テレビアニメシリーズ。2シーズン全21話。OPテーマがクセになる。Netflix配信中。
○「はたらく細胞BLACK」
アニメのスピンオフシリーズ。全14話。生活習慣の良くない、細胞達のBLACKな仕事環境が描かれる。Netflix配信中。
◆評価(2024年12月13日時点)
Filmarks:★×3.9
Yahoo!検索:★×4.0
映画.com:★×4.0
引用元
https://eiga.com/movie/99128/
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/はたらく細胞