大丈夫。きっと二人なら。

中尾太一による詩集『ルート29、解放』を原作として、森井勇佑監督、綾瀬はるか、大沢一菜主演により映像化したドラマ。
鳥取で清掃員として働く主人公が、姫路にいる娘を探し出し、連れ帰って欲しいと頼まれ、動き出す姿を描く。
原作は未読。
主人公となる清掃員の中井のり子を綾瀬、彼女に娘を探して欲しいと依頼する理映子を市川実日子、理映子の娘・ハルを大沢が演じているほか、伊佐山ひろ子、高良健吾、原田琥之佑、大西力等が登場。
物語は冒頭、中学生の修学旅行のシーンでスタートするのだが、その中で団扇を扇ぐ三人の女性が並んで座って同じ動きを見せるという、いきなりシュールさ全開のオープニングを見せてくれる。
次には、のり子が謎の小部屋のような宿泊施設にいる中、警察による捜査を受けるという、これまた謎深き展開に。
あわせてのり子がハルを見つけ出すシーンがあるのだが、すぐに数日前の鳥取に時間が巻き戻り、精神科病院の清掃に入ったのり子に対して、入院している理映子が姫路にいるハルを探して連れてきて欲しいと依頼したことをキッカケに、ハルが姫路に向かうという段になるものの、前述のように、のり子がハルをどのように探し出したかの描写がほぼないため、唐突に姫路から鳥取へと連れ帰ることになった印象を受けたところ。
その後は、突っ立っているドライブインの店員を筆頭に、犬を店内に連れてくる赤い服の女や、森に住む親子、ひっくり返ったクルマの中に佇む老人と、とにかく出会うのが奇妙な人ばかりであると同時に、基本前述のように突っ立っているので、どこかこの世のものではない感あり。
そのため、姫路から鳥取という山陽から山陰を結ぶ国道29号を行くロードムービーという謳い文句ながら、のり子とハルの成長譚を読み取ることが出来ず、なおかつバディもののような連帯感も薄かったことから、本作品をロードムービーと呼ぶには、その醍醐味を感じられなかった次第。
クルマ好きの視点からすると、のり子が当初運転する清掃会社の社用車がマツダ・ボンゴかと思いきや、そのOEMモデルである日産・バネットであったことを筆頭に、前述の転覆しているのがセフィーロ、終盤事故していたのは、これまたOEMモデルであるモコ、そしてパトカーがティアナと、少し古めの日産車率が高かったのは見逃せないポイント。
紡がれるエピソードが、いずれもシュールかつ謎だらけであることから、何が起きているのか咀嚼できないまま進んで行ってしまい、終盤の展開は、もはやファンタジーと、ロードムービーとはかけ離れた作風に面食らった反面、詩集が原作なのも納得だったとともに、途中出会った体格の良い男性を演じた松浦伸也なる俳優が、実は松浦祐也の弟だったことが一番の驚きであり、そのタイトルから、ふと懐かしのファミリーコンピュータソフト、サン電子の「ルート16ターボ」が頭をよぎった怪作。

犬は外でお願いします。

【空に落ちる】

※ 公開記念舞台挨拶

原案となった詩集「ルート29、解放」のことは知らなかったけれど、映画「ルート29」は全編を通して、登場人物の話すセリフは詩を読み聞かせているようだ。

そして、綾瀬はるかさん演じるトンボこと中井のり子は、詩の聞き手だ。

現在4Kリマスターリバイバル上映されている「イル・ポスティーノ」で世界的詩人のパブロ・ネルーダが、詩は説明すると陳腐になるものだと言う場面があるが、この作品も登場人物の詩のような語りを感じるものじゃないかと思うのだ。

詩は書いたり読み聞かせたりする人がいて、そして、読んだり聞いたりする人がいて成立しているように感じさせる。

また、登場人物それぞれの話す内容は、絶望だったり、悲観だったり、ある種のジェラシーなどを含んでいるが、この映画は、トンボとハルの短い旅を通して、”人間”も”人間の社会”もそんなに悪いもんじゃないよと伝えようとしている気がする。

様々な想いを抱えながらも見返りを求めずに親切にしてくれる人たち。

詩の聞き役のトンボはそもそもそんな存在じゃないのか。

だから、母親の願いを受け取ってハルを探して、会わせてあげようとしたんじゃないのか。

それは、中学の頃に亡くした母への郷愁でもあるが、見返りを求めない親切でもあるように思える。

公開記念舞台挨拶で、綾瀬はるかさんはおまじないの場面が好きといっていた。

僕は、皆が静止している街を大きな赤い月が照らすなか、トンボが走る場面が好きだ。

これは叙景的で詩的なシーンだ。

また、ハルが途中で話す、自分が夢で見た話を説明する時に話していた「空に落ちる」という表現もとても詩的で好きなところだ。
空飛ぶ魚の話だ。

万人受けする作品じゃないのかもしれないが、この短いトンボとハルの旅を通じて何かを感じ取ることが出来るような作品になっている気がする。

予告編では、まず、あみ子 大きくなったなぁ～ と、子供の成長の速さに感心♪で、綾瀬はるかさんも、ちょっといつもの彼女じゃないぞ…と。監督さん、「こちらあみ子」の方なんですね。

アート系でも無いし、ストーリーはちゃんとあるので、ジャンルとしては不思議ロードムービーですかね。でも、高良健吾さんに市川実日子さん、それに久しぶりにお目にかかった渡辺美佐子さんと豪華な脇役陣。とりあえず、万人受けはしないと思うけど、嫌いじゃ無いし、なんか観てしまう作品でした♪

ブクブク泡音、最初から気になってたんですが、ファンタジー的なラストも結構好きですよ♪(^-^)