とある黒犬と出会った出所直後の青年の、苦悩と再起の物語。青年と犬のベタなロードムービーと言ってしまえば其れ迄だが、この作品にはそれだけでは終わらない／終わらせたくない程に、感情を揺さぶる要素に富んだ素晴らしい作品だ。

元犯罪者が直面する辛苦や、彼の生きてきた社会体系の危うい構造、それが急変していく様相が丁寧に描かれてるが、それ以上に人間社会の維持の困難性が＂犬＂という無垢たる「個」を通じて強調され、それが功を奏している事が何より本作を秀作たらしめている。普段あまり観ない中国映画だが、村や個人ベースで見ると不安定な秩序が無制限に拡がる国の作品でなくては描けない世界が、皮肉とはいえ存在するのだなと実感。この青年や彼を取り巻く社会の未来が明るいといいな。

2008年、北京オリンピック前。刑務所から出所した青年はゴビ砂漠の端にある故郷に戻り、地元のパトロール隊で働くことになる。野犬狩りする中、黒い犬を助ける。助けた事によって新たな人生へと踏み出す、、、。

言葉を失う。

美しき人生再生ストーリー。犬との交流。そして素晴らしき映像。毎秒毎秒が絵になる！凄く会話が少ない！でも凄く余韻に浸れる深い映画だった。

パルムドッグ賞、ある視点作品部門受賞。こんな話題作観れて本当に良かった。

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【黒い犬が運ぶ一期一会一喪再生路】【東京国際映画祭】
■あらすじ
中国第6世代監督、グァン・フー監督最新作。
主演は、『疾風スプリンター』（15）、『オペレーション・メコン』（16）などアジア圏で人気のエディ・ポン。そのほか、監督のジャ・ジャンク―も特別出演している。

2008年、北京オリンピック前。刑務所から出所した青年はゴビ砂漠の端にある故郷に戻り、地元のパトロール隊で働くことになるが、そこで黒い犬を助ける。
そして、その犬と過ごすなかで様々な人と出会い、新たな人生へと踏み出すのだった。孤独な青年と黒い犬との絆を描き、世界中の映画祭で絶賛されている。

■みどころ
寡黙な男と黒い犬のお話。
多くの動物が登場する眼福さ、エディ・ポンの機微な表情から伝わる感情表現の繊細さが良いと思った。

青年は寡黙ながらも狂犬病の対策で野良犬を捕獲するパトロール隊で働く事になる。
そこである廃墟マンションから黒い犬と出会う。

その犬とは襲われたり、逆に捕獲しようとして逃げられるがふとした事をきっかけに一緒に住むことになる。
その後、青年の前に出会い・出来事が遭遇するが彼の隣には黒い犬がついてくれる。そんな彼らに黒い犬を巡るある出来事が襲ってくるが…

この映画はクロックワークス配給で来年公開になるが多くの人にオススメできる映画だと言える。ある意味で「ある視点」部門に相応しくないくらいというか・・・
普通にヒューマンドラマとして大切なテーマをユーモアに伝えてて良い映画だと思う。安心できる温度感の映画って感じがする。
イメージとしてはフー・ボー『象は静かに座っている』のストーリーラインを分かりやすくして、かつユーモアに描く明るさがある感じか。

出会い、発展、喪失、再生を黒い犬を通じて様々な人物・動物で循環していて良いなと思う一方でぶっ飛んだシーンも多くて、これはこれで好き。
多くの人に観て欲しい、そんな映画です。

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