ヴァカンス映画の金字塔。ジャック・ロジエ監督の長編第2作目が4Kレストラ版でスクリーンに蘇った。いつまでも色褪せない映像は、日記のように夏の終わりの季節遅れのヴァカンスを映し出す。「みんなのヴァカンス」のギヨーム・ブラックが影響を受けて心底リスペクトし、ゴダールが絶賛したジャック・ロジエ。若者達の笑い声、ひと夏の恋、どこまでが演技でどこまでが素の部分が分からないほど享楽的で騒々しい海辺の数週間。「映画は人生そのもの」というジャック・ロジエの世界観に酔いしれた。

９月初め、パリで働くジョエルは、友人のカリーンと一緒に親戚のキャロリーヌが持つ海辺の別荘にヴァカンスに行く。女３人誰にも邪魔されず気ままに過ごしていたある日、偶然を装いジョエルの上司ジルベールが現れる。実はジルベールは密かにジョエルに好意を寄せていたのだ。退屈しのぎにちょうど良いとジルベールと一緒に過ごす彼女たち。そんな時、浜辺でヨット乗りのパトリックという青年と出会いジョエルは彼に惹かれていくのだが、、、

フランス映画はヴァカンスを扱った作品が多い。フランス人にとってヴァカンスは生き甲斐なのだと感じる。ヴァカンスのために仕事も学業も頑張る。そういうフランス人のヴァカンスを象徴するような作品。何もしないでダラダラとガールズトークを繰り広げ、「箸が転んでもおかしい」かのように取るにたらないことで笑い転げる。無邪気に戯れ合い、笑いのツボに入ったら止まらない。観ている私達まで何だか可笑しくなる。別荘で見つけた木靴を履いて大騒ぎ。「オルエット」という地名の響きに反応して大笑い。ヴァカンスは、大人が子供のようにバカ騒ぎしても許されるそんな時間なのかもしれない。

空気が読めないお邪魔虫のジルベールの孤軍奮闘が面白い。殆どストーカーで下心が見え見えのジルベールだったが、いなくなった途端に女性３人のバランスが崩れて行く。そんな雰囲気を巧みに描くロジエ監督の手腕が光る。ジルベールを演じたベルナール・メネズは、ギヨーム・ブラックの「やさしい人」にも出演している個性派俳優で悲壮感漂うジルベールを熱演。予定外のことでカリーンが先に帰ってしまい、女性３人のバランスは完全に崩れた。夏の終わりと共にヴァカンスも終わりを告げ、楽しかったからこそ寂しさがつのる。

来年のヴァカンスはどうなるの？そんな意味深なラストにも心惹かれた。

女子3人組のヴァカンスの日々をみずみずしく切り取る。特に何も起こらないけど、彼女たちとヴァカンスを共に過ごした気持ちになる約160分。

3人の女子がキャッキャとはしゃぐ様子にヴァカンスが始まる高揚感を感じ、寒そうな海と彼女たちの疲弊した姿にヴァカンスの終わりの寂寥感を味わう。

「オルエット」という地名の響きだけで大笑いしてる彼女たちに釣られて思わず笑ってしまった。それがタイトルになってるのが洒落っ気ある。脚本なのか即興芝居なのかわからないような女子たちのワチャワチャした会話が延々続く、映画の価値観を揺るがす自由な作風。退屈になってくる中盤からちょっと変化が起きてくる。気まずい雰囲気の描写が上手。

一生懸命なのに空回りする上司はいい人そうで気の毒だったけど、ちゃっかりしてることころがシニカル。一人の男性が入ることで女性たちの関係性が崩れてしまう危うさがリアル。

日によって違う表情を見せる空と海がすごく美しくて、人間のどうでもいいアレコレをあざ笑うかのよう。

• #J.ロジエ

海辺の別荘へバカンス羨ましい🏖️🇫🇷
つられて笑ってしまうほど笑いの絶えない賑やかで楽しい雰囲気と夏の終わりの喪失感を味わえる作品でした

普段生活していて身近に騒がしかったりうざい人がいると鬱陶しくて仕方がないけど、いざ日常からその存在が居なくなると不思議と寂しさを覚える気持ちは共感できました

それにしてもジルベールの異物感が凄かったし、メンタルの強さというかジョエルへの執着にはビビりました⛺️

うなぎサービスしすぎおじ😂

• #今年もあちぃと夏を満喫する大人になりたい